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第三章

12 別れの前夜 1

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 舌を深く絡めながらベスカの手がヒスイのシャツを脱がし、下衣を剥いでいく。ヒスイもベスカのシャツをまくり上げて、逞しい体に手を滑らせた。

 ベスカの大きな乾いた手に体中を撫でまわされるのが、たまらなく気持ちいい。同時に深い官能を知る体は、もっとと先を強請るようにくねり、愛しい手に押し付けるように動いてしまう。

 それを恥ずかしく思いつつも、ベスカに愛されていると確信しているから、どんなふうに振舞っても受け入れてもらえるという自信がヒスイを大胆にする。ヒスイは着ていたものを全て脱がされたタイミングでベスカの体を押し、体を反転させると腰の上に跨った。

 胸の上でよじれて丸まったシャツを脱がせて、そのままくちびるを吸う。弾力のあるベスカのくちびるを上、下と順に軽く食んでみせると、ベスカが誘うようにくちびるを開いたから、遠慮なくそこへ舌を潜り込ませた。ベスカの熱い口腔を探り、歯茎や歯の裏側を舌先で愛撫する。体勢のせいでこぼれる唾液がベスカの口を濡らして、流れ込んだそれを彼が飲み込むのに、ひどく興奮した。

「……ン、ん、……っ、ふ……」

 自分がされて気持ちがいいところを、一生懸命舌を伸ばして舐めたりつついたりする。ヒスイにしたいようにさせながら、ベスカの手はヒスイの体を撫でて、薄い胸の筋肉を揉むように掴んだ。

「――っ、んっ」

 この先の快感を予測して乳首が固く尖る。その周りの皮膚が引っ張られる快感に、ヒスイは浅く喘いだ。ベスカの指がヒスイの乳首をかすめる頃には、キスも曖昧になって、ただくちびるをくっつけて喘ぐだけになっていた。

「ヒスイのここ、コリコリになってるね。どうされるのが気持ちいい? くすぐるのと、摘まむのと」

 もどかしさと思うように呼吸ができない息苦しさからヒスイが首を仰け反らせた瞬間、ベスカが囁いてヒスイの胸の尖りを摘まんだ。指の腹でこすり合わせるようにされると、背筋をびりびりと快感が走り抜ける。

「あぁ……っ」

 たまらず、ベスカの頭を抱えるようにして背中を丸め、シーツに額を押し付けた。

「それ、それいい……っ」
「うん、それから?」

 これが気持ちいいのだろうと教えるように、ベスカの指が乳首を軽く引っ張る。慣れた体は薄桃色の粒が得た快楽をそのまま下肢に伝え、ヒスイは全身を震わせて喘いだ。

「それ……っ、好きぃ……っ」

 ヒスイの下腹部では天を仰いだ性器の先端が蜜を滲ませる。それは糸を引いて流れ落ち、ベスカの腹筋を濡らした。

 今日はベスカの体をたくさん愛そうと思い上に乗っかったのに、ベスカの手に撫でられただけで体がトロトロに蕩けてしまう。それどころじゃなくなって、ヒスイはベスカの耳にくちびるを押し当てながら乱れた浅い呼吸を繰り返した。

 その間もベスカの手はヒスイの乳首を撫でて転がし、腰を掴んで上に引き上げる。膝をつく姿勢になったヒスイの体を頭上に押し出すようにして、ベスカは四つん這いになったヒスイの体の下に潜り込み、すっかり固くしこった乳首をくちびるに含んだ。

「んぁ……っ」

 柔らかい刺激のあとすぐに、濡れた舌が敏感な先端をつつく。甘い快感に震えだす太ももを、ベスカの手が撫で、尻の肉を掴んでやわやわと揉みこむ。肉が引きつれる動きに後孔が刺激され、その奥がきゅんと疼いた。

 内側に早く埋め込んでほしくて、無意識に腰が動く。そんなヒスイの欲求がわかっているのか、ベスカはくちびるに胸の粒を挟んだまま、慎ましく窄まる入り口をそっと撫でた。

「あぁあ……」

 それだけで甘い声が漏れて、腰が跳ねる。

「ヒスイ、もっと感じて。かわいい声を聞かせて」

 片手で尻の肉を揉みながら、もう片手ですでにびしょびしょに濡れているヒスイの陰茎をそっと握ると、柔らかく握り軽く扱いた。皮が動くのに合わせてぐんと硬くなり、先端からまたとろとろと透明の液体が溢れる。

「んぅ……、ぅ」

 気持ちよすぎて、どうしていいか分からない。手元にあった枕を掴んで引き寄せ、募る快楽を逃そうとした。けれど、ヒスイの性器を扱くベスカの手の動きが淫らになるにしたがって、ただ甘い声を零すことしかできなくなる。

「んっ、んっ……、あぁっ」

 ヒスイはたまらず背を反らして悶えた。

「やっ、ベスカっ、もう……っ」

 ピンク色の先端を一撫でされ、あっけなく白濁を散らせる。娼館で男たちに精を分け与え続けていた時も感じやすく達しやすかったが、ベスカにされる気持ちよさは段違いだ。まったく耐えられず、あっという間に絶頂へと導かれる。

