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2章:いろんな人の、いろんな事情。

招待状 ――5

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 実はリンジーとふたりきりで話すのって、さっきの会話が初めてなんだよね。っていうかシェリルのことも名前で呼んでやれよ! ああ、ダメだ。ツッコミが追い付かない。シェリル、シェリー、リンジーの会話を聞いてみたい。やはりシェリルがツッコミ役だろうかと遠い目をしていると、カイルが心配そうにオレの顔を覗き込んできた。

「大丈夫ですか、エリスさま」
「平気平気。シェリルなんだって?」
「『格好良く仕上げてね』とのことです」
「シェリルはオレになにを求めているの!?」

 そう叫んでしまった。十二歳になっても地味顔のオレに! 記憶している『エリス』は十七歳までしかないけれど、十七歳の姿も地味なんだよなぁ。本当に攻略対象だったのか、オレ。

 すっかりぬるくなったお茶を飲むと、カイルが「淹れ直しますか?」
と聞いてきたので、カップをずいっと彼に向けてお願いした。

 ちなみに二年前からシェリルは当主の座に就くための勉強を始め、生き生きとしていた。どうやら性に合っているらしい。オレはいうと、特になにもしていない。とにかく体力をつけるほうが先だったので、勉強は後回しになっていた。そろそろ国のことを調べてみようかな。……招待状の日時を確認すると、二週間後。なかなか急な感じなんだよなぁ。

「熱いのでお気を付けください」
「ありがとう」

 お茶を渡されて、ふぅふぅと息を吹きかけてから飲む。温いお茶も悪くはないけど、やっぱり温かいお茶のほうが好みだ。

「カイル、ランニングに付き合ってくれない?」
「構いませんが……あと三十分後にしましょうか。急に動くとお腹痛くなっちゃいますよ」

 ものすごく子ども扱いされている気がする。……いや、十二歳はまだ子どもか。十四歳になったカイルは美に磨きがかかっている。風でなびく銀色の髪は背中まで伸び、紫水晶の瞳も輝きを増した気がする。身内の贔屓目と言われたらそれまでだが。身長もオレより結構高くなってしまった。どこまで伸びるんだろう。オレの身長もニョキニョキ伸びないものか。

「さっき、リンジー卿となにを話していたのですか?」
「リンジー卿? あれ、有名人なの、リンジーって」
「言っていませんでしたっけ? ハーフエルフの中では知らない人はいないくらいの有名人ですよ、彼」

 きょとんとした顔で教えてくれた。ハーフエルフの中では知らないとはいないくらい……ってかなりの有名人なのでは? どういう意味の有名人なのかはわからないけれど。どうせならいい意味の有名人であって欲しい。

「どんなことで有名なの?」

 ドキドキしながら返答を待つ。ちなみにリンジーがシェリルの護衛になったのは先月のことだ。カイルは顔を斜め後ろに向け、オレの視線から逃れようとした。

「なんでその反応!?」
「いや、あの、変人として有名なので……」

 ……変人なのは否定できないような。でも、それだけで有名ってわけではなさそうだ。カイルが言おうかどうか悩んでいるのは、一体どうしてなんだろう?

「……まぁ、能力は確かのようですよ、能力は」
「曖昧過ぎない……?」
「すみません、ちょっと説明が難しいです」

 困ったように眉を下げる姿を見て、肩をすくめた。「じゃあ、あとで話せそうなら教えて」と伝えると、カイルはホッとしたように息を吐いた。そんな話をしているうちにいつの間にか三十分は過ぎていた。
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