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2章 第2の婚約者
36.主従の絆
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「お嬢様、殺人の依頼など引き受けてはなりません」
「メノウさんの言う通りです。アリシア様は高貴なお方、手を汚すべき人間ではありません」
メノウとリヒーは口々に言う。
私のことを慮って、優しい言葉をかける。
「アルベルト様の時は、あくまで相手は『火龍』、人ではありませんでした。故に、ある程度の危険を承知で止めることは致しませんでした。ですが、今回は違います。人です、我々と同じ人間なのです」
彼女は、続ける。
息も詰まらせながら、序列三位の血族の意見を否定する。
使用人が高位の血族の意見を否定する。
「龍を殺せば英雄かもしれません。ですが、人を殺せばーーそれはただの殺人者。民から畏敬され、敬愛されるべきお嬢様がすべき行為ではありませんっ」
だが、メノウの言葉にバルバトロスくんは不満そうに頬を膨らました。
十二分に可愛い、こちらの頬がまだ緩むように。
しかし、その可愛さにもちょっとだが慣れてきた。
耐性がついてきた。
今なら、ある程度冷静に彼のと相対できる気がする。
改良人間、優良人種であるバルバトロス=ステノンに。
「それは詭弁だよ。命の価値はみんな同じ!植物も、獣も、虫も、人も、龍も、悪魔も、天使もーー神だって、命があるならみんな同じ。殺せば死ぬ、終わりある命。だから差別は良くないよ」
「詭弁でも、論理は論理です。バルバトロス様が、命の価値は同じと仰るように、私たちにとっては命の価値は違うのです。私と貴方様の位が違うように」
メノウは否定を続ける。
持論を曲げず、立ち向かう。
「うーん、それは困ったな。君にも納得してもらえると、嬉しかったんだけどな。でも、一つ忘れていることがあるよ。とっても、大事なこと」
バルバトロスくんは、にぱりと口角を吊り上げて笑う。
メノウを嘲るように、
おちょくるように。
「決めるのは君じゃない、アリシアさんだ。使用人の君ではなく、『位が違う』彼女の方だ」
彼は視線を私の方に向け、あざとい笑顔を向ける。
「さて、アリシアさんに質問。君にとって、火龍を駆除した君にとって、婚約候補のお願いで、可愛い婚約候補の邪魔になっている人間二人を駆除するのは、無理なお願いかな」
両手を合わせて、
首を40°左に傾けて、
左目を瞑り、ウインク。
写真に残したいような、いつもまでも見ていられるような、そんなポーズ。
「大事な使用人の進言です。そのお願いは、申し訳ありませんが叶えることはできません」
私は彼に拒絶の言葉を告げた。
一瞬、驚いたような表情を見せた。
だが、すぐに笑みを浮かべた。
同じ笑みでも、
凶悪そうな、
残虐そうな、
そんな笑みを。
「メノウさんの言う通りです。アリシア様は高貴なお方、手を汚すべき人間ではありません」
メノウとリヒーは口々に言う。
私のことを慮って、優しい言葉をかける。
「アルベルト様の時は、あくまで相手は『火龍』、人ではありませんでした。故に、ある程度の危険を承知で止めることは致しませんでした。ですが、今回は違います。人です、我々と同じ人間なのです」
彼女は、続ける。
息も詰まらせながら、序列三位の血族の意見を否定する。
使用人が高位の血族の意見を否定する。
「龍を殺せば英雄かもしれません。ですが、人を殺せばーーそれはただの殺人者。民から畏敬され、敬愛されるべきお嬢様がすべき行為ではありませんっ」
だが、メノウの言葉にバルバトロスくんは不満そうに頬を膨らました。
十二分に可愛い、こちらの頬がまだ緩むように。
しかし、その可愛さにもちょっとだが慣れてきた。
耐性がついてきた。
今なら、ある程度冷静に彼のと相対できる気がする。
改良人間、優良人種であるバルバトロス=ステノンに。
「それは詭弁だよ。命の価値はみんな同じ!植物も、獣も、虫も、人も、龍も、悪魔も、天使もーー神だって、命があるならみんな同じ。殺せば死ぬ、終わりある命。だから差別は良くないよ」
「詭弁でも、論理は論理です。バルバトロス様が、命の価値は同じと仰るように、私たちにとっては命の価値は違うのです。私と貴方様の位が違うように」
メノウは否定を続ける。
持論を曲げず、立ち向かう。
「うーん、それは困ったな。君にも納得してもらえると、嬉しかったんだけどな。でも、一つ忘れていることがあるよ。とっても、大事なこと」
バルバトロスくんは、にぱりと口角を吊り上げて笑う。
メノウを嘲るように、
おちょくるように。
「決めるのは君じゃない、アリシアさんだ。使用人の君ではなく、『位が違う』彼女の方だ」
彼は視線を私の方に向け、あざとい笑顔を向ける。
「さて、アリシアさんに質問。君にとって、火龍を駆除した君にとって、婚約候補のお願いで、可愛い婚約候補の邪魔になっている人間二人を駆除するのは、無理なお願いかな」
両手を合わせて、
首を40°左に傾けて、
左目を瞑り、ウインク。
写真に残したいような、いつもまでも見ていられるような、そんなポーズ。
「大事な使用人の進言です。そのお願いは、申し訳ありませんが叶えることはできません」
私は彼に拒絶の言葉を告げた。
一瞬、驚いたような表情を見せた。
だが、すぐに笑みを浮かべた。
同じ笑みでも、
凶悪そうな、
残虐そうな、
そんな笑みを。
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