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恋する自動販売機
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「あー、喉、乾いたー、あ、自販機、見っけ!」
私は女子高に電車で通っているのだが、たまには自転車で行ってみようと思い、軽やかに自宅を出て、田舎道を走っていると、やがて暑さでダウン寸前のところを自動販売機の出現で救われた。
「何を買おうかなぁ?」
自動販売機の前に立ち、小銭をチャラチャラ言わせていると、驚くべき事態が起きた。
「……自動販売機へようこそ!」
急に自動販売機が声を掛けて来たので面食らったが、客に色々と話し掛けてくる販売機もあった気がした。
いや、正確に言えば、飲み物を買った客にお礼を言う仕組みになっているのだろう。
しかし、この自動販売機はさらに続けた。
「君は女子高生だね?じゃあ、もっと近付いて、君を感じたい……」
何ていやらしい販売機なんだと思い、買うのをやめようか迷ったが、よく見ると、4桁の数字が揃うと当たりが出る仕組みになっていることに気付き、出来ればもう1本欲しかったので、我慢することに決めた。
そして、あることを思い付いた。
「ねぇ、自動販売機さん、私のことが好きなら、数字を揃えてぇ……」
お色気作戦なら絶対出すと踏んだのだが、自動販売機はうんともすんとも言わなかった。
私は、何よ!と言って、自動販売機に小銭を入れ始めた……まず10円……エエーッ!
どうしたことか、何と全ての飲み物のボタンが点滅した。
自動販売機が私のためにしてくれたと思い、選んだジュースのボタンを押した。
しかし、ジュースはキンキンに冷えているどころかぬるくも無く、完全にホットだった。
私はアツい!と叫んで、自動販売機に文句を言った。
「どうしてホットなのよ!冷たいジュースが飲みたいのに!」
すると、自動販売機は戸惑いながら、話し始めた。
「ごめんなさい。本当は冷たい飲み物をお出ししたかったのですが、私の体が熱くなってしまって……」
「暑いだって!自販機が暑がるなんて聞いたことないわ!」
自動販売機はしばらく黙っていたが、また声を出した。
「あなたが言っているのは、夏は暑いといった使われ方をするあついですね。私が言ったのは、火は熱いといった使われ方をするあついでして……」
「はぁ?意味が分からないんだけど……」
「私の心が熱くなってしまったんです!あなたに出会ってから……」
「何でもいいから、冷たいのを頂戴!あ!」
気が付くと、後ろには私の好きな先輩が立っていた。
「……あ、先輩、おはようございます!」
「おはよう。君も暑くて、飲み物を買いに寄ったのかい?」
「そうなんです。暑くて死にそうで……」
「よし、君の分もおごってあげるよ」
「いえ、私、飲んだばかりですし、大丈夫です」
「そうか、じゃあ、また今度な。エーッと……」
先輩は千円札を入れ、ジュースのボタンを押したが、一向に出て来ない。
私は察した……この販売機、私に惚れてるから私に言い寄る男に意地悪をするんだと。
私は先輩がお金を入れる所を見ているすきに、自動販売機の後ろに回って、小声で言った。
「あんたがわざとジュースを出さないのはお見通しなんだからね。早く出しなさいよ」
すると飲み物のボタンは全て点灯し、先輩はホッとし、ボタンを押した。
ジュースもきちんと出て来たので、自動販売機は心を入れ替えたかと思ったが、お釣りの落ちる音がやたらと長い……アッ、全部10円玉じゃないか!
このいまいましい自動販売機め!……だが、怒ると絶対に先輩は私を不審な目で見るだろう。
私は10円玉ばかりでアングリとしている先輩に分からないように、また後ろに回って、自動販売機をこき下ろすと、100円玉でお釣りが出始めた。
そして全て出終わると、先輩は飲み物を取り出した途端、叫んだ。
私は何事かと思ったが、先輩が買ったジュースは私のよりも熱かった。
そうか、きっと火傷をさせるつもりだったんだろう……私は我慢出来なくなり、自動販売機を蹴飛ばそうとすると、何と先輩が先に蹴りを入れた。
私は呆気に取られたが、先輩に蹴られた自動販売機は2缶、冷えたジュースを出した。
きっと詫びの印なんだろうと思っていたら、先輩は蹴飛ばした位置を軽く撫でて、心配そうな顔をすると、自動販売機はまた2缶、飲み物を出した。
先輩はコソコソと私に言った。
「アメとムチというやつだよ」
何だ、先輩もこのおかしな自動販売機のことを知っていたのだと分かった。
私も試しに撫でると、自動販売機は物凄く熱くなり、いきなり倒れた。
「うぎゃっ!」
先輩は押し潰され、私はショックで気絶した。
亡き先輩をペチャンコにした自動販売機は壊れてしまったので、果たして私に触られ、クラクラして倒れたのか、私への嫉妬心……ん、先輩は自動販売機のことをあらかじめ知っていたようだから、まさか先輩に対するジェラシーじゃないよね?……から先輩を襲ったのかは分からない。
ただ、その後、色んな自動販売機の前を通ると、反射的に先輩の姿が浮かぶので、販売機に向かって手を合わせてしまう私がいた。
(*Prologueに投稿したものを加筆など、多少修正し、再投稿したものです)
私は女子高に電車で通っているのだが、たまには自転車で行ってみようと思い、軽やかに自宅を出て、田舎道を走っていると、やがて暑さでダウン寸前のところを自動販売機の出現で救われた。
「何を買おうかなぁ?」
自動販売機の前に立ち、小銭をチャラチャラ言わせていると、驚くべき事態が起きた。
「……自動販売機へようこそ!」
急に自動販売機が声を掛けて来たので面食らったが、客に色々と話し掛けてくる販売機もあった気がした。
いや、正確に言えば、飲み物を買った客にお礼を言う仕組みになっているのだろう。
しかし、この自動販売機はさらに続けた。
「君は女子高生だね?じゃあ、もっと近付いて、君を感じたい……」
何ていやらしい販売機なんだと思い、買うのをやめようか迷ったが、よく見ると、4桁の数字が揃うと当たりが出る仕組みになっていることに気付き、出来ればもう1本欲しかったので、我慢することに決めた。
そして、あることを思い付いた。
「ねぇ、自動販売機さん、私のことが好きなら、数字を揃えてぇ……」
お色気作戦なら絶対出すと踏んだのだが、自動販売機はうんともすんとも言わなかった。
私は、何よ!と言って、自動販売機に小銭を入れ始めた……まず10円……エエーッ!
