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2章 不幸は幸運とともに
不幸は幸運とともに 8-1
しおりを挟む触れて欲しくない過去なんて、誰かしら持っているだろう。陸矢はぽん、と俺の頭に手を置き、その手をするりと頬に流してから優しく微笑んだ。
「流羽さんが話したくないのなら、オレも聞きません」
耳に届いた言葉に、ゆっくりとうなずく。陸矢は俺の頬を撫でてから、反対側の頬に顔を近付けて、ちゅっと唇を落した。
「今日は、オレの部屋に」
「……ん」
手を繋いで、歩き出す。掃除をするために陸矢の部屋に入ったことはあるが、ものすごく殺風景だったことを思い出した。仕事道具はすべて仕事場に置いてあるようで、本当に寝るための場所って感じだったから、最初に入ったとき、驚いたことを覚えている。
扉を開けて中へ入ると、灯りを点けて扉を閉め、ずんずんとベッドに近付く。
「真ん中くらいに座ってください」
言われた通りにベッドの真ん中くらいに座った。……なんで真ん中? と思いつつも……。陸矢もベッドに上がり、俺の後ろを陣取ると後ろから抱きしめるようにバスローブの中に手が入って来た。
「気持ちいいことしかしないから、リラックスしてくださいね」
「陸矢……?」
どういう意味だ、と聞こうとしたけれど、うなじに吸い付かれてビクッと躰が揺れた。くすり、と彼が笑う気配を感じて、バスローブの中に入った手が上半身をなぞるように動く。くすぐったいような刺激に困惑していると、喉元を撫でられて小さく「ぁ」と声が出た。
「やっぱり敏感だ」
楽しそうな陸矢の声が聞こえて、やっぱり、ってなんだよと思いながらも目を閉じる。声が出ないように唇を噛み締めようとしたけれど、「声は我慢しちゃダメですよ。大丈夫、オレにしか聞こえないから」と唇に人差し指を当てられた。……陸矢の手は商売道具だ。噛まないように口を開けると、喉元をくすぐるように動いていた手が下がっていき、再びバスローブの中に手を入れて、カリッと乳首を爪で掻いた。
「ァッ!」
その刺激に思わず声が出る。陸矢は俺の声を聞いて、耳の後ろを舐めた。耳たぶを食み、水音を響かせながら舐める。ぞわぞわとした感覚が俺を襲い、混乱した。
「流羽さん、膝を立てて、もう少し開けます?」
「こう……?」
おずおずと膝を開くと、陸矢の長い足が絡まり固定された。
「少し反応していますね」
嬉しそうに、俺の股間に手を伸ばしてゆっくりと撫でた。陰茎を撫でられる感覚に肩が跳ねた。しゅる、と布が擦れる音が聞こえて、バスローブが解かれた。はらりとバスローブが肩からずり落ちる。露わになった肩に、陸矢が唇を落した。
「んっ……」
鼻から抜けるような甘い声。以前抱かれたときの記憶がよみがえり、無性に恥ずかしくなる。
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