上 下
46 / 91

四十五話 久しぶりの城での夕食だった(改稿します)

しおりを挟む
俺達は城で夕食をとることになった。瑞希は元の世界にいた時と変わらず、落ち着いて食べている。俺は申し訳ないな、という気持ちで食べていたが、エリスだけは違った。
エリスの方を見てみると緊張しているのか、ガチガチで動きがロボットのようだった。

まあ、この世界生まれの人間にとっては仕方ないだろう。
なぜならーーー国王様と一緒に夕食を食べているからである。王女様は依頼を一緒に受けて少しなれているらしいが、国王様は本気で無理らしい。

ちなみになぜ国王様と一緒に食べているのかと言うと、俺がいるので久しぶりに皆一緒に食べたいとのことだった。
俺が城を出る前は、俺と瑞希と国王様と王女様の全員で一緒に食べていたのだ。
だが、みんな一緒に食べていた理由は俺がすぐに城から出ていくので、それまでに仲良くなっておこうというものだったので、俺がいなくなると一緒に食べなくなったらしい。

夕食を食べている間は、王女様と国王様に質問されたりした。その質問はエリスにも飛んでいったが、エリスは緊張しすぎて周りの音が聞こえていないのか反応がない。更には独り言をブツブツと呟きだした。
俺はそろそろやばいんじゃないか、と思い瑞希に声をかけた後、国王様に少し外の空気を吸わせてきますと言って部屋を出ていく。

部屋の外に出ても、エリスは独り言をブツブツと呟いているので、俺はエリスの肩を掴んで前後に揺らす。するとエリスがやっと元に戻って話し始める。

「あれ?ここどこ?」

エリスがキョトンとした顔で尋ねてくるので、俺は場所を伝える。

「ここは城の庭だ」

「私、夕食食べてなかった?」

「ああ、食べてたな」

「じゃあなんでこんな所にいるの?」

「エリスがやばそうだったから」

「え?」

エリスはまだ理解ができていなさそうだ。
俺は何があったのか、エリスに説明する。
するとエリスはそうだったんだ、と言った。
覚えていないのだろうか?俺はエリスが正常に戻ったので、夕食を食べに戻るかと伝えると、エリスは大きな声で拒否してきた。

「嫌だよ!」

理由を尋ねてみると、国王様と一緒に夕食なんか食べたら失礼だから、だそうだ。俺がどうやって連れていこうかと考えていると、瑞希がエリスに話しかける。

「エリスさん、無理して一緒に食べなくても大丈夫なので、気にしないでいいですよ」

「ミズキ、優しい!それに比べてリョウタは...今絶対どうやって連れていこうかな?って考えてたでしょ!鬼畜!」

俺は図星を突かれて黙り込む。だが俺は鬼畜ではないと思うのでそこは否定しておこうと思う。

「俺は鬼畜ではない」

「鬼畜だよ!」

エリスはまだ俺を鬼畜呼ばわりしている。
俺はまあいいか、と諦める。それよりもだ、エリスは夕食をどうするのかだ。

「なあエリス、夕食はどうするんだ?国王様達が食べ終わるまで待っとくのか?」

「んー、どこが違う場所で食べようかな」

「そっか、じゃあ俺は国王様のところ戻るから」

俺はそう言って来た道を戻る。俺の後ろではエリスが何かを叫んでいる気がするが気のせいだろう。

俺は国王様の元へ戻って夕食を食べる。しばらく食べていると瑞希が戻ってきて、エリスの夕食についての話をしている。
話が終わると瑞希はエリスと自分の夕食をどこかに持っていった。多分瑞希とエリスは一緒に夕食を食べるのだろう。

俺は国王様と王女様と3人だけになり、気まずくなったので、急いで夕食を食べる。
そしてごちそうさまと言って部屋を出る。

まずはエリスがどこにいるのか探そうと思う。城の中をてきとうに歩き、歩いている人に瑞希がどこにいるのか聞き、また歩く。それを繰り返していたが全く見つからなかった。俺はどうしようかな、と思い城の庭に行く。するとそこにはエリスと瑞希の姿が見えた。2人は庭にあるベンチに座り、何かを話しているようだが、全く聞こえない。
何故だろう、さっきからくしゃみがよく出る気がする。
俺は瑞希とエリスの方に近寄って、後ろからわっ、と声をかける。すると2人が