どうしたことか、何と全ての飲み物のボタンが点滅した。
自動販売機が私のためにしてくれたと思い、選んだジュースのボタンを押した。
しかし、ジュースはキンキンに冷えているどころかぬるくも無く、完全にホットだった。
私はアツい!と叫んで、自動販売機に文句を言った。
「どうしてホットなのよ!冷たいジュースが飲みたいのに!」
すると、自動販売機は戸惑いながら、話し始めた。
「ごめんなさい。本当は冷たい飲み物をお出ししたかったのですが、私の体が熱くなってしまって……」
「暑いだって!自販機が暑がるなんて聞いたことないわ!」
自動販売機はしばらく黙っていたが、また声を出した。
「あなたが言っているのは、夏は暑いといった使われ方をするあついですね。私が言ったのは、火は熱いといった使われ方をするあついでして……」
「はぁ?意味が分からないんだけど……」
「私の心が熱くなってしまったんです!あなたに出会ってから……」
「何でもいいから、冷たいのを頂戴!あ!」
気が付くと、後ろには私の好きな先輩が立っていた。
「……あ、先輩、おはようございます!」
「おはよう。君も暑くて、飲み物を買いに寄ったのかい?」
「そうなんです。暑くて死にそうで……」
「よし、君の分もおごってあげるよ」
「いえ、私、飲んだばかりですし、大丈夫です」
「そうか、じゃあ、また今度な。エーッと……」
先輩は千円札を入れ、ジュースのボタンを押したが、一向に出て来ない。
私は察した……この販売機、私に惚れてるから私に言い寄る男に意地悪をするんだと。
私は先輩がお金を入れる所を見ているすきに、自動販売機の後ろに回って、小声で言った。
「あんたがわざとジュースを出さないのはお見通しなんだからね。早く出しなさいよ」
すると飲み物のボタンは全て点灯し、先輩はホッとし、ボタンを押した。
ジュースもきちんと出て来たので、自動販売機は心を入れ替えたかと思ったが、お釣りの落ちる音がやたらと長い……アッ、全部10円玉じゃないか!
このいまいましい自動販売機め!……だが、怒ると絶対に先輩は私を不審な目で見るだろう。
私は10円玉ばかりでアングリとしている先輩に分からないように、また後ろに回って、自動販売機をこき下ろすと、100円玉でお釣りが出始めた。
そして全て出終わると、先輩は飲み物を取り出した途端、叫んだ。
私は何事かと思ったが、先輩が買ったジュースは私のよりも熱かった。
そうか、きっと火傷をさせるつもりだったんだろう……私は我慢出来なくなり、自動販売機を蹴飛ばそうとすると、何と先輩が先に蹴りを入れた。
私は呆気に取られたが、先輩に蹴られた自動販売機は2缶、冷えたジュースを出した。
きっと詫びの印なんだろうと思っていたら、先輩は蹴飛ばした位置を軽く撫でて、心配そうな顔をすると、自動販売機はまた2缶、飲み物を出した。
先輩はコソコソと私に言った。
「アメとムチというやつだよ」
何だ、先輩もこのおかしな自動販売機のことを知っていたのだと分かった。
私も試しに撫でると、自動販売機は物凄く熱くなり、いきなり倒れた。
「うぎゃっ!」
先輩は押し潰され、私はショックで気絶した。
亡き先輩をペチャンコにした自動販売機は壊れてしまったので、果たして私に触られ、クラクラして倒れたのか、私への嫉妬心……ん、先輩は自動販売機のことをあらかじめ知っていたようだから、まさか先輩に対するジェラシーじゃないよね?……から先輩を襲ったのかは分からない。
ただ、その後、色んな自動販売機の前を通ると、反射的に先輩の姿が浮かぶので、販売機に向かって手を合わせてしまう私がいた。
(*Prologueに投稿したものを加筆など、多少修正し、再投稿したものです)
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