185 / 216
三人の精霊と帝国事変の書
桃色の過去①
しおりを挟む
魔女は基本的に紫の髪に青い瞳。
それ以外は不吉とされてきた。
桃色の髪をした子供が産まれた。
小さな村での出来事だった為、村長は悪魔に取り憑かれた子供が産まれたと恐れた。
母親は必死に我が子を守った。
魔力が定着する十歳まで様子を見ると約束してくれた。その際に不吉な出来事や予期せぬことがあればこの娘を容赦無く殺すと約束された。
キルケーと名付けられた桃色の髪の娘は、村人たちの予想をはるかに超えた。
まさに天才だった。
僅か十歳にしてとんでもない魔力をもっていた。
それだけではなく、ほぼ全ての属性の魔法を操ることが出来たのだ。
そして何より穏やかな性格。
村人たちからも愛されていた。
ーーこの小さな村にもあの悲劇が訪れる。
魔女狩り。
☆
「長老様、お願いします。キルケーを、娘を助けて下さい。お願いします」
村長の足元にしがみつく母親。
村長は横に振りながら、すまないっと言った表情を浮かべる事しか出来なかった。
それでも母親は涙を流しながら必死に「お願いします」と、叫び続けた。
見兼ねた村人何人かに抱えられ、何とか村長から母親を引き離した。
ほとんどが年寄りと低級魔女しかいない村。
薔薇十字団に立ち向かえる魔女はこの村にはキルケーと他数人の魔女のみだった。
その中でも、キルケーは圧倒的な魔力と強さを誇っていた。
「もうこの村はキルケーに託す他ないのじゃ」
「そんな、あの子はまだ十歳の子供なんですよ・・・」
必死に薔薇十字団と戦う我が子を見守る母親。何もしてやれない虚しさで心が痛む。
次々に脱落して行く村の魔女たち。
遂に、キルケーただ一人が村を背負って戦う事になる。
「キルケーが戦ってくれているうちに、逃げるのじゃ。あの子の頑張りを無駄にするな」
その言葉に皆、申し訳無さそうにその場を離れて行く。
「嫌よ、私はあの子を置いて逃げる事なんて出来ないわ」
村人数人に無理矢理連れて行かれようとするが、抵抗する母親。
戦いの最中、キルケーが一瞬の隙を突いて母親の元に駆け寄る。
「キルケー・・・もう充分よ。お母さんとーー」
「ごめんなさい、邪魔なのよ。さっさと逃げて!!」
「キルケー・・・」
まさかの我が子の冷たい一言で呆然となる母親。引きづられるように村人に連れて行かれた。
「お母さんごめんなさい」
キルケーは心の中で何度も何度も謝った。
母親の気持ちは痛いほど分かっている。
しかし、キルケーも母親には生きていてもらいたい。
きっと、ああ言わなければ母親は逃げてくれないと分かっていたからだ。
僅か、十歳の娘が全てを理解し一人戦っているのだ。
☆
「何を手こずっている?たかが村一つ落とせないのか!!」
薔薇十字軍の隊長格の男が声を上げる。
「それがとんでもない魔力をもっている少女がいまして・・・」
「餓鬼に手こずっているのか。お前らは薔薇十字の恥だな」
「どの娘だ?」
ずっとだんまりを決めていた黒ローブを身に纏い。金の十字のネックレスをしている人物が口を開いた。
「あの、ピンクの髪の少女です」
「ピンク?」
黒ローブの人物は被っていたフードから目を凝らした。
「・・・突然変異か?それとも」
一人でブツブツと難しい事を呟いている。周りにいる薔薇十字軍の人間には何を言っているのか理解出来なかった。
「お前らには少し武が悪い相手かもな。
見る限り全ての属性魔法を操っているように見える」
「全属性の魔法を、、あの歳で!?」
「ククク、面白い。
私が特別に相手をしてやる!」
「クローリー様自ら・・・」
現、円卓の魔道士にしてアヴァロン王国最重要危険人物である。
アレスター・クローリー、彼女の黒い噂は尽きることが無い。
なぜ、シーサーは彼女の円卓の魔道士に任命したのか謎である。
立ち上がったクローリーはやけに背が小さい。
身長は130センチ位だろう。
そして、徐ろにとったそのフードの下の顔はあどけなさが残る幼女の顔をしていた。
真っ赤な瞳に、銀髪に近い薄紫色をした髪の毛を肩くらいでカットしている。前髪は真一文字に切り揃えられている。
幼き日の全属性魔導士キルケー対黒魔導士アレスター・クローリーの対決開始。
それ以外は不吉とされてきた。
