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一章 黒髪令嬢の日常

1.黒い髪の女の子

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「痛い、です、やめてっ、くださいーー」

私の名前はフォルテシア=マーテルロ。
トリストリア公国の君主の家系である、マーテルロ家の者。
今日も私はお兄様であるアデル=マーテルロに乱暴されています。

「口答えするな、フォルテシア。お前のような悪魔の子、本当なら生まれてその場で殺すのが筋だ。だが。俺も含め、父上たちの温情で生かされてるお前に、発言権はない」

そう言って、お兄様は私をぶつ。
右手で、
左手で。
私のお腹を、ぶった。

「むしろ、感謝してほしいくらいだ。こうやって俺のストレス解消の道具になれる栄誉を。誇りに思ってもいいくらいなんだけど、っな!」

次は右足。
痛い、
いつものことだけれど、痛みには強くなれない。
この前読んだ本には、木の幹に拳を毎日叩きつけて、自身を強化する、というような文章があったけれども。
どうやら、私には当てはまらないようです。

全然、痛いです。
とても、つらいです。
早く終わってほしいです。

「今日はこのぐらいにしておくか。また明日も呼ぶかもしれないから、覚悟しておけよ」

お兄様は私の首を指で持ち上げ、じっとみつめる。
にたにたと、不敵に笑うその姿は、肉親だけれども気持ちが悪いと思います。
外でその笑顔をするべきではないと思います、

だけれども、その助言を口にすることができません。
だって、私はお兄様が言うように、本来は即座に殺されるべきだった子。
みんなとは違う、黒い髪の持ち主。
家族にはもちろん、街の人にも私と同じ髪の色はいません。
みんな、金色か銀色。
私だけが、黒い。

呪われた子供、
一族の汚点、
悪魔の依り代。

だから、仕方がないのです。
諦めるしかないのです。
生きてくためには、受け入れるしかないのです。

でも、こんな生き方をするくらいだったなら、
最初に殺してくれた方が、ずっと苦しくなかったと思います。
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