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2章:いろんな人の、いろんな事情。

招待状 ――1

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 シェリルが正式な後継者に決定してから、約二年の年月が流れた。オレもシェリルと十二歳になり、体力はそこそこ付いた、と思う。屋敷の周りを三周歩けるようになったからな!

 十歳の頃に比べればそれなりに背も伸びて、ガリガリだった身体もだいぶ良くなった。それでもまだ痩せ型のように見えるから、筋肉を求めて週に数回筋トレしたり、有酸素運動をしている。

 そうそう、二年前には決まっていなかった、シェリルの専属の護衛も正式に決定した。護衛というか、付き人というか。いつも一緒にいる人。

 ひとりは清らかな印象が強い水色の長い髪をまとめた女性。さらさらのストレートで、瞳の色は濃い茶色。日本で暮らしていた『咲耶サクヤ』と同じ色の瞳だったので、なんだか親近感が湧く。名前はシェリー。シェリルの名前に似ているからと気に入ったようだ。

 もうひとりはまるで濡れ烏のような漆黒の髪を持ち、明るい茶色の瞳を持つ男性。この瞳は沙織サオリと似ているな、と思う。そして、髪が臀部くらいまであるんだけど、邪魔じゃないのかな……? とちょっと気になる。そんな男性の名はリンジー。シェリーが剣士で、リンジーが魔導士。このふたりは直接シェリルが選んだ。

 シェリーは元々男爵家の娘として生まれたけど、令嬢として生きることを拒否。剣の修行をしているところをシェリルが見かけて、専属侍女という名の護衛として来てくれないかしら? と誘ったらしい。

 リンジーはなんとカイルと同じハーフエルフらしく、のんびりと生きていたけれど自身と相性のよい魔法の存在を感じ取って、シェリルに近付いてきたらしい。全部彼女から聞いた話。

 オレの護衛は相変わらずカイルひとりだ。増やすつもりはない。

 最近だと、ようやく魔法の練習を始められるようになった。ヒューが見守ってくれるから、安心して魔法の練習ができる。

 あ、そうそう。リンジーは魔族とエルフのハーフらしい。自身は風の属性が主と言っていた。シェリルは火の属性だから、確かに相性が良さそうだ。

 そしてなによりも驚いたのが、シェリーはカイルと同い年、リンジーはなんと百歳超えているとか。魔族もエルフも長生きだから、百歳過ぎていても見た目はとても若い。オレらよりちょっと年上かな? なんて思うくらい若い。

 って、ことはさ、カイルも長生きする可能性があるわけで……。じーっとカイルを見つめると、彼は首をこてんと傾げた。

 それはまぁ、良いとして。問題は――……

「アレン殿下の十二歳の誕生日パーティーに、どうしてルトナーク家が参加しないといけないのかしら……?」
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