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2章 第2の婚約者

52.おわり

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リングによる結界は、バルバトロスを綺麗に封印した。
彼は叫び、暴れたが、傷を増やすだけで意味がなかった。
その傷も、秒も待たずに再生するため、二重に無意味だった。

私は、騒ぐ彼の様子をただ見つめていた。
これで、クリスティアさんの願いは果たすことができた。
けれど、それだけだ。
バルバトロスを封印したところで、何が変わる?
アルバリア、
クリスティア、
バルバトロス。
三人の後継を失ったことで、ステノン家は没落するだろう。

封印中の相手と婚約関係にあったところで、どうにもならない。
私の側からも彼に触れることはできないだろうし、
見た感じ、あの光の結界は外界と完全に遮断されている。
手を差し伸べることも、
抱きしめることもできない。
届くのは言葉くらいだ。

ステノン家が下がれば、相対的に我が家の価値は高まる。
これをチャンスに攻め込めば、その農業知識を取り込めば、政略争いは一気に有利になる。

……だが、それがなんだというのだろう。
なんの意味があるのというのだろう。

じぶんの命や、
すきな人のいのち、
わたしをすきになってくれるひとのいのち。
それより価値のあることなのかな。

しこうがぶらつく。
思考ががたつく。
なんか、つかれた。
もう、いいや。
どうでも、
どうでいい。

「くそ、くそ、どうすれば。余は完璧だ、優良種だ、愚劣な兄の計画ぐらい、余裕でっ」

うるさい、
じゃまだ、
めざわりだ。

「え、何、アリシアさん?身動きの取れない余に何をするつもり?」

きえろ、
きえろ、
しかいから。

「余に魔法、というか、破壊攻撃は通用しないのにーーってまさか」

じめん、
われる、
さける、
だいちのはざま。

「やめて、助けて、助けてよ!婚約者でしょ、アリシアさん!お願い、お願いだから助けてよ!」

おちろ、
きえろ、
みえなくなるまで、
ちのそこまで、
おちていけ。

「くそ、くそがっ!恨むぞ、呪ってやるからな!絶対にお前を許さない!余は、余はお前を許さない!」

きえていく、
ちいさくなっていく、
ことばがきこえない、
べつにいい、
ききたくない、
なにも、
ききたくない。

もう、疲れた。

「おやすみなさい、お嬢様。そして、お疲れ様でした」

めのうは、きれいだな。
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