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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

再会 ――1

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 それから、数日の時間が流れた。シェリルとの仲は良好。彼女が魔法の練習をするときは、見学させてもらっている。今のところ火属性の魔法しか練習していないみたいだ。

「オレが魔法の練習できるようになるのって、いつかなぁ?」
「そうですね……、屋敷の周りを三周くらい歩けるようになってから、でしょうか」
「……先は長いな」

 思わず目元を細めて遠くを見る。未だに一周するのにもかなりの時間が掛かるというのに。

 シェリルが火の球を飛ばしているのを眺めつつ、見学を終わらせ彼女たちに声を掛ける。カイルは少しヒューと話があるみたいだから、先に部屋に戻ることを伝えた。このルトナーク邸ならひとりで歩いていても安全だろう。

 もう足取りに迷いはない。自室までの道を知っているから。部屋につき、扉を開けたら、ゴンっとなにかにぶつかる鈍い音が聞こえた。なにがぶつかったんだ!? と慌てて部屋の中に入ると、床にしゃがみ込んで悶絶している赤髪の子が視界に入った。

「ごめん、大丈夫!?」
「だ、だいじょうぶ……、ありがとう」

 ――あれ、赤い、髪の毛って……

 えへへ、と笑い顔を上げたのは、赤い髪に緑の瞳を持った、アレン殿下だった。アレン殿下、だよな? な、なんでここに? いやそれより、どこをぶつけた、額か!?

「傷は!?」
「大丈夫だよ?」
「いや、でも赤くなってる! ポーラを呼んでく……」
「わ、待って待って!」

 オレの口元を両手で押さえるアレン殿下。……あれ、なんだか、広場で会ったときのほうっぽい……? 彼はキョロキョロと辺りを見渡して、誰もいないことを確認するとホッと安堵の息を吐いた。

「僕がここにいることは、内緒にして?」

 と懇願するように言われたので、首を縦に動かす。口元の手が離れ「ありがとう」と爽やかに笑顔を浮かべる彼に、「どうしてここに?」と問いかけると、もじもじと指を動かしているのが見えた。

「えっと、確認を、したくて……」

 確認? なにを確認したかったんだろう。アレン殿下は胸元に手を置いて、深呼吸を数回繰り返すとごそごそとハンカチを二枚取り出した。一枚はあの日使ったやつみたいだけど、二枚目は一体……?

「あ、やっぱりきみだったんだね」
「あ」

 ……そうか、あの日のオレは女装をしていたんだった! 黒歴史を思い出して頬を掻く。よくオレだってわかったなぁ。

「えっと、エリスって呼んでも良い?」
「え、あ、はい。構いせんけど……」
「砕けた話し方でいいよ。あと、僕のことは――アランって呼んで?」

 アラン? アレンじゃなくて? 怪訝そうなオレを見て、そっとハンカチを渡してきた。

「影武者の子?」
「影武者というより、ただの影。表に立つのはアレンで、僕は裏方。ふたりでひとつ。そんな感じ」
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