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2章 第2の婚約者

45.ろんりーバスタイム

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一人残された部屋。
特にやることもないので(渡された秘密道具には、ちゃんと魔力をこめた)、お風呂タイムにした。

久しぶりーーというのが正確なのかはわからないが、久しぶりに感じる。
特に、浴室に一人ぼっちというのは久しぶりに感じる。
流石序列第三位、というだけあって、この軟禁室の風呂も豪華であった。

湯水の如く、ライオンのような像の口から、お湯が注がれていた。
注がれ、
溢れ、
注がれ。
私が入るまでもなく、贅沢かつ潤沢にお湯が消費されている。

「こうゆう所は、最適化しないんだな」

一人、独り呟き、私は衣類を脱ぐ。
ばさり、
ばさり、
どさり。

嫌いなデザインではないけれど、脱ぐとやはり開放感がある。
オシャレは我慢、とは言うが本当だな。
前の世界では、オシャレは私にとっての無駄の極致だったから、無頓着だったけれど。
豚に真珠、
いや、吐瀉物にキャビア乗せ、といったことろか。

ばさん、
ばしゃん。
適当にかけ湯をして、湯船につかる。

……、
…………。
静かだ。
ただひたすらにお湯が注がれる音だけが流れる。
背後の扉が急に開け放たれ、

「アリシア様、さっき言い忘れたことがーーあ、ごめん。うっかり君の裸体を視界に収めてしまったよ、これは計画完了後なんて悠長なことは言ってられないね。今すぐ結婚、取り急ぎ婚約しよう」

……なんてことは起こらない。
それはただの幻想、妄想。
恋に浮かれたバカなお嬢の幻想。
恋に狂った、お嬢の空想。

ーー

一人の風呂は寂しい。
いや、本当はそれが普通なんだけど。
むしろ、元々風呂には一人でしか入ったことなかったし。
あ、銭湯は別だな。
けど、こんな個人浴室を銭湯と同列に扱うのは失礼だ。

「あ、抜け毛」

艶やかな金色の髪が、湯船を漂っていた。
その数本をかき集め、握りしめる。

その景色が、自分はもはや日本人ではないことを改めて自覚させた。
そういえばあの時は、髪を染めるという考えもなかったからな。
多少、興味はあったけど、
私が髪の毛の色を変えたところで、金をドブに捨てるようなもの。
お粗末な2Pキャラがでるだけで、大した意味はない。
吐瀉物の色が変わろうと、それは吐瀉物なのだ。

……思考がダークネスだな。
おいおい、どうした?
そんなんだから、髪の毛も抜けるんだ。
ストレスで禿げるんだ。

ちらりと、湯気で曇った鏡を見る。
乱暴に指で曇りを剥ぎ取り、自身の姿を映す。

芸術作品のような、
神の奇跡のような、
美しいタッチの女が映る。

「この姿なら、ハゲても綺麗かも」

鏡を指でそっと撫で、自画自賛した。
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