桃色の髪をした子供が産まれた。
小さな村での出来事だった為、村長は悪魔に取り憑かれた子供が産まれたと恐れた。
母親は必死に我が子を守った。
魔力が定着する十歳まで様子を見ると約束してくれた。その際に不吉な出来事や予期せぬことがあればこの娘を容赦無く殺すと約束された。
キルケーと名付けられた桃色の髪の娘は、村人たちの予想をはるかに超えた。
まさに天才だった。
僅か十歳にしてとんでもない魔力をもっていた。
それだけではなく、ほぼ全ての属性の魔法を操ることが出来たのだ。
そして何より穏やかな性格。
村人たちからも愛されていた。
ーーこの小さな村にもあの悲劇が訪れる。
魔女狩り。
☆
「長老様、お願いします。キルケーを、娘を助けて下さい。お願いします」
村長の足元にしがみつく母親。
村長は横に振りながら、すまないっと言った表情を浮かべる事しか出来なかった。
それでも母親は涙を流しながら必死に「お願いします」と、叫び続けた。
見兼ねた村人何人かに抱えられ、何とか村長から母親を引き離した。
ほとんどが年寄りと低級魔女しかいない村。
薔薇十字団に立ち向かえる魔女はこの村にはキルケーと他数人の魔女のみだった。
その中でも、キルケーは圧倒的な魔力と強さを誇っていた。
「もうこの村はキルケーに託す他ないのじゃ」
「そんな、あの子はまだ十歳の子供なんですよ・・・」
必死に薔薇十字団と戦う我が子を見守る母親。何もしてやれない虚しさで心が痛む。
次々に脱落して行く村の魔女たち。
遂に、キルケーただ一人が村を背負って戦う事になる。
「キルケーが戦ってくれているうちに、逃げるのじゃ。あの子の頑張りを無駄にするな」
その言葉に皆、申し訳無さそうにその場を離れて行く。
「嫌よ、私はあの子を置いて逃げる事なんて出来ないわ」
村人数人に無理矢理連れて行かれようとするが、抵抗する母親。
戦いの最中、キルケーが一瞬の隙を突いて母親の元に駆け寄る。
「キルケー・・・もう充分よ。お母さんとーー」
「ごめんなさい、邪魔なのよ。さっさと逃げて!!」
「キルケー・・・」
まさかの我が子の冷たい一言で呆然となる母親。引きづられるように村人に連れて行かれた。
「お母さんごめんなさい」
キルケーは心の中で何度も何度も謝った。
母親の気持ちは痛いほど分かっている。
しかし、キルケーも母親には生きていてもらいたい。
きっと、ああ言わなければ母親は逃げてくれないと分かっていたからだ。
僅か、十歳の娘が全てを理解し一人戦っているのだ。
☆
「何を手こずっている?たかが村一つ落とせないのか!!」
薔薇十字軍の隊長格の男が声を上げる。
「それがとんでもない魔力をもっている少女がいまして・・・」
「餓鬼に手こずっているのか。お前らは薔薇十字の恥だな」
「どの娘だ?」
ずっとだんまりを決めていた黒ローブを身に纏い。金の十字のネックレスをしている人物が口を開いた。
「あの、ピンクの髪の少女です」
「ピンク?」
黒ローブの人物は被っていたフードから目を凝らした。
「・・・突然変異か?それとも」
一人でブツブツと難しい事を呟いている。周りにいる薔薇十字軍の人間には何を言っているのか理解出来なかった。
「お前らには少し武が悪い相手かもな。
見る限り全ての属性魔法を操っているように見える」
「全属性の魔法を、、あの歳で!?」
「ククク、面白い。
私が特別に相手をしてやる!」
「クローリー様自ら・・・」
現、円卓の魔道士にしてアヴァロン王国最重要危険人物である。
アレスター・クローリー、彼女の黒い噂は尽きることが無い。
なぜ、シーサーは彼女の円卓の魔道士に任命したのか謎である。
立ち上がったクローリーはやけに背が小さい。
身長は130センチ位だろう。
そして、徐ろにとったそのフードの下の顔はあどけなさが残る幼女の顔をしていた。
真っ赤な瞳に、銀髪に近い薄紫色をした髪の毛を肩くらいでカットしている。前髪は真一文字に切り揃えられている。
幼き日の全属性魔導士キルケー対黒魔導士アレスター・クローリーの対決開始。
0
お気に入りに追加
633
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる