田中角栄氏に倣おう!

キタさん

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時は金なり

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学園の門を入ると、早歩きの超子が居たので、声を掛けた。

「おはよう。あれ、髪を切ったのかい?でも、ショートも似合うよ。そうそう、生徒会のことで聞きたいんだけどね、この前さ、また夕子君と会ったらね…」

すると、超子は毅然として言った。

「先生、話が長いです!私、これでも忙しいんです!結論から言って下さい!」

私は唖然としたが、分かったと言って、今後の生徒会の方針を尋ねた。

超子は頷いて、答えた。

「第1に私が訴えた社会奉仕活動の実施、第2、活動に必要な費用の捻出、第3、先生に活動報告…まずは以上の3点です」

「3点か…まとめたものだね」

超子は再度頷いた。

「私、決めたんです。深い話を出来る時は別にして、忙しい時は3分の会話、要点は3つまで…効率いいでしょ」

そう言って、ニッコリ笑い、頭を下げ、軽やかに校舎に入って行った。

結論から言うのは多忙な生徒会長にとっては必要なことだ。

確かに3分あれば、簡潔に話せば済ませられそうだし、3点に絞れば、分かりやすいだろう。

ダラダラと長くやり取りするより、本当、いかに効率良いことか知れない。


そんな超子が男子高生に惚れられた。

相手は隣町の男子高の生徒で、超子は人気があるんだなぁと感心した。

何故、私が知ったかと言うと、超子が込み入った話なんだけど、時間ある?と、直に話を振って来たからだった。

「先生、私、イケメン君に告白されたんだけど、彼、話が長くてね。別に忙しくない時ならいいのよ。でも、急いでいる時でもお構い無しなの。まぁ、私も好きな人とはゆっくり話したいけど、最近、生徒会やら何やらで忙しいからさ。どうしたものかと思って…」

「超子も好きなのかい?」

「うーん、すぐ決断したいんだけど、こういう話はね、なかなか…先生は奥さんとはどうだったの?」

「だいぶ前の話になるけど、電話では今度いつ、どこで、何時に会うくらいしか話さなかったなぁ…イチャイチャするのは会った時で良かったと思ったから、電話では好きだよとかって言った覚えは無いなぁ…俺も忙しかった時だったしな…ま、恋も大事だけど、仕事はしなくちゃだからね。時は金なりの心境だったよ」

超子はフーン、なるほどと言って、頷いた。

「有難う、先生。とりあえず私、恋してみる!」

私は決断の早さに笑った。


3日後、超子が小走りでやって来て、私に声を掛けた。

「…先生、昨日、彼とキスしちゃった。忙しいので、以上!」

手を振って、すぐ行ってしまった。

それだけかよと思ったが、急いでいるなら仕方ない、簡潔でよろしいと思う私だった。


「どんな話でも、ポイントは結局ひとつだ。
そこを見抜ければ、物事は3分あれば片付く」や、「初めに結論を言え。理由は、3つに限定しろ」との田中氏の言葉を基にして、書かせて頂きました。
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