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柊 楓

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「あなたもいずれこの病院を継ぐのよ。お祖父様もお父さんも名門国立医大を卒業してるのよ。楓さんも頑張って良い大学に入るのよ」

小さい頃から、嫌、産まれた頃から期待されてた。

医者の家系に生まれてお祖父さんが設立した大学病院の一人息子だった。

それはそれは毎日のように勉強の日々だった。

母親は、まだ小学校低学年の僕に塾を週に四回更に家庭教師を雇った。

日曜日以外は毎日勉強だったーー。

学校でも勉強、家でも勉強。
子供ながら辛いと思い始めていた。

ある日初めて塾をサボった。
友達の家に遊びに行ったのだ。

初めてテレビゲームをした。
漫画を読んだ。
アニメを見た。
全てが新鮮ですごく楽しかった。

思わず漫画を借りてきてしまった。

それが過ちだった。

家には既に、塾から連絡が入っていた。

母親は、大激怒していた。
俺は、正直に友達の家に遊びに行ったと話した。

母親は、その友達が俺をそそのかしたと言い電話をかけて抗議すると言い出した。

俺は決してその友達の名を出さなかった。

部屋に戻り借りた漫画をこっそりと読んでいた。

風呂の時間になり入り終わり自分の部屋に戻ると母親がまた怒りで震えていた。

母親の足元には友達に借りた漫画が破られて落ちていた。

「何でこんな酷いことするんだ」と泣きながら母親に飛びかかると思いっきり頬を平手打ちされた。

「酷いことをしてるのはどっちなのよ」

それ以降、俺は母親の言うとおりに勉強の毎日を過ごした。


名門中学校の入学試験を何とか合格した。

しかしーー、

成績は上がらなく学年で下から数える方が早かった。
正直授業にすらついていけなくなっていた。

次第に学校をサボるようになったーー。

それが何日か続いて母親の耳に入ると、
「あなたはお父さんやお祖父様の病院を柊総合病院を継がなくていいの」
遂に、俺の中で何かがキレるのが分かった。


荒れた。


家庭内暴力。
非行に走った。

学校では問題児とされ名門中学校の名が汚されるのでと自主転校を言い渡された。

別の県立の中学校に転校してからは更に荒れた。

悪い友達と付き合うようになり、親から金を脅しとる毎日、酷い時は月に十万円もむしり取った。

ある時、耳にした。

「柊は、つまんねえ奴だけど金だけはあるから仲良くしてやろう」

学校に行くのを辞めた。
部屋に引きこもった。
何もかも嫌になった。
最後は母親に当たった。




「俺の小学校時代を返してよ」


母親とはそれ以降口を聞いていない。


俺は、適当に仕事を捜しては店で問題を起こしては辞め、また仕事に就いては辞めを繰り返した。

そして、自宅警備員の仕事に辿り着いた。
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