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数日後。
「おはよーございまーす」
よく通る声が狭い事務所内にあいさつを響かせる。
作業していたパソコンをスリープにして席を立つ。
「おはよ、はやと」
「雪くん!おはよ」
ひらっとした淡い春色で襟だけが薄い緑色のシャツ。
下は脚の細さが際立つきちっとした白のパンツ。
さすがの私服だ。もちろんよく似合っている。
「春らしい服装だね」
「そうでしょ~家の近くの桜も咲き始めてたからさ~」
「まじかあ ホントにもう春だなあ」
社員のデスクの奥にあるソファに向かう。
大きい方に隣り合って座って今日の資料やら企画資料やらを机に置く。
「今日の予定、頭入ってる?」
「もちろん」
ニカッって笑う隼人。
はあ、、顔がいい。
「んじゃあ、まだ時間あるから新しい仕ご…」
「お、隼人。早いね」
「あ、社長おはようございます。」
「ん、おはよう」
おれの話をさえぎって現れたのは社長改め洋子さん。
「……あれ、洋子さん何持ってるんですか。ご飯買いにいったんじゃ?」
誰よりも早く事務所に来る洋子さんは、俺が出勤してきたから朝ごはんを買いに行くと言って出て行ったはずだったのだが。
彼女の手にあるのはどう見ても食べ物ではないような。
「飯は買ってきたけどさ。情報収集にと思って一緒に買ってきたから見せようと思って。」
ばさっと洋子さんの手にあったものが机に放り落とされる。
「週刊誌…?」
「そ。リンクのとこのタレントが撮られちゃったらしい」
リンク、というのは割と近い所にある芸能事務所『ハピネスリンク』のこと。
そして、
その開かれたページのでかでかとした見出しには
『ハピネスリンク』所属である、
「柳 理央」の名前がでかでかと刻まれていた。
開かれた週刊誌のページ。
少し遅れてその文字を認識したらしい隼人が思わず、といった感じでバッとおれの顔をみる。
「ついこの間ドラマの発表があったばかりだから狙われたのかねえ。
新人だってモデルだって狙われるってこった」
ページに踊る『新人モデル』『人気女優』『夜の密会』そして『熱愛』の文字。
つまり理央の熱愛報道であり、そのお相手はこの間発表されたばかりのドラマの相手役。『相川みさえ』というおれ達より数個上の人気女優だ。
というか大きく書かれているのは相川みさえの方。相川みさえの久々の熱愛疑惑、理央はその新しいお相手、という立ち位置らしい。
………ふむ。
「まあつまり隼人もさらに気を付けて生活を送れってことですね?洋子さん」
「そういうこと」
ニッと笑ってそれだけ言うと机の上の週刊誌をとって自分の机に帰ろうとする。
「あ、洋子さん待って。それ読みたいから置いてってくれません?」
「ん?いいよ」
ふたたび放り投げられる週刊誌。
邪魔してごめんな、と今度こそ洋子さんは戻っていった。
「………」
「………」
「…雪くん…?あの、大丈夫?」
「ん~…ちょっと溢れそうな怒りを抑え込んでるからちょっと待って」
「はい……」
なんてね
「ふはっ冗談だよ。そんな萎縮しないでよ。
あんだけ愛情もらってて、それをたかがこんだけで疑うほど女々しくはないよ」
見るからにほっ、とした表情を浮かべる隼人。
「そっかあ。雪くん怒ったら鬼みたいになるからどうしようかと思った。でも、傷ついてたりしない…?」
「一言多いけど、心配してくれてありがと。ほんとに大丈夫。おれにガミガミ言うんだから自分がもっと警戒しろとは思うけどね」
「雪くん、本当に怒ってないんだよね……?」
「うん。ほんとだよ。
ま、この後の対応も注意して見とこ。それと洋子さんにも言われたようにおれ達も今より警戒していこうな」
「うん、わかってるよ」
隼人は確実に安定した地位を手に入れかけている。
それが邪魔されるようなことは絶対にあってはいけない。
