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1章 一夜限りの相手

一夜限りの相手 3-2

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「細いね、力入れたら折れそう」
「ガラス細工じゃないんだから……。それに、標準だよ」

 バスローブの下は何も身に付けていない。
 今からヤるんだし、必要ないだろうと思ったからだ。
 暗めの照明とはいえ、目視出来るくらいだからそんなに見ないで欲しい。

「脱がせて?」

 甘えるような言い方に、少し笑ってしまう。酒を飲んでいたから、成人していることはわかっている。
 彼のバスローブに手を伸ばして、その結び目を解き、はだけさせた。

 ……俺とは違い、しっかりと筋肉のついている良い躰だった。
 こりゃあ男女共にモテるだろうな、とぼんやり考えていたら、俺の着ていたバスローブがぱさりと乾いた音を立てて床に落ちた。

「……っ」

 すりすりと背中を撫でられて、くすぐったくなった。壊れ物に触れるかのように優しい触り方。

「くすぐったい?」

 こくりとうなずく。

「じゃあ、感度が増すかもね」
「え? んっ」

 ちゅう、と彼が俺の首元に吸い付いて来た。
 ころん、と彼が俺ともども寝転ぶ。そして、覆いかぶさって来た。ぎらり、と欲望の炎が見える瞳。ごくり、と思わず唾を飲む。……今までの相手は、こんな風に俺を見たことなんて、一度もなかった。

「いっぱい触って、気持ち良くしてあげる」

 そう言うと、彼は言葉通りに俺の躰の様々なところに触れてきた。ゾクゾクとした快感が走り、それと同時に申し訳なくなった。

 俺があんなことを言ったから、丁寧に触れてくれるんだろうな、と。
 首筋から鎖骨へ、鎖骨から胸の突起へと唇が移動していく。唇が胸の頂に触れたとき、ピクンと躰が跳ねた。

「……ねえ、もしかして、今までの恋人にあまり触られていなかった?」
「慣らして、突っ込んで、終わり」
「……そう。……なら、たっぷり可愛がってあげる」

 今までのことを思い出して、そう言うと、彼の眼光が鋭くなった……気がした。そして、何か気に喰わないのか、そんなことを言う。

「……え?」
「セックスの概念、変えてあげる。たくさん、気持ち良いことを知って?」

 ちゅ、ちゅっと軽く躰に口付けていく彼。
 ――どういう意味だ?
 胸の突起に指が触れた。カリカリと指先で愛撫される。確かにAVでは男のソコを愛撫しているけれど、実際にされるとなんだか不思議な気分だった。
 くすぐったいような、変な気分。じわじわ、じわじわとくすぐったさが気持ち良さに変化していく。

「……ァッ」

 ぎゅっと親指と人さし指で摘まれて、声が出た。

「やっぱり、感度良いよ。勿体ないな、こんなに感じやすい躰なのに、今まで触れられたことがないなんて……」

 独り言のように呟く彼に、俺は自分でもびっくりしていた。まさかそんなところで気持ち良くなるなんて思わなかったからだ。
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