少しの優しさが胸に響く

ストーカー！？

私はまたもや恥ずかしい体験をした。

友人と初めて来店した中華料理屋で会食した時のことだ。

「…ねぇ、餃子、頼もうよ」

「…美味しそうね…春巻も食べる？」

「…いいわね。あと、チャーハンも…」

様々な物を注文すると、しばらくして中国人らしき店員さんが次々と運んで来た。

「…うわぁー、皮はサクサクしてて、中はモチモチ…最高！」

「…うん！しつこくないけど、ぎっしり味が詰まっている感じね！」

私たちは時に料理を褒め、時に笑い話をしているうちに瞬く間に平らげてしまった。

「…満腹ね！…またぜひ来たいね！」

「…うん、絶対に来ようね！」

そうこうしているうちに、お腹も良い具合にこなれてきたので、店を出ようとなり、会計を済ませると、ゆっくり外へ出て、歩いて行った。

だべりながら、しばらく歩いていると、後ろから誰かが尾いてくる気配を感じた。

すると、友人が小声で話し掛けてきた。

「…ねぇ、後ろを見ないで聞いて欲しいんだけど…私たち、尾行されてないかしら？」

私は小さく頷いた。

「…やっぱり！…私も知らない人がいる気がしてたんだけど、あなたも感じてたのね…誰かしらね？」

友人はさらに声を落として言った。

「…いずれにしても、こっちは2人だから、何とかなるわよ…いざという時は叫べばいいし、スマホで警察を呼べると思うし…その時は私がおとりになるから、あなた、掛けてね」

私は少し身震いし、答えた。

「…大丈夫かしら？…まぁ、2人なら何とか応戦できるわよね…あら、さっきより近付いてきてない？…怖いわね…」

友人は目で急ぐ合図をしたので、私も早歩きになった。

すると、後ろの誰かも足早になったようなので、私たちはなるべく人通りの多い道を選んだ。

そして、友人は言った。

「…しつこいわね、まだ尾いてくる…よし、もう、いいわ…」

すると、近くまでタクシーが走ってきていたので、手を上げ、停めた。

私たちは急いで乗り込もうとすると、後ろの人物、よく見ると、外国人、ん？、中国人のようで、男性だった。

私は怖くなって、警察を呼ぼうとしたが…スマホが無い！

男性は叫んだ。

「…お、お客さん、携帯電話、お忘れですよ…」

友人も私も呆気に取られてしまった。


蓋を開けてみれば何のことは無い、中華料理屋に置き忘れた私のスマホを店員さんが気付いて届けてくれたのだった。

友人はこんなこともあるよと言ってくれたが、私は恥ずかしくて堪らなかった。

店員さんに丁重にお礼を言い、私たちはタクシーで帰宅した…料金は私持ちで。

次からは忘れ物に気を付けようと肝に銘じたと同時に、わざわざ届けてくれたことに感謝しなければと思ったのだった。