上 下
184 / 216
三人の精霊と帝国事変の書

マーリンの誤算

しおりを挟む
マーリンは何度も世界の崩壊を見てきた。
その行く手には必ず、新聖教団という壁がそびえ立っていた。

何度、時の砂の魔法で時間を戻し人生をやり直しても必ず、世界の崩壊は防げないでいた。

この崩壊を防ぐには何が絶対的に足りないと感じたのだ。

「自分たちの手では防げないなら誰かに未来を託せば良いのでは」

マーリンは今まではシーサーと出会った時をスタート地点でのリスタートを繰り返して来た。シーサーこそがこの世界を救う鍵と考え、生き残れば良いと考えていた。

ーー結果はいつも世界の最期を見せられた。

そこでマーリンが思いついたのは、ペンドラゴン家にソロモン王の力を色濃く後世に伝える事と、その末裔の情報を新聖教団に知られる事なく育てること。
表向きはシーサーが鍵と見せかけて、その末裔が本命の鍵とする考えだ。

更に、マーリンは世界の崩壊を誘発させる人物たちを自ら監視する事で、未然に防ぐことを考えた。

それが「円卓の魔導士」だ。

まず、マーリンが声をかけたのがシーサーと親交のあったメイザースだ。

彼は秘密結社アルファを設立したばかりだったが、この時点で既にデーモンズゲートへの扉に触れていた。

次に、メーディア。彼女の場合はメイザースの監視役だ。シーサーと契約を結んで思考リンクさせて常にメイザースの動きを見ている。これでデーモンズゲートに近付けなくさせている。

クリスチャン・ローゼンクロイツ。
薔薇十字軍の真の支配者であり、福音の会の設立者。彼は悪魔でさえ自分の支配下に従えた。ルシファーを操り、グリモワールを使いこなし世界の崩壊を誘発させた。

その為、目の届く範囲内で行動させ少しでも動きを制限させていた。


アレイスター・クローリー。
ゾロアスター教の指導者であり、黒魔術や禁呪等の禁止魔法や魔法省の法令違反を繰り返してきた前科持ち。
見た目は少女だが、噂によると禁止魔法等や悪魔に身体を憑依され歳をとらなくなったと言われている。
クローリーはメイザースとローゼンクロイツと手を組み共謀し世界を破滅に向かわせていた。

そこで世界で初めての「特定人物観察指定」処置されたのだ。
この制度は24時間365日この人物を監視する制度だ。
まさに、クローリーの為だけに作られた制度なのだ。

マーリンの見てきた未来には必ずと言っていいほどこの三人が絡んでいた。

この三人の接触が無ければ世界の崩壊は訪れないと考えていたのだ。


今回のマーリンの考えは完璧だった。


ーーしかし、想定外の出来事が起こる。

『魔女狩り』『ホーエンハイム襲撃事件』

そして、最後の大誤算はマーリンが鍵となる筈だった人物によって自らの命を消されてしまった事だ。


私は何度も何度も見てきた。
同じ体験を何度もしてきた。
だけど、今回だけは違う最期を迎えた。

もう、戻らなくて良いよね。

あの子たちならきっと歴史を変えてくれる。

何百年かけてやっと訪れた最初で最後の奇跡を私に見せてほしい。


ーー 私は最期の時まで見ているわ ーー
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です

岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」  私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。  しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。  しかも私を年増呼ばわり。  はあ?  あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!  などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。  その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

処理中です...