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四十七話 可愛いは正義だった(改稿します)

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ダンジョンの入口付近に着くと、そこは相変わらず人がいなかった。最初はエーレンも一緒に中に入る予定だったのだが、入口の兵士達に、危険だし、転移石もないからと止められて渋々入るのを断念していた。
そんなことが起こったあと、俺達は入口の近くでダンジョン用転移石を使う。すると俺達が昨日、転移石を使った場所に出た。

転移石を使った場所、それはーーー階層主の部屋だ。さて、ここで階層主について話そうと思う。階層主は5階層毎にいるのは前に話したと思うが、今は関係ない。階層主は一定時間経過すると再び出現する、というのが重要なのだ。

つまり、俺の言いたいことはこういう事だ。
目の前にーーーファイアドラゴンがいる。
俺は目の前にいるファイアドラゴンに驚き、慌ててその場から飛び退いた。その際かなり強く地面をけったので、地面に穴が空いてしまった。俺は部屋の端に着いてから、ほかの2人の様子を見てみる。

まずエリスは、ゆっくりと俺の方へと歩いてきている。すごいな、いきなり前にあんな奴がいて平常心を保っているとは...。
次いで瑞希を見てみる。瑞希は剣を抜いてすぐに、ファイアドラゴンの方へ向かっていき、首の高さまで飛び上がった。瑞希はファイアドラゴンの首目掛けて剣を横薙ぎに払う。するとファイアドラゴンの首が体からはね飛んで無くなった。
ファイアドラゴン、瞬殺です。前に戦った時はかなり戦闘に近かったのだが、今回は一方的に殺しただけである。

俺は階層主、可哀想だなーと思いながらエリスと一緒に瑞希の方へと近づいていく。
瑞希はまたも幸運のおかげでドロップした何かを拾っている。俺達はそのドロップ品の効果をてきとうに見てから次の階層へ進む。
次の階層からは特に面白いことが無かったので、簡単に説明するだけにしようと思う。


16階層
1面水で満たされていた。特に魔物が出てこなかった。釣りでもしてみたいな。

17階層
ワニと秋刀魚の魔物が出てきた、弱かった。

18階層
マグロとタイに似た魚の魔物が出てきた。どうでもいいが、俺はマグロ大好きだ。
この魔物食べれるかな?俺は一応瑞希のアイテムボックスに保存しておいてもらった。
ついでにいうと、アイテムボックスは生きている物以外ならなんでも入れれるそうだ。レベルによって、入れることの出来る量が変わるらしい。

19階層
亀の魔物が出てきた。甲羅が硬かったが、素手で割れないことは無い。数が多くて面倒くさかった。

20階層
階層主の階層だ。この階層は少しだけ長く説明しようと思う。
この階層は水が一切なく、今までの階層主の階層と一緒だった。俺達は一本道を進んでいくと、扉が現れた。瑞希はいつも通り扉を開き、中に入っていく。俺とエリスも一緒に中に入る。瑞希は真ん中に向かっている途中で何故か止まった。俺が何があったのだろうか?と考えていると部屋の明かりがついた。
部屋の明かりのおかげで部屋が見渡せるようになり、何故瑞希が止まったのかが分かった。部屋のほとんどが水で満たされていたのだ。水で満たされているというより、池がある。俺がその池をじっくりと見ていると、池でなにか跳ねた。かなり大きい生き物だ。

その何かは瑞希の方に泳いでいき、池から出てくる。その姿はクジラののようだった。
池にクジラ!?なんで池!?など、俺がどうでもいいことを考えていたときに、瑞希は既にクジラにかけていた。瑞希はクジラのような魔物の頭に剣を突き刺し、その後剣を抜き取った。そして、クジラから少し離れた。剣を抜き取られたクジラは少しの間叫んでいたが、すぐに泣きやみ瑞希の方に突進した。
瑞希はあっさりとその攻撃を躱し、頭を何度も斬りつけた。するとクジラは力なく倒れ、何かをドロップした。
今回も簡単に倒される階層主、可哀想だな。
瑞希はドロップアイテムを拾って、俺達の方に近づいてくる。


「ねえ涼太、どうやって次の階層行くの?」

瑞希は池の向こうを指さしながら俺に聞いてきた。次の階層に行く階段は、池の向こう側にあり、そこに行く手段は池を渡る以外にない。俺はどうしたものか、と考えていると池に変化が現れた。
池の底から何かが浮かんできたのだ。石がどんどん並んでゆき、橋ができ、次の階層へ行くことが出来るようになった。
俺はしばらく愕然として固まった。
何この技術、凄すぎでしょ!
俺がすげーと声に出していると、瑞希とエリスに行くよ、と言われたので気を引き締め直して次の階層へ降りていく。


21階層
この階層は1面氷で覆われていた。今更だが、このダンジョンは階層主毎に、コンセプトが変わっているのだろうか?
そんなどうでもいいことはほっておいて、
この階層ではペンギンの魔物が出てきた。
あまり強くなかった。ペンギンの魔物は普通のペンギンの見た目だったので、瑞希は可愛すぎて倒せない!とか叫びながら、頑張って攻撃していた。
ペンギン倒させるとか、このダンジョン鬼畜かよ!

22階層
今回の敵は狐の魔物だった。普通の狐だ。すごく可愛い狐だ。瑞希はその可愛すぎる狐の姿を見て、流石に攻撃できなくなったのか剣を構えずに敵の間を走り抜けている。
俺もこんなに可愛い生き物を攻撃することは出来ないので瑞希と一緒に走る。いくら魔物だからといって狐を攻撃するのは無理だ!
このダンジョンはやっぱり鬼畜だな!

23階層
今回の敵はセイウチのような魔物だ。
セイウチの魔物は瑞希的にまだ倒せる方らしい。さっきのペンギンに比べたら全然まし、だそうだ。セイウチ可哀想だ。セイウチはスパスパ斬られていった。

24階層
今回の敵は倒せない。なぜならアザラシだからだ。瑞希はアザラシloveなのだ。
俺達は誰1人アザラシを倒すことを許されず、ひたすらアザラシのような魔物の攻撃を避けながら次の階層へ行く階段を探した。
そして、瑞希の幸運の力が最大限に使われたのか、3分ほどで見つかった。

25階層
階層主がいる場所だ。相変わらずの一本道を進んでいき、いつも通り階層が書かれた扉が出てくる。そしていつも通り俺達は部屋の端へ、瑞希は部屋の中央へ進み、部屋が明るくなる。明かりがつき周囲を見渡せるようになると、そこには1面氷で覆われており、部屋の隅には綺麗な氷柱が出来ている。

少しして、大きな魔物が氷の中から飛び出してきた。その魔物は体が真っ白で熊のような姿をしている。見た目は完璧ホッキョクグマだ。だが、顔が違う。顔が歪んでいる。
俺は内心ホッとした。なぜかと言うと、見た目が普通のホッキョクグマなら倒せなかったかもしれないからだ。ホッキョクグマはクマ科であり危険性が高いが、見た目は結構可愛く、人気である。その証明として、動物園などではホッキョクグマがいる所がある。そして、ホッキョクグマのグッズがかなりの数ある。そんな可愛い動物を殺すなど、瑞希には無理だっただろう。だが、今回は顔が生き物の顔ではない。これではいくら体がホッキョクグマだろうと、躊躇する余地がない。

瑞希はホッキョクグマのような魔物の顔を見た瞬間に、剣を抜き、一気に敵へと詰め寄った。そして首へ1振りして、勝負が決した。
ホッキョクグマの歪んだ顔が地面に落ち、その後に何かがドロップした。
瑞希はドロップしたものを拾って、俺とエリスのところに来た。そしててきとうにそのドロップ品について話して、次の階層へと降りていく。

次の階層に降りたところで、今日のダンジョン探索を止めることになった。
理由としてはペンギンの魔物を倒したことによる精神的ダメージだ。瑞希はかなり精神的に消耗していたらしく、普段はあまり見ないぐらい疲れた顔で、今日はこれ以上進みたくない、と言われた。俺とエリスに否定する権利はないので、今日のダンジョン探索を辞めることにした。


俺は瑞希に、お疲れ様と言ってダンジョン用転移石を使って入口に戻ったのだった───。
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