 ヒスイの出した白濁を手のひらで受け止めたベスカは、ずっとヒクヒク収縮し続けている後孔に塗りつけ、指を中へと押し込んだ。

 最初こそ入り込む異物を押し出そうとする動きを見せたけれど、そこはすぐに綻んで精液を纏うベスカの指を受け入れる。そして、待っていましたというように柔らかく絡み、奥へと誘った。内側まで精液を塗り込めるために何度か指を抜き差しすると、その動きだけでヒスイは甘い官能に浸されて腰を震わせる。

「あぁ……、あ、っ、あ」

 内側の浅いところにある感じる部分に触れてほしくて、腰が勝手に動く。ベスカは焦らすことなく、ヒスイが感じてたまらなくなる小さなしこりをそっと撫でた。

「やぁぁ……っ、そこ、そこ……っ」

 腰の奥から何かがせりあがるような気配がして、切羽詰まった声を漏らして背を丸めると、尖りきった乳首がベスカのくちびるから離れた。それを咎めるようにベスカは頭を持ち上げて乳首に再び吸い付き、軽く歯を立てる。それと同時に再び、内側のしこりをきゅっと押し込んだ。

「あ、あぁあ……っ、あ、ぁあ」

 泣くような声を漏らして全身をびくびくと震わせ、ベスカがくれる快楽を享受する。後孔は激しく収取して指を締め付け、先ほど達したばかりの性器からはまた、押し出されるようにとろとろと白濁が零れてベスカの腹の上に散った。

 ヒスイの感じるところを知り尽くしているベスカは、歯に挟んだ乳首の先端を舌先でちろちろと舐めながら、内側を広げるように指を回して抜き差しする。そのたびに内壁を濡らす精液がぐちゅぐちゅといやらしい水音を立てた。

 中途半端に達したヒスイは全身が敏感になっていて、胸にベスカの鼻息がかかるだけで震えてしまう。ゾクゾクと感じるたびに、内側を埋める指を粘膜が食んだ。ヒスイの体が小さく震え始めると、ベスカは指を増やしてヒスイの中を掻き混ぜる。質量を増したそれに、ヒスイは歓喜するような泣き声を上げ、掴んでいた枕に顔を埋めた。

「ひぅ……っ、あー……あ、あ、もっと、もっと、ベスカ……っ」

 疼いてたまらない後孔を満たしてほしいという意味だったのに、ベスカは充血してしこった胸の粒をキュウっと吸い上げて、ヒスイを高く啼かせる。ビクンと下腹部が大きく波打ち、また白濁がぽたぽたと散った。もう、自分が達しているのかそうでないのかわからない。全身が熱くて、膝と腕にシーツが触れる感覚すらたまらなく、泣きながら身を捩った。

 ふいに、ずっと放っておかれた反対側の胸の粒にコリッと歯を立てられ、高い悲鳴を上げた。

「やぁぁアーーーっ、あっ、あぁぁ……っ」

 今度はプシュッと精液が吹き上がり、ベスカの喉元までを汚す。達したタイミングでぎゅうっと強くベスカの指を締め付け、それにすら感じたヒスイは、ついに膝を立てていられなくなった。ズルズルとベスカの上に倒れこみ、荒い呼吸を繰り返す。汗がにじむ背中を撫でられ、その感覚にまた全身が震えた。

「いま、ダメ……、しないで、触らないで」

 感じすぎて自分の許容量を超えたヒスイが、ぽろぽろと涙をこぼしながら訴えるけれど、二本の指を咥えこんだ後孔は不規則にうねって絡まり、ベスカの指を離さない。ベスカが指を抜き取ろうとすると、その感覚に煽られてヒスイはまた泣き声をあげた。

「やっ、や、ダメ、動かさないで……っ」
「ちょっとだけ我慢して。もっと気持ちよくしてあげるから」

 言葉とは裏腹に、粘膜は絡んで引き止める。ベスカの指がそれに逆らい、ゆっくりと出ていった。

「ひ……っ」

 その刺激でヒスイはまた軽く達する。ちゅぷっと音がして指が抜けても、後孔はしばらく指の形に口を開けていて、そこから先ほど塗りこめた精液がじんわりと滲んだ。

 泣きながら瞼を持ち上げたヒスイの視界の端に、視界の端にベスカが自身の性器を握り軽く扱くのが見える。その逞しさに喉が鳴った。ふいに太ももを掴まれ引き上げられる。ヒスイの蕩けた後孔に熱い性器の先端が触れ、それが孔をなぞるように動いた。

「やあ、あぁぁあっ」

 内側から漏れたヒスイ自身の精液とベスカの先走りで、それはぬるりと窄まりから谷間を滑る。性感が集まる部分をなぞられて、ヒスイは激しく喘ぎながら首を左右に振った。

 黒髪が汗に濡れた首筋や頬に張り付く。繰り返し体を震わせながらも、ほしいと訴える本能に突き動かされるように、ヒスイは自ら腰を押し付けてベスカの性器を迎え入れようとした。
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