【本編完結】一夜限りの相手に気に入られています!?

1章 一夜限りの相手

一夜限りの相手 5-1

　ぺろり、と彼が唇を舐める姿が見えた。
　そして、こちらを見てにやりと口角を上げる。

　すっと空いている手で俺の前髪を掻き上げた。こんな顔を見たところで、萎えるだけじゃないだろうか……？

「イイ顔してるね。気持ちよさそうな顔、してる」

　ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てながら、彼は楽しそうにそう言った。俺は頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。

　今まで、こんな風に言われたことなんてなかったからだ。

　目つきの悪さのせいで、大体顔を見なくても良い体位が主だった。だから、顔を見ながらなんて初めてだ。

「ばっ……！　ひぅ、ぁ……ッ！」

　悪態をつきそうになったが、ぐりっと前立腺を刺激されて腰が跳ねた。それと同時に開いた口からは嬌声が上がる。

「声も良いし、ほら、わかる？　トロトロになっているの」

　前立腺から離れて、すっかり柔らかくなったナカを掻きまわすように手を動かす。

「ね？」
「も、良いだろ、早く……ッ」

　――と口にしたところで、彼のモ・ノ・がそそり立っているのを見て、思わず目を見開いた。
　……で、でかい……。

「大丈夫、これだけトロトロになっていたら、入ると思うから」

　いつの間に用意していたのかスキンを取り出して、袋を破り装着させた。

「ゆっくり挿いれるね」

　俺の片足を上げさせて、ぴたりと後孔にあてる。

「力、抜いていて。そう、そのまま……」

　ぐぐっと入って来る。

　セックスの回数なんて数えるほどしかないが、こんなに丁寧に挿れられたことない。

　自分のデカさを自負しているからか、それとも、俺の躰を傷つけないようにするためか、本当にゆっくり、慎重に挿れていく。

「息を詰めないで、呼吸、忘れないで」

　あまりのデカさに目の前がチカチカしてきた。それに気付いたのか、彼が声を掛けてくる。

　呼吸……、そうだ、呼吸をしないと……。俺もきついが、彼もきつそうだ。ゆっくりと呼吸を深くする。段々と躰の力も抜けていく気がした。

「そう、上手」

　子どもをあやすかのような言葉遣いに、なんだか本当に力が抜けた。それを見計らったように、一番太いところが入った。

「ちょっとこのまま馴染ませようね」
「ん……」

　そっと俺の頬に触れる。
　ギラギラとした瞳からは考えられないくらいの、優しい手つきだった。

「……なぁ、俺なら、平気だから……」
「ダメですよ。セックスは、互いが気持ち良くならないと」

　辛つらそうにしている彼を見るのが何だかしのびなくて、声を掛けると真顔で返された。

　……互いが、気持ち良いセックス……？
　今までの相手とは、本当に考え方が違うのだと目を瞬かせた。