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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

散歩 ――1

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 というわけで、食堂を出て廊下をスタスタと歩き一度自室に戻る。

「ところで、遊ぶとは?」
「とりあえず今日は、オレに付き合ってくれない?」

 自室に戻ったのはカイルと落ち着いて話がしたかったからだ。

 カイルもそれをわかっているのだろう。部屋の中に入るなり問いかけてきた。くるりと身体を反転させてカイルに向き合い、彼の肩をぽんぽんと軽く叩く。すると、カイルは不思議そうな表情を浮かべた。

「付き合う?」
「オレ、目覚めたばっかりで体力ないから、屋敷の中を散歩しようと思うんだ。付き合ってくれない?」
「確かにエリスさまの体力は、増やしたほうが良さそうですね」
「だろ? それと、屋敷の中も把握したいし。この屋敷広いから、散歩にピッタリだと思うんだよ」

 この屋敷で働いている使用人も、どんな人たちがいるのかまだ把握していないしな。一番身近なのはポーラだと思うけど。まさか彼女が成人しているなんて思わなかった。

「そういえば、カイルはこの屋敷の人たちと親しいの?」

 素朴な疑問を投げかけてみると、「恐らく……?」となんとも曖昧な返事が耳に届いた。でも、すれ違う使用人たちはオレたちに気さくに声を掛けてくれる。それこそ、前から知っていた人のようにカイルにも接するから、てっきり親しいのかと思った。

 ああ、でもそんなに来たことはないんだっけ。

「……でも、それにしてはみんな、カイルのことを知っているよな?」
「挨拶は済ませていましたから。先月」
「先月!?」

 オレが目覚める前にすでに挨拶をしていた……? あ、いや、ヒューの息子としてってことも考えられるのか。

「エリスさまが目覚めたら、私が護衛になるのは決定事項でしたから」
「よく引き受けたよね……」
「言ったでしょう? 志願したのだと」

 ぴたりと歩きを止めたカイル。ちらりと窓の外を見ると、シェリルが魔法の練習を開始したようで、ヒューと一緒に居た。シェリルを見るカイルの瞳は、なにも映していないように見えた。表情がない、と言えば良いのだろうか。

 彼女のことをどうも思っていないような気がして、言葉を詰まらせる。きっとシェリルはカイルのことを気に入っていると思うのだ。だけど、当の本人は気にしてもいないのだろう。なんだか世知辛いな。

「そういえば、シェリルが先に護衛になって欲しいと言ったんだろ?」
「ええ、まぁ。ですが、私はシェリルさまの護衛にはなれません」
「なれない……? カイルが望めばなれるんじゃ?」

 首を傾げて問うと、カイルはこちらに顔を向けて緩やかに首を横に振った。
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