上 下
112 / 216
三人の精霊とカタリナ公国の書

反帝国軍潜伏メンバー

しおりを挟む

「ソ、ソフィア様ーー、ご報告が」

駆け込んできた兵士が敬礼しながらそう告げたのは、戦略会議をしている真っ最中だった。

一斉に視線を浴びた兵士は、自分が行った事の重大さに気付き、顔を青ざめた。

「無礼者! いきなり飛び込んで何事だ」

会議を中断され頭に血が上っている白髪交じりの男が威勢良く兵士を叱りつけるがソフィアはその男の前に手を出し制止する。「それより」と息継ぎをし、

「よほど急いで来たと見られる。何の報告だ?」

直感的にマズイ事態が起きたのでは?とソフィアの問いに肩を上下させ兵士は、

「て、て、敵襲です! カタリナ公国全土を帝国軍が包囲しています」

悪い予感は的中した。出来れば外れてほしかった予感だったが、

「予定より早過ぎる。ーーまだ何の策も練っていないのに」

「ど、どうするのじゃソフィア様」

帝国軍が攻めて来ることは予想していたし、分かっていた事だった。しかし、いざその場面に直面すると何も出来ない。

皆、一斉にソフィアにすがるように見つめている。

正直何も分からない。こんな時レオンが居てくれれば助けてくれるのにーー。

ソフィアは目を閉じレオンの顔を思い浮かべる。

「レオンだって援軍を呼びに頑張ってくれてる。 レオンが帰って来るまで私も頑張らなきゃ」

ソフィアは、自分にそう言い聞かせると、

「国中の人々をカタリナ城にーー、ここが国で一番安全な場所だからみんなで手分けして避難させるのよ」





ーー帝国軍が包囲し、国中の人々で溢れかえったカタリナ城内。

「俺は、反帝国軍バンディッツのアーサーと言います。君達の仲間レオンより援軍要請を受けて来ました。メンバーも時期に到着しますので安心して下さい」

その言葉に皆、少し安堵の表情を浮かべた。

「ああ、レオンが・・・おじ様」

ソフィアは隣にいた白髪の老人執事と手を取り合った。

「ーー但し、まだ少し時間がかかるので何としても援軍が来るまでは耐えなければならない。このままここで籠城してたら全員即死だ。ここが一番安全そうだが一番危ない


アーサーの言葉に全員が耳を傾ける。

「俺一人では何の役にもたたないけど、俺には小さいけど凄く頼りになる仲間がいる」

そう言うと、アーサーの体が光輝き中から三体の精霊が飛び出して来たーー。

戦争や争いと無縁のカタリナ国民でも知っている。ーー三人の精霊を宿した人間が存在しデーモンズゲートを封印した噂を。

「まさかあなたが噂のーー」

その存在の大きさに皆、希望を抱いた。

「とにかく、時間がない。いくつか策があるがその場しのぎにしかならない。バンディッツが来るまで何とかみんなで耐え切ろう」

アーサーの言葉に皆、精気が戻った。
みんなが自分を頼ってくれているのは表情を見れば分かった。

しかし、あの時と今では状況も立場も違う。
頼れる円卓の魔導士なかまもいない、何より金色の瞳エンペラーアイが使えない。

期待の眼差しが心に突き刺さる中、アーサーはソフィアを呼んで耳打ちした。

何事かをアーサーが耳打ちした瞬間ソフィアの顔は明らかに強張った。
そしてーー青ざめた表情になった。

『 バンディッツは間に合わないーー 』

そして更に続ける、

『 俺が何としてもお前だけは逃がしてやる。これはレオンからのお願いだ 』

ソフィアの心は複雑だったーー。

自分だけ助かるのか?
国民の皆の命を犠牲に?
本当にそれでいいのか?

ソフィアは迷っていたーー。


ーー 帝国軍の攻撃が今、始まった ーー
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です

岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」  私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。  しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。  しかも私を年増呼ばわり。  はあ?  あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!  などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。  その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

処理中です...