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久々の我が家はひんやりとしていて、家を空けていた期間の長さを感じた。
長居するつもりもないので、カーテンは閉めたまま電気のスイッチに触れた。
バッグの中身を出して洗濯機をまわしたて、寝室に向かう。
洋服や自分のパジャマなどを詰め込んでいく。これ以上の延長はないと言われているので、1週間分があればいい。
あっという間にパンパンになったバッグはそこに置いて部屋を出る。
リビングの小物などを入れている棚の前に立ち、1段目をあさっていると目の前の壁に貼ってある『やりたい事リスト』が目に入る。
ごちゃごちゃとして見にくいそれには、ところどころ赤ペンで線がひかれ、達成したことを示す。
しかしその赤線がまだちらほらとしかないことに、無意識に笑みがこぼれる。まだまだ2人でしなければいけないことがあるならば、きっと理央は死なない気がして。明確な根拠はないけれど彼は生き延びるという確信が出てきてやまなかった。
引き出しから取り出した、カードケースと印鑑もバッグにしまって玄関に置く。
あと10分と表示された洗濯機の前で、スマホをいじって時間をつぶした。
地面に叩きつけられた雨粒が跳ね返ってズボンのすそを濡らす。
大通りまで出てみたものの、雨のせいで見通しが悪くタクシーが捕まらない。
潔く諦めて、電話でタクシーを呼ぶことにした。
タクシーから見つけやすいようにエントランスに引っ込むことも出来ず、ズボンは濡れるし、バッグを抱えているせいで肩も背中も濡れる。早くやってきてくれることを願うばかりだ。
ザーザーと激しい雨音に混じって、タイヤが水を跳ねる音がする。
目を凝らせばこちらにやってくる、タクシー特有の電灯が見える。
だんだん近づいてきたそれは目の前でぴたりと止まった。
助手席の窓が開いて運転手の女性が何か言っているが、雨音にかき消されて全く聞こえない。何となく言われていることの予測をつけて、自分が呼んだということを示すために携帯をひらひら振ってみせた。
どうやら通じたようで、後部座席のドアが開く。
バッグを先に放り込み、傘を閉じながらさっと乗り込む。
「いや~、すみませんね!遅くなっちゃって」
「いえいえ、こんな天気にすみません。
総合病院までお願いしていいですか?」
少し洋子さんに似た運転手さんの声に安心感がある。
洋子さんと隼人にも連絡をしなければ、と頭の片隅にメモっておく。
「了解しました。
それにしても、雨ひどいですねえ」
「ほんとですね。なかなか見ないぐらいの強さですね」
タクシーはUターンして、大通りに合流していく。
こんな天気でも車は驚くほど多い。
せわしなく動くワイパー。
少し目線を下げて、カーナビに表示される時刻は、11:38。
理央はもう起きただろうか。
戻ったら拗ねているかもしれないな。
ああいや、もしかしたら
怒られる、か…も、
ドッ……
その時、おれの身体が突然激しくゆらされた。
長居するつもりもないので、カーテンは閉めたまま電気のスイッチに触れた。
バッグの中身を出して洗濯機をまわしたて、寝室に向かう。
洋服や自分のパジャマなどを詰め込んでいく。これ以上の延長はないと言われているので、1週間分があればいい。
あっという間にパンパンになったバッグはそこに置いて部屋を出る。
リビングの小物などを入れている棚の前に立ち、1段目をあさっていると目の前の壁に貼ってある『やりたい事リスト』が目に入る。
ごちゃごちゃとして見にくいそれには、ところどころ赤ペンで線がひかれ、達成したことを示す。
しかしその赤線がまだちらほらとしかないことに、無意識に笑みがこぼれる。まだまだ2人でしなければいけないことがあるならば、きっと理央は死なない気がして。明確な根拠はないけれど彼は生き延びるという確信が出てきてやまなかった。
引き出しから取り出した、カードケースと印鑑もバッグにしまって玄関に置く。
あと10分と表示された洗濯機の前で、スマホをいじって時間をつぶした。
地面に叩きつけられた雨粒が跳ね返ってズボンのすそを濡らす。
大通りまで出てみたものの、雨のせいで見通しが悪くタクシーが捕まらない。
潔く諦めて、電話でタクシーを呼ぶことにした。
タクシーから見つけやすいようにエントランスに引っ込むことも出来ず、ズボンは濡れるし、バッグを抱えているせいで肩も背中も濡れる。早くやってきてくれることを願うばかりだ。
ザーザーと激しい雨音に混じって、タイヤが水を跳ねる音がする。
目を凝らせばこちらにやってくる、タクシー特有の電灯が見える。
だんだん近づいてきたそれは目の前でぴたりと止まった。
助手席の窓が開いて運転手の女性が何か言っているが、雨音にかき消されて全く聞こえない。何となく言われていることの予測をつけて、自分が呼んだということを示すために携帯をひらひら振ってみせた。
どうやら通じたようで、後部座席のドアが開く。
バッグを先に放り込み、傘を閉じながらさっと乗り込む。
「いや~、すみませんね!遅くなっちゃって」
「いえいえ、こんな天気にすみません。
総合病院までお願いしていいですか?」
少し洋子さんに似た運転手さんの声に安心感がある。
洋子さんと隼人にも連絡をしなければ、と頭の片隅にメモっておく。
「了解しました。
それにしても、雨ひどいですねえ」
「ほんとですね。なかなか見ないぐらいの強さですね」
タクシーはUターンして、大通りに合流していく。
こんな天気でも車は驚くほど多い。
せわしなく動くワイパー。
少し目線を下げて、カーナビに表示される時刻は、11:38。
理央はもう起きただろうか。
戻ったら拗ねているかもしれないな。
ああいや、もしかしたら
怒られる、か…も、
ドッ……
その時、おれの身体が突然激しくゆらされた。
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