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12話
しおりを挟む「今回のかくれんぼって、一年生にかくれんぼのルールを教えるためだし、デート権がないとやる気が出ないよなぁ……」
「あー、でもさ、一年のユーゴはともかく、あのアーサーって子、顔が見えないからデートしたいのかどうかさっぱりわからないよな」
「それは言えてる。せめて目が見えたら良いんだけど」
「え? でもさ、デュボアってことはサイラス先輩の弟だろ? 見た目良いんじゃね?」
「全然違う可能性もあるけどなー。あいつ茶髪だったじゃん」
……魔法で染めているからね。そんな会話が聞こえてきて、兄さんの話題が出ているってことは三年生か。
そんなことを話しながら生徒たちは理科室から出て行ったみたいだ。
まぁ、確かに生徒会メンバーってイケメンだったり美人だったりするから……俺は異色なんだろう。地味でいたいんだよ、地味で。
そのうちに、放送でチェスター先輩、エイヴェリー先輩、ルイ先輩が見つかったことが流れた。相変わらずノリノリな感じで。
『制限時間まであと五分! 残りの生徒会メンバーは、リアム会長、ジャック先輩、新入生のユーゴとアーサー! さぁさぁさぁ! 最後まで諦めずに探しつくせー!』
ほんっとうにノリノリだよな、ニック先輩……。
あと五分か……。この仕掛けを知っている人ってどのくらいいるんだろう。……三年生が見つけられないくらいだから、かなりマイナーな隠れ場所ってことかな。……いや、待てよ、じゃあ何でユーゴはここのことを知っているんだ?
『ラスト一分!』
そんなことを考えていたら残り一分だ。三十分の制限時間って結構長いように思えたけど、案外短いんだな……。
十秒前からカウントダウンが始まった。
『十、九、八、七、六、五、四、三、二、一……!』
『かくれんぼ終了で~す! 見つからなかった生徒会メンバーは体育館までお越しください! 探しに行った生徒たちも体育館へ集合~!』
そんな声が聞こえてきて、ようやく終わった……と安堵して息を吐く。安堵したのはユーゴも同じだったようで、ホッとしたように小さく息を吐いた。そして、ペタペタと壁を触って、カチッと何かを押す。すると、この狭い空間の扉が開いた。
「うわ、まぶしいっ」
「あの空間暗かったからなぁ……」
眩しくて目を細める。暗闇の中から一気に明るいところに行くと目がやられるよな……。今日はそんな日か。理科室から出て行くと、「理科室かよー!」と言う生徒たちの声が聞こえた。
体育館に戻ると、既に生徒会のメンバーは集まっていた。こっちに来いと手招きされたので、ステージ上へと向かう。生徒たちも全員体育館に集まり、かくれんぼの結果発表になった。
「結果から言えば、生徒会の勝利です! 見つからなかったのはユーゴとアーサー! 何と一年コンビ! おめでとうございまーす!」
……え、あの五分の間にリアム先輩とジャック先輩見つかったの!? 見つかってなかったのが俺らって……。ちょっと困惑していると、ディック先輩がマイクを向けてきた。
「かくれんぼはどうだった?」
「え、えーっと、緊張しました。最後まで残れて良かったです」
次にユーゴへマイクを向ける。ユーゴは周りを見渡して、ひらりと手を振る。
「――隠れている最中に、割と人の会話が聞こえました。あんまり言わないほうがいい話題も含めて、ね。次からは気を付けたほうがいいかもよ?」
俺の肩を掴んでぐっとそう言うユーゴに、俺は目を瞬かせた。……え、なにこの状況……。一瞬ざわっと騒がしくなったけど、すぐに「え、もしかして……」という言葉が聞こえてきた。……この状況、ユーゴは俺のことを気に入っているように見えるんじゃ……!? い、いや、まさか、まさかな……。入学して二日しか経ってないし……。
「さて! オリエンテーションのため、残念ながら賞品は出ませんが、大体の教室の場所は覚えましたかー? これで迷子になりませんね! それでは、全校生徒オリエンテーションはこれにて終了となります! これからもがんばっていきまっしょー!」
本当にノリノリだよな、この放送委員会のふたり……。
「おい、ニック、勝手に締めるな」
そう言ってリアム先輩がニック先輩からマイクを渡すように促す。ニック先輩は渋々と言うようにリアム先輩にマイクを渡した。リアム先輩は体育館内にいる全員を見渡してから言葉を掛ける。
「今年度一発目のかくれんぼは生徒会の勝利となりましたが、残り二回のかくれんぼでは我々生徒会メンバーとのデート権が賞品になります。話してみたい生徒会メンバーが居たら、狙って探すのも良いでしょう。生徒会に用事がある方も、ない方も、気軽に話しかけてきてください。――それでは、本日のオリエンテーションの終了です。各自教室に戻り、入りたい委員会や部活を考えてください。明日からは部活の体験入部が出来ますので、一年生は色々考えてみてください。生徒会からは以上です。お疲れさまでした!」
リアム先輩の声に、生徒たちがパチパチと拍手を送る。
そして、ぞろぞろと生徒たちが体育館から教室へと向かう。今日はこの後教室に戻って担任の話を聞いて終わりのハズ。
ステージ上に残った生徒会メンバーと放送委員会のディック先輩とニック先輩は、互いに顔を見合わせて、
「大成功、だったな!」
「ああ、かなりの盛り上がりだった。ご苦労様」
「やったー! ハイタッチしよー!」
ニック先輩がひとりひとりハイタッチしていった。もちろん、俺にもハイタッチを求めてきたので、パンっと小気味よい音が響いた。
「生徒会メンバーとして初仕事、勝利で終えるとは中々やるねぇ!」
エイヴェリー先輩が楽しそうに笑みを浮かべながら、そう言ってくれた。俺とユーゴは視線を交わして、「ありがとうございます」と頭を下げる。
本当、無事に終わって良かったー!
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生徒会とのデート権!!!
ユーゴがほしがりそうですね(´˘`*)
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感想ありがとうございます!
ユーゴは隠れる側だから悔しそうですね(*‘ω‘ *)
それでもユーゴはかくれんぼを楽しもうと全力です(笑)
生徒会に入れるのは王家の血を引く者は確定、その他は生徒会メンバーのスカウトなので、彼らには人気者になる人たちがわかるのかもしれません……(*´▽`*)