上 下
68 / 91

六十五話 スライム討伐数は異常だった

しおりを挟む
スライム討伐後、近くの岩に座って俺達は話し合いを始めた。

「今更だけどさ、スライム全部倒したの、ダメだったんじゃないか?」

「なんで?」

瑞希は敵を討伐したんだから良くない?というふうに俺を見てきた。

「いや、だって、みんなの依頼が無くなったというか...」

考えても見てほしい。依頼はスライム討伐しかないのに、討伐対象であるスライムは全部倒してしまった。つまり、仕事を無くしてしまったのだ。俺が瑞希にそう説明すると、手をポンと鳴らして納得したような素振りを見せた。

「確かにみんなの仕事がなくなっちゃったね」

瑞希は苦笑しながら呟いた。やらかしてしまったことを理解したようだ。
するとそこでエリスが口を開いた。

「別に平和になったんだしいいんじゃない?」

エリスはまだ分かっていなかったようだ。
平和はいいことだがやりすぎたということなんだけどな。

「倒すのはいいんだが、全部倒すのはやりすぎたってことだ。駆け出し冒険者たちが狩る敵がいなくなったんだ」

「というと?」

「稼ぎが0になるんだ。それに駆け出し冒険者はお金なんて持っていないやつのほうが多い」

「あー、それは大変だね」

エリスはあまり反省もせずに返事した。
確かにそのうちまた湧いてくるから関係ないんだけどな。

「じゃあ、あまり気にしないという方針で...取り敢えずギルドに戻るか」

「うん、そうだね」

「気にしないのはどうかと思うけど、やっちゃったことは仕方が無いし...戻ろっか」

エリスはすぐに返事したが、瑞希は少し反省しているようで仕方なく戻ることに賛成した。


冒険者ギルドにつき、適当に受付嬢に声をかける。

「依頼完了しました」

「かしこまりました。ではギルドカードを提示して頂けますか?」

「わかりました」

俺は返事をして、ギルドカード提示する。
続いてエリスと瑞希も同じように提示する。
そして、確認のためギルドカードを見た受付嬢はーーー

「えぇーー!!」

いきなり叫び始めた。まあ、そうなるわな。
なんたって、スライムの討伐数が軽く1万は超えてるからな。
俺がそんなことを考えていると、叫んでいた受付嬢は受付の奥へと走っていった。
ギルド長を呼びに行ったのかな?
少しして、叫んでいた受付嬢が戻ってきた。

「ギルド長のところへ案内しますので、どうぞ中へ」

あ、やっぱりギルド長を呼びに行ってたのか。流石にこれだけ倒せば受付嬢だけでは対処出来ないか。俺達はいつも通りの道を通り、いつも通りの部屋に向かった。
いつものように受付嬢がノックし中に入る。
するといつものようにギルド長がいた。

「取り敢えず座ってくれ」

俺達はギルド長の言葉を聞いてから椅子に座る。

「さて、今回は何をしたんだ?」

俺達が椅子に座ってすぐにギルド長はこう尋ねてきた。何かやった前提かよ…。
まあ、何かしてるんだけどさ。取り敢えず説明するか。俺はスライムの件について説明した。

「んー、そんなにもいたのか...」

ギルド長は何かを考えるように呟いた。
数秒の思考後、受付嬢からギルドカードを受け取った。ギルド長は受け取ったカードを見て目を見開いた。
あれ?さっきかなりやばい数を討伐したって説明したはずなんだけどな...。

「あの、ギルド長、どうしました?」

「あぁ、すまない、予想外の数に驚いていたんだ」

そんなに驚くぐらい討伐してたかな?
見ていないからわからないけど、そこまでな気がするんだが。と言うより、そろそろ本題に行こう。

「ギルド長、呼び出された理由はなんですか?」

「ああ、少し依頼をしたくてな」

「依頼ですか?」

「そうだ。自分の目で見たから分かっていると思うが、スライムが大量発生している。
だから、原因を探って欲しくてな」

なるほど、確かに原因は探る必要があるだろう。ただ、俺達はギルドから依頼された大会がある。そこに行くために3日前ぐらいには出ておきたい。大会会場の方でも何かしたいしな。と言うことは今日を合わせて期限は4日だ。その間に原因を解明できるとは思えない。

「ギルド長、俺達は大会もあるんですけど」

「もちろん、わかっている。だから、大会に行くまででいい。少しでも情報を集めておきたいんだ」

「それなら...エリス、瑞希、どうだ?」

俺は横にいるエリスと瑞希に尋ねてみた。
断るとは思えないが念のためだ。
エリスと瑞希は俺の問に頷いて返事した。
やっぱり断らないよな。

「ギルド長、その依頼受けさせてもらいます」

「ありがたい。取り敢えずは依頼完了の手続きだな。スライムが計10万体倒されてるから...1人あたり金貨600枚だな」

「「「え?」」」

驚きの数字に3人の声が揃った。
え、スライムそんなにいたの?かなりやばい数字じゃん。街が襲われたら即死レベルだろ。というかそんなに倒した覚えないんだけど。確かに1面スライムだらけでどれがスライム単体なのか分からなかったけどそんなにいたの?

ま、まあ、貰えるに越したことはないか。
俺達は1人辺り金貨600枚貰って部屋を出ることにした。というか、こんなにすぐに金貨出せるものなんだな。それに、金貨合計1800枚も渡してよくギルドは破綻しないな。
そんなことを考えながら扉を出ようとしたところで、ひとつ忘れていたことがあったのを思い出した。

「ギルド長、瑞希の大会参加の件、どうなりました?」

「国王様に確認したところ、出ていいそうなので、参加できるぞ」

「そうですか。ありがとうございます」

俺はギルド長にお礼をして、部屋を出た。


こうして俺達はスライム大量発生の原因を探りに行く事になったのだった───。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おばあちゃん(28)は自由ですヨ

七瀬美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。 その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。 どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。 「おまけのババアは引っ込んでろ」 そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。 その途端、響く悲鳴。 突然、年寄りになった王子らしき人。 そして気付く。 あれ、あたし……おばあちゃんになってない!? ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!? 魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。 召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。 普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。 自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く) 元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。 外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。 ※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。 ※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要) ※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。 ※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。

レオナール D
ファンタジー
異世界召喚。 おなじみのそれに巻き込まれてしまった主人公・花散ウータと四人の友人。 友人達が『勇者』や『聖女』といった職業に選ばれる中で、ウータだけが『無職』という何の力もないジョブだった。 ウータは金を渡されて城を出ることになるのだが……召喚主である国王に嵌められて、兵士に斬殺されてしまう。 だが、彼らは気がついていなかった。ウータは学生で無職ではあったが、とんでもない秘密を抱えていることに。 花散ウータ。彼は人間ではなく邪神だったのである。 

器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

武雅
ファンタジー
この世界では8歳になると教会で女神からギフトを授かる。 人口約1000人程の田舎の村、そこでそこそこ裕福な家の3男として生まれたファインは8歳の誕生に教会でギフトを授かるも、授かったギフトは【器用貧乏】 前例の無いギフトに困惑する司祭や両親は貧乏と言う言葉が入っていることから、将来貧乏になったり、周りも貧乏にすると思い込み成人とみなされる15歳になったら家を、村を出て行くようファインに伝える。 そんな時、前世では本間勝彦と名乗り、上司と飲み入った帰り、駅の階段で足を滑らし転げ落ちて死亡した記憶がよみがえる。 そして15歳まであと7年、異世界で生きていくために冒険者となると決め、修行を続けやがて冒険者になる為村を出る。 様々な人と出会い、冒険し、転生した世界を器用貧乏なのに器用貧乏にならない様生きていく。 村を出て冒険者となったその先は…。 ※しばらくの間(2021年6月末頃まで)毎日投稿いたします。 よろしくお願いいたします。

若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました

mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。 なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。 不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇 感想、ご指摘もありがとうございます。 なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。 読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。 お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。

処理中です...