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第五章
2005年 ニューヨーク ブルックリン
しおりを挟む『ドラゴンタトゥーズ』として再始動した俺たちは、ブルックリンのライブハウスでライブを重ね、少しずつファンも増えてきた。特に、アレンの整った容貌に夢中になる女性ファンが増え、ついにはストーカーまがいの行為にまで発展することがあり、アレンは閉口していた。
「ったく、俺たちはアイドルじゃねぇんだぞ! ちゃんと俺らの音楽を聴けよな!」
アレンは不満を漏らした。
「1960年代のビートルズも、こんな気持ちだったんだろうな」
「でもあいつら、当時は『4人はアイドル』だろ?」
ホットドッグを頬張りながら、マーティンがそう言った。
2005年7月、俺たちはコニーアイランドに来ていた。コニーアイランドはブルックリンの南にある海沿いの観光地で、この日は俺たちのバンドもここでライブをすることになっていた。会場には多くの人が詰めかけ、ライブは大成功。プロモーターのエディは大喜びで「来年もぜひ参加してくれ」と言ってきた。
ブルックリンに住んで長い俺だが、コニーアイランドに来たのは初めてだった。
「ちょっと遊んで帰ろうぜ」とアレンが提案し、俺たちはネイサンズでホットドッグを食べ、遊園地でジェットコースターに乗った。
ジェットコースターを降りた直後、チャンが顔を真っ青にしてトイレに駆け込んだ。それを見て俺たちは大笑いした。
「チャンにも苦手なものがあったんだな!」
その後、俺たちはビーチで寝そべり、日光浴を楽しんだ。燦々と降り注ぐ太陽、青空に浮かぶ入道雲——その光景は、まるで俺たちの前途を明るく照らす希望の光のようだった。
「ここのホットドッグ早食い競争って、日本人がよく優勝してるんだぜ」
「マジか?」
「しかもさ、そのチャンピオンは全然太ってないんだよ。それなのに、アメリカ人の倍の体型の奴らよりも、もっと食べるんだ。それが爽快でさ、日本人の胃袋ってどうなってんだろうな…」
俺は持っていたデジタルカメラで、皆の写真を撮った。するとアレンが、「せっかくだし、俺たちも撮ってもらおうぜ!」と提案。近くを歩いていた観光客に頼んで、俺たち全員で記念写真を撮ってもらった。
その後、突然マーティンがTシャツを脱ぎ捨て、海に向かって走り出した。波しぶきを浴びながらこちらに手を振るマーティンを見て、アレンも駆け出す。それを見た俺とチャンも顔を見合わせ、思わず駆け出した。俺たちは海で水を掛け合い、子どものように無邪気に笑った。
俺たちの子供時代は、必死に生きることに追われていて、家族で海水浴に行くような余裕なんてなかった。今ようやく、その頃の時間を取り戻すかのように夢中で遊んだ。
水平線に沈んでいく夕陽を見ながら、アレンがしみじみと言った。
「今日は本当に楽しかったな……。俺たち、ずっとこんなふうに一緒にやっていけたらいいな。おじいちゃんになっても……ローリングストーンズみたいにさ!」
沈まない夕陽はないと分かってはいたが、俺たちはみんな、この瞬間がずっと続けばいいと願わずにはいられなかった。
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