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2章 第2の婚約者
32.聖アルベルト伝説
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今回の婚約、一つ疑問に思うことがあった。
どうして私の婚約相手が
武のアルバリアでもなく、
知のクリスティアでもなく、
何の異名もついていない、ただのバルバトロスさんなのだろうか、と。
前回の相手、アルベルト=アルバートは腐っても次期当主であった。
最早我が屋敷にて軟禁中で、遊び相手としての価値しかない彼でも、次期当主だったのだ。
ちなみに、彼は公式(領民への公開情報)には討ち死にしたことになっている。
私、アリシア=ラインバルトを自国領へ移送中、火龍に遭遇。
アルベルトは、アリシアを守るために愛刀セプテートを握りしめ火龍と相対する。
その勇敢な姿に、最初は政略結婚と割り切っていたアリシアも心打たれる。
地形が変わるほどの壮絶な争い、
一進一退の息もつかせぬ攻防、
爪を躱し、
牙を受け流し、
炎にも怯まず、
アルベルトは刀を握り、アリシアを自国を守るために戦いを続けた。
最後はアリシアの声援を受け、
全身全霊の突きを火龍の喉元に放ち、生き絶えた。
彼と火龍の戦いの場は、不思議なことに一面花畑と化しているらしい。
彼が愛してやまなかった、美しいバラのような花が咲き乱れているらしい。
まるで、アルベルト=アルバートが安らかに眠れるよう神さまが施したように。
そういうことになっているらしい。
筋書きはゴットファザ作である。
とんだ伝説である。
なので、婚約破棄というか婚約解消状態なのだ。
だって、相手が死んでしまったのだから。
死者とは、添い遂げることはできない。
死者とは、世継ぎを残すことはできない。
だから、新たな相手を他に見つけにいく、ということも大して問題がないのだ。
亡くなったアルベルトのためにも、
彼の偉大なる死を乗り越え、自らが平和の架け橋となるために政治利用されることも厭わない、健気なお嬢様。
それが私、アリシア=ラインバルトというキャラクターの公式設定なのだ。
「たぶん、ゴットファザ様はバルバトロス様が次期当主になりうると考えているのだと思います」
「え、何の異名もない、生まれも遅い三男坊が次期当主になりえるのかな=」
「それは分かりません。ですが、あの方が無駄で無意味なことをされるとは、到底思えません」
「それは……確かに」
あの男はただの筋肉馬鹿ではない。
どこまでも用意周到で油断をしない、王足りうる男だ。
だからこそ、私の反逆行為についても準備を怠らず、当たり前のように対処できていた。
私の最終攻略対象はゴットファザその人となるだろう。
私からの直接攻撃ができない以上、手段と戦略は相応のものが必要だろうが。
こちらが予測する程度の攻撃は、普通に回避されそうだ。
ーーっと、その話はまだ先だ。
まずは目の前の問題を片付けなくては。
バルバトロス=ステノン、
如何にしてあの醜悪な怪物を籠絡し、狙う結果を手に入れるか。
どうして私の婚約相手が
武のアルバリアでもなく、
知のクリスティアでもなく、
何の異名もついていない、ただのバルバトロスさんなのだろうか、と。
前回の相手、アルベルト=アルバートは腐っても次期当主であった。
最早我が屋敷にて軟禁中で、遊び相手としての価値しかない彼でも、次期当主だったのだ。
ちなみに、彼は公式(領民への公開情報)には討ち死にしたことになっている。
私、アリシア=ラインバルトを自国領へ移送中、火龍に遭遇。
アルベルトは、アリシアを守るために愛刀セプテートを握りしめ火龍と相対する。
その勇敢な姿に、最初は政略結婚と割り切っていたアリシアも心打たれる。
地形が変わるほどの壮絶な争い、
一進一退の息もつかせぬ攻防、
爪を躱し、
牙を受け流し、
炎にも怯まず、
アルベルトは刀を握り、アリシアを自国を守るために戦いを続けた。
最後はアリシアの声援を受け、
全身全霊の突きを火龍の喉元に放ち、生き絶えた。
彼と火龍の戦いの場は、不思議なことに一面花畑と化しているらしい。
彼が愛してやまなかった、美しいバラのような花が咲き乱れているらしい。
まるで、アルベルト=アルバートが安らかに眠れるよう神さまが施したように。
そういうことになっているらしい。
筋書きはゴットファザ作である。
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なので、婚約破棄というか婚約解消状態なのだ。
だって、相手が死んでしまったのだから。
死者とは、添い遂げることはできない。
死者とは、世継ぎを残すことはできない。
だから、新たな相手を他に見つけにいく、ということも大して問題がないのだ。
亡くなったアルベルトのためにも、
彼の偉大なる死を乗り越え、自らが平和の架け橋となるために政治利用されることも厭わない、健気なお嬢様。
それが私、アリシア=ラインバルトというキャラクターの公式設定なのだ。
「たぶん、ゴットファザ様はバルバトロス様が次期当主になりうると考えているのだと思います」
「え、何の異名もない、生まれも遅い三男坊が次期当主になりえるのかな=」
「それは分かりません。ですが、あの方が無駄で無意味なことをされるとは、到底思えません」
「それは……確かに」
あの男はただの筋肉馬鹿ではない。
どこまでも用意周到で油断をしない、王足りうる男だ。
だからこそ、私の反逆行為についても準備を怠らず、当たり前のように対処できていた。
私の最終攻略対象はゴットファザその人となるだろう。
私からの直接攻撃ができない以上、手段と戦略は相応のものが必要だろうが。
こちらが予測する程度の攻撃は、普通に回避されそうだ。
ーーっと、その話はまだ先だ。
まずは目の前の問題を片付けなくては。
バルバトロス=ステノン、
如何にしてあの醜悪な怪物を籠絡し、狙う結果を手に入れるか。
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