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2章 不幸は幸運とともに

不幸は幸運とともに 2-1

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「あ、でも、ちょっと待ってて」

 スマホを取り出すと、タップを数回繰り返す。どうやら仕事仲間に連絡を入れたようだ。

「電話じゃなくて良いの?」
「良いの。オレの家、ここからだと少し掛かるから、その前にとりあえず必要なものを買おうか。着替えとか身の回りのものを」
「あ、うん……」

 とりあえず最初に向かったのは銀行のATM。必要な分をおろして、まず服屋に向かった。着る服はあんまり気にしていないから、安いものを下着含めて一週間分くらいをまとめ買い。

 その後、ドラッグストアで歯ブラシや歯磨き粉などの身の回りのものを買いこんだ。

 彼の家のタオルを使うのも申し訳なくて、バスタオルやフェイスタオルも購入。

「……悪いな、荷物持ってもらって」
「ひとりで持つには大変でしょ?」

 かさばるものが多いから、袋もデカい。

 あー、エコバッグも全部燃えたのか、買わなくちゃ……。

「それじゃあ、家に向かいますよ」

 こくりとうなずいて彼についていく。電車に乗り、ぼうっと窓の外を眺める。……本当、何が起きるかわかったもんじゃないな……。

「ここで降りるよ」

 声を掛けられて荷物をしっかりと持って電車から降りる。駅から十分ほど歩いたところで「ここがうちです」と家を紹介された。

「……えーっと、なんか随分立派な家だけど……」

 まさかの戸建て。

「大丈夫、ひとり暮らしだから」

 俺の言葉をどう受け取ったのか、彼はにこっと笑うと鍵を取り出して玄関の鍵をあけた。そして、扉を開くと俺を招き入れる。

「……お邪魔します」
「はい、いらっしゃい」

 軽い口調でそう言って、ぱたんと扉を閉めると施錠した。

 スリッパを取り出して、床に置く。

「使ってください」
「あ、ありがとう」

 玄関も広いけれど、廊下も広い。……まさかこんなに広い場所でひとり暮らししているのか……?

「……なあ、もしかしてここって、持ち家……?」
「正解。だから、気兼ねなく過ごしてね。防音だし」
「え、この家全体が?」
「そう。静かなところに住みたかったから」

 どうやらこだわりがあるらしい。

 彼についていくと、「じゃあ、この部屋を使って?」と言われたので、中を覗くと、俺が住んでいた部屋よりも広い部屋に案内された。

 ……うーん、なんというか、いろいろ複雑な気分だ……。

「……本当に良いのか? こんな立派な部屋……」
「ただの部屋ですよー。ただ、あんまり掃除は出来ていないんで、そこら辺は自分でお願いします」
「……わかった、ありがとう」

 とりあえず荷物を置いて、リビングまで案内された。

「座ってて、今、コーヒー……いや、ハーブティーのほうが良いかな? 飲みものを用意するから」
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