「「うわ!?」」

と叫びながら、ベンチからかなりの勢いで立ち上がり、かなり遠くまで後ずさった。
俺はそんなに驚くか?と思っていると瑞希とエリスが声を合わせて真剣な顔付きで俺に詰め寄ってくる。

「「話の内容聞いた?」」

俺は真面目に全く聞いてない、と返事を返す。すると2人は安堵の息を漏らしバタ、と膝をついた。
俺は、そんなに聞かれたくないことだったのか?と気になったので瑞希達に聞いてみた。
すると瑞希とエリスが声を揃えて言う。

「「涼太(リョウタ)にはね」」

俺だけハブかよ。悲しくなってくるな...。
俺が少し悲しんでいると、その事に気付いてか、瑞希が俺を励ましてくれる。

「別に涼太の悪口を言ってたわけじゃないよ、どっちかと言うと、その...、涼太のいい所を言ってたみたいな?」

瑞希が俺のいいところを言っていた、うん、俺テンション上がってきた。
俺は瑞希にその話について詳しく説明してもらおうとしたが、絶対に無理と拒否されたので諦めることにした。


俺はその後瑞希に2時間程エリスの庭での事を怒られた後、魔力感知スキルについて教えてもらったのだった───。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最強のリヴァイアサンになった筈なのに(仮)

ライ蔵
ファンタジー
いつもオラついているレベルカンストのリヴァイアサンが何故か人間の召喚獣の契約を受けてしまい人間達にある意味奴隷の様に働かせれる事になってしまう。 カンストリヴァイアサンに明るい未来は果たして訪れるのか?

異世界の無人島で暮らすことになりました

兎屋亀吉
ファンタジー
ブラック企業に勤める普通のサラリーマン奥元慎吾28歳独身はある日神を名乗る少女から異世界へ来ないかと誘われる。チートとまではいかないまでもいくつかのスキルもくれると言うし、家族もなく今の暮らしに未練もなかった慎吾は快諾した。かくして、貯金を全額おろし多少の物資を買い込んだ慎吾は異世界へと転移した。あれ、無人島とか聞いてないんだけど。

こうして少女は最強となった

松本鈴歌
ファンタジー
 何やかんやあって母親に家を追い出されたマリア。そんな彼女があてもなく歩いているところに声をかけたのは冒険者の男、ウーノだった。  マリアを放っておけなかったウーノは一晩の宿と食事を与える。  翌日、ウーノはマリアを連れてマリアの母親のもとを訪れるが、返ってきた言葉は拒絶。行き場を失くしたマリアは昨夜のうちに約束を取り付けていた魔術師、ローザに住み込みで約1年、魔術の基礎と礼儀作法を習うこととなる。  そして10歳を迎えた年、貴族だらけの王立魔術学園(通称学園)に(授業料、その他免除で)入学することとなる。 ※落ちしか決まっていない、半分行き当たりばったりの話です。所々矛盾が出ているかもしれませんが、気づき次第修正を入れます。 ※一話1000字程度と短いのでお気軽にお読み下さい。 ※小説家になろうの方でも掲載しています。そちらはこちらの数話を1話に纏めています。 ※しばらくは不定期更新にはなりますが、更新再開しました(2019.3.18)。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

そろそろ、私の世界の人を異世界転生させるのやめてもらえない?

安心院水主
ファンタジー
「もう我慢の限界!」 ついに、日本の神様が切れた! 勝手に自分の国の人を何人も異世界に連れて行かれ、因果律の修正に追われる毎日。優しい神様もついに堪忍袋の緒が切れた! 「なんで、世界作りに失敗した世界の尻拭いを私達がしなければならないのだ!もういい、だったら私がその世界を滅ぼしてやる!」

異世界召喚されたのは、『元』勇者です

ユモア
ファンタジー
突如異世界『ルーファス』に召喚された一ノ瀬凍夜ーは、5年と言う年月を経て異世界を救った。そして、平和まで後一歩かと思ったその時、信頼していた仲間たちに裏切られ、深手を負いながらも異世界から強制的に送還された。 それから3年後、凍夜はクラスメイトから虐めを受けていた。しかし、そんな時、再度異世界に召喚された世界は、凍夜が送還されてから10年が経過した異世界『ルーファス』だった。自分を裏切った世界、裏切った仲間たちがいる世界で凍夜はどのように生きて行くのか、それは誰にも分からない。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

処理中です...