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三人の精霊と帝国事変の書

PM19:00・合流

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「バッツ大丈夫?」

「いや、完全に骨イッてる」

ミモザに肩を借りながらよたよた歩くバッツ。

その姿をバンディッツのメンバーは哀れな目で見ていた。

クローリーとのやりとり後反帝国バンディッツは帰路の道をゆっくりと歩いていた。

「あんな化け物にアホみたいに突っ込んでいくからだぜ」

「同感です」

ウィーリーは首を横に振って呆れている。
となりでフルールも頷く。

「はは・・・レーベンハートさんの事言われたら頭にきてよ。
無理だと分かってても一発ぶん殴らなきゃ気がすまなかった」

その言葉に皆目を細めた。
頭にきていたのは皆同じだったからだ。

「そう言えば、レーベンハートさんから連絡こないな?」

アスベルは水晶を取り出し見つめていた。

「何かあったのかしら?」

アスベルの水晶をリリーが覗き込むが、
アスベルとリリーの顔のみが反射し写っているのみだ。

「そのままレーベンハートにこちらから連絡を入れてみよう。
これからの事もあるからな」

「ああ、分かった」

アスベルは水晶に魔力を込める。

ーーしかし、

「レーベンハートさん通じない」

水晶玉は何の変化もないままだ。

「おかしいな。
いつも必ず連絡はつくはずなのに」

「あのクローリーって奴はレーベンハートさんに会ったと言っていた。
もしかしたら、クローリーって奴とレーベンハートさんの間に何かあったのかもしれない」

「その可能性は十分あるわね」

「レムリアに行ってみよう」

アルカナ・ナイツが輪を作っていると、

「ん?何か凄いスピードで近付いてくる」

いち早く空間座標能力に長けているミモザが怪しい者を感知する。

「みんな森に姿を隠してーー!!」

バッツが反帝国バンディッツに指示を出し森に隠れてやり過ごす作戦だ。

ガラガラと音を立て荷車を引き、風を切るようなスピードで樹林帯の中を駆け抜ける獣。

ケイトは視線や気配を見逃さなかった。 

「よーーし、ストップだ」

獣車を停止させ、辺りを見回す。

しーーんと静まり返る樹林帯の中。

ケイトは苦笑いを浮かべ、

「お前らなあ、それでもプロなの?
 これだけ一斉に大勢の視線を浴びたら俺じゃなくても気付くぞ。
 居るんだろう?出てこいよ」

しーーーん。
反応無し。


「ーーったく。
 俺だよケイトだよ。バッツ出てこい!」

ガサガサと葉が擦れる音が聞こえ中から、
ミモザに抱えられてバッツが姿を現した。

「け、ケイトさん。どーして?」

「ん?お前何やったの」





「なるほどね。
 クローリーに喧嘩売られて買ったけど、逆にヤられたのね」

「・・・その通りッスね」

笑うしかないバッツ。
アルカナ・ナイツのメンバーも下を向くしかなかった。

「ーーところでケイトさんは僕らに何かご用意ですか?」

アスベルが話を切り替える。

「緊急事態だ。お前らはこの作戦に参加予定だから分かると思うが、作戦コードグングニルが実行される。
その前に帝国の国民を避難と奇襲攻撃で少しでも新聖教の戦力を削りたい。
その協力要請に来た」

「帝国の国民を避難させる事は賛成です。
 しかしーー」

バッツは難しい顔をしていた。
帝国を倒すことが目的の組織だ。
例え新聖教でも目的はあくまで一緒なのだ。

「そうか、お前らは反帝国軍だよな。
 俺は名前だけは所属だからな。
それにかつては、帝国騎士団に所属していたからな。
お前らの気持ちは考えていなかった。
軽はずみな発言申し訳なかった」

「そんな事・・・」

「帝国の国民を避難する作戦には参加してほしい。頼む」

「はい」

バッツの指示でアルカナ・ナイツのメンバーと反帝国軍のメンバー数人が荷車に乗り込んだ。

「バンディッツのアジトに帰りこの事をレオンさんに報告してくれ。
 あと、レーベンハートさんに連絡がつかない件も頼む」

「はい!お気を付けて」

バッツはバンディッツのメンバーに伝言を告げると、獣車は大きな音を立てて樹林帯の中を駆け抜けて行ったーー。


☆ ☆ ☆


「ダニエル、お前何をコソコソと市民街でやっている」

ヴィルは最近、ダニエルが市民街に出没しては国民に何やら演説しているとの情報を得ていた。

ヴィルに詰め寄られるが、ダニエルは迷っていた。
それはヴィルには黒い噂がいくつもあり、仮にヴィルに本当の事を言って、奇襲作戦がすぐに実行されるような事があれば、せっかくケイトが考えてくれた国民の避難の計画が全て失敗になってしまうからだ。

「俺が市民街に行ってはダメなのか?」

「行くなとは言ってない。
 何をやっているのだと聞いている」

「なぜお前にいちいちプライベートの情報を報告しなければならない」

「ダニエルお前何を企んでいる?」

「ああ、企んでるね。
 最近目を付けた女を口説き落とす作戦をね」

そう言い残すと、ヴィルに肩をぶつけてそのまま去って行った。

ダニエルの国民への避難の訴えはあまり聞き入れてもらえなかった。

国民の信頼を得ているのは実は、ヴィルの方が大きいのだ。
勇騎士であり帝国の象徴的な存在だからだ。

この時ばかりはダニエルはヴィルに嫉妬した。

どんなに国民に避難を訴えても、

「ヴィル様は何とおっしゃっておられますか?」
「勇騎士様の指示でございますか?」

と、ヴィルの名前を出されてしまうのだ。

ダニエルは焦っていた。
刻一刻とケイトと約束した時間が迫っていたからだ。

再び、市民街に向け走り出すダニエル。

その背中を帝国城の二階窓から覗いていたヴィルだったーー。


ーー  PM19:00 ーー
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