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三人の精霊とカタリナ公国の書
アーサーと精霊
しおりを挟む凄まじい爆音と共に無数の魔法攻撃が城周辺の街に降り注ぐ。
アーサーがカタリナ国民に説明した策は二つある。一つ目は防御障壁による時間稼ぎである。
カタリナ城全体にエルザの大地の防御障壁が貼られているが金色の瞳を使用していない為、無敵ではないし継続時間も限られている。いつかは剥がれるのだーー。
二つ目は街の教会にも炎の防御障壁を貼っている。
アーサーは皆には言わなかったがカタリナ城に目を向けて教会へ女、子供を逃がす作戦である。教会には勿論、ソフィアもいた。
カタリナ城に戦える男性を残し、万が一バンディッツが間に合わず障壁が剥がれて攻めてこられた時に少しでも時間稼ぎが出来るようにという作戦だ。
今のアーサーに考えられる苦渋の策だった。
「アーサー様、大丈夫です?顔色が・・」
疲労が顔に滲み出ているアーサーにソフィアが気遣う。
「障壁を二つ同時に出して更に城の障壁に集中しているのでね・・・」
アーサーは苦笑いを浮かべる。
「城は明らかに障壁が分かるけど、教会は一見普通の教会にしか見えない筈だ。教会が倒壊した時と教会の地下室の扉に誰かが手を掛けた時に緊急発動する障壁をかけている」
リサの緊急障壁をソフィアに説明するアーサーの息は荒ただしかった。
「何としても守りきらなきゃ」アーサーは改めて狭い教会の地下室を見渡す。避難しているほとんどが女、子供だ。
アーサーのこの強い思いは三人の精霊にもリンクして伝わるーー。
『分かってますアーサー様、絶対このお城を守ってみせますなの!! 』
☆
「はあ、はあ、城の障壁が後、少ししか保たない・・・エルザの奴相当疲労しているな。ただの魔法攻撃じゃないのか?」
攻撃される度にまるで魔力を削られている感覚がエルザによって伝わってくる。 その度にエルザに精神力・気力・体力を吸いとられているようだった。
三人の精霊が魔法を発動させるには契約している人間の精神力・気力・体力を使用して発動させているのだ。
「ああーーしんどい。レーベンハートさんの頼みを放っておけば良かったのかな」
『放っておけない癖に。良く言うわね』
リサがリンクテレパシーで話しかけてきた。
『そうやって、お節介をやいて私達のことも契約してくれたし、ホーエンハイムやデーモンズゲートのことも助けたじゃない』
「そうだっけ? 覚えたないな」
『ふふふ』
素直じゃないアーサーに微笑むシルフィー。
「お前らが居たから俺も頑張れたんだ!もう少し踏ん張ってくれよ!」
『勿論なの』
『任せて! いつでも準備してるわよ』
『ふふふ。アーサーの為なら』
「マヂで、早く来てくれ。バンディッツ」
帝国軍攻撃開始から一時間経過したーー。
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