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三人の精霊とカタリナ公国の書
レオンとソフィア①
しおりを挟む部屋の中はしんとしていた。アイツらもやはり疲れていたのか、いつの間にか三人仲良くテーブルの上で三人固まるように寝ていた。
食べ終えた食器などがまだ残されたままのテーブル、アーサーの向かい側に腰掛けていた白髪の老人執事は、ゆっくりと喋り出した。
これは、白髪の老人執事が見てきたカタリナ公国のソフィア姫と少年レオンのお話。
* * * * * * * * * * * * *
キラキラと輝く水面は、まるで宝石を散りばめたように綺麗で眩しいくらいだ。
湖のほとりに二つの影が仲睦まじく遊んでいるのが目に留まる。
「ソフィア様、そんなに走られては転んで怪我をしてしまいますよ」
金髪の少年は、足場の悪い波打ち際を慌てて駆けていくーー
「ウフフ、 大丈夫よレオン。 あなたはいつも心配性ね」
湖のほとりを裸足で走り回って、振り向きながら笑顔で喋っている。その笑顔はとても愛らしい。
その笑顔を見せられ下を向き頬を赤く染めるレオンーー百七十センチくらいで髪は金髪で肩までは届かないがやや長めの髪で真っ黒なタキシードに真っ白なシャツといった執事の格好をしていて実に爽やかに見える。
レオンの前で笑顔を見せているのは、この国の姫ーーソフィア。透き通るような白い肌に背中まで届く金髪の長い髪、小顔にあった小さな口元。身長は百五十センチくらいの小さな少女である。
「ソフィア様、もしものことがあれば国王様に叱られてしまいます。もう少し姫様らしくお淑やかにお願い致します」
ソフィアから視線を逸らしながら言う。
「ーー姫様らしくねえ。そうは言われても私、よく分からないし・・・それ!」
ソフィアはしゃがみ込んで湖の水をレオンに向かってかけた。
「ひゃあーー!!」
見事に顔に命中!何とも情け無い声だ。
「そ、そふぃあさま何をーー」
ソフィアはケタケタと満遍の笑みを浮かべていつまでも、いつまでも笑っていたーー
そんなソフィアの笑顔を見てレオンも心癒されていた。
湖の湖面は二人を照らすようにキラキラと輝いていたーー
☆
ーー楽しい時間は永くは続かなかった。
湖ではしゃいでいる二人に慌てて駆けよる一つの影があったーー
「ーーレオン!今すぐ姫様を連れて城に帰るのだ。国王様が倒られたのだ。」
レオンと同じタキシード姿の白髪の老人が血相を変えて叫んだーー
「お父様がーー」
あまりの突然の事でソフィアはどうして良いか分からず大きな目をパチくりさせていた。
「国王様がーー直ぐにソフィア様を連れて戻ります」
そういうと動揺するソフィアに近寄り、
「大丈夫ですよ、参りましょう。ソフィア様」
レオンは「心配ない大丈夫」と優しく微笑んだ。
「レオン・・・」
ソフィアはレオンの無理矢理の笑顔が嬉しかった。いつだって自分のことを悲しませないように気づかってくれる。いつだって、どんな時でも一番側にいて元気づけてくれる。
レオンが「大丈夫」って言ってくれてる。何度も自分に言い聞かせ目の前を行くレオンの背中を見つめながら湖のほとりを後にし国王の待つカタリナ城へと向かうレオンとソフィアだった・・・。
白髪の老人執事はカタリナ城に向かう二人の背中を胸を痛めながら見つめていた。
レオンとソフィア、二人は腹違いの兄妹である。ーーしかし、二人はその事実をしらない。
レオンは国王によりその存在を隠された。
それは王妃に知られないようにするためだったーー。
いわゆる浮気である。ーー 相手は使用人の女性だった。
国王は大金を支払い真実を消したーー。
そして、レオンは棄てられた。
ある朝、国王が送った大金を持ち使用人の女性は姿を消したのだーー。
それからレオンは王宮の使用人として育てられた。白髪の老人紳士がレオンの育ての親でレオンが父と呼ぶ存在だ。
ソフィアとは幼い頃から共に育ち、ずっと一緒に過ごしてきた。
レオンもソフィアを妹のように思い、ソフィアもレオンを兄のように思っていた。側から見れば本当の兄妹に見える程だ。
しかし、白髪の老人執事は、立場をわきまえてソフィアとは距離を置くようにレオンは幼い頃から教育されてきた。
それはあくまでも使用人・執事としての立場。そして、本当の兄妹と悟られぬ為だ。
レオンとソフィアいう兄妹。近くにいるのに決して交わることのない運命の道ーー。
白髪の老人執事は、今も心痛めながら事実を伝えられずにいる。
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