マネージャーとしても絶対に防がなければいけないのだ。
「よし、今日の予定が入ってんなら打合せは大丈夫だろ。
ちょっと混乱しちゃっただろうから出発までゆっくりしときなよ。
もし暇だったらここらへん目通してていいから」
返事を返した隼人の前に企画書類は置いたまま、週刊誌を持って立ち上がった。
「ん~む。なるほどね」
例の報道のページを読み終えて、やはり浮気の心配はなさそうだ。
煽りの文字たちに引きずられがちだが、冷静に写真を見ればそこまでおかしな距離感でもない。お互い触れ合ってるわけでもないし、人とぶつかりそうになって相川の方が少し寄ってきた、といったところだろうか。
なにより理央の髪型がオールバックのままだ。それはつまり仕事モードのままということでプライベートな写真ではないということ。
そうなると、この後の事務所の対応が目下のところの問題だろう。
おれは理央の才能だってこんなとこで潰れてほしくないと強く思っている。
あいつは見目の美しさだけでなく演技とか、歌とか溢れんばかりの才能も持っているから。
隼人とは違う系統できっと活躍していくだろう。
生臭い話だが、うまく転べば知名度アップにつながるかもしれない。
(事務所の対応であいつが不利益被ったりしたら呪うぞ…)
まあ、恋人としてはそう遠くないうちに電話でもくるだろうし。
その時に詳しく聞いてやろうじゃないか。
そう思って内心苦笑しつつ、握っていた週刊誌を机に放った。
「おはよーございまーす」
よく通る声が狭い事務所内にあいさつを響かせる。
作業していたパソコンをスリープにして席を立つ。
「おはよ、はやと」
「雪くん!おはよ」
ひらっとした淡い春色で襟だけが薄い緑色のシャツ。
下は脚の細さが際立つきちっとした白のパンツ。
さすがの私服だ。もちろんよく似合っている。
「春らしい服装だね」
「そうでしょ~家の近くの桜も咲き始めてたからさ~」
「まじかあ ホントにもう春だなあ」
社員のデスクの奥にあるソファに向かう。
大きい方に隣り合って座って今日の資料やら企画資料やらを机に置く。
「今日の予定、頭入ってる?」
「もちろん」
ニカッって笑う隼人。
はあ、、顔がいい。
「んじゃあ、まだ時間あるから新しい仕ご…」
「お、隼人。早いね」
「あ、社長おはようございます。」
「ん、おはよう」
おれの話をさえぎって現れたのは社長改め洋子さん。
「……あれ、洋子さん何持ってるんですか。ご飯買いにいったんじゃ?」
誰よりも早く事務所に来る洋子さんは、俺が出勤してきたから朝ごはんを買いに行くと言って出て行ったはずだったのだが。
彼女の手にあるのはどう見ても食べ物ではないような。
「飯は買ってきたけどさ。情報収集にと思って一緒に買ってきたから見せようと思って。」
ばさっと洋子さんの手にあったものが机に放り落とされる。
「週刊誌…?」
「そ。リンクのとこのタレントが撮られちゃったらしい」
リンク、というのは割と近い所にある芸能事務所『ハピネスリンク』のこと。
そして、
その開かれたページのでかでかとした見出しには
『ハピネスリンク』所属である、
「柳 理央」の名前がでかでかと刻まれていた。
開かれた週刊誌のページ。
少し遅れてその文字を認識したらしい隼人が思わず、といった感じでバッとおれの顔をみる。
「ついこの間ドラマの発表があったばかりだから狙われたのかねえ。
新人だってモデルだって狙われるってこった」
ページに踊る『新人モデル』『人気女優』『夜の密会』そして『熱愛』の文字。
つまり理央の熱愛報道であり、そのお相手はこの間発表されたばかりのドラマの相手役。『相川みさえ』というおれ達より数個上の人気女優だ。
というか大きく書かれているのは相川みさえの方。相川みさえの久々の熱愛疑惑、理央はその新しいお相手、という立ち位置らしい。
………ふむ。
「まあつまり隼人もさらに気を付けて生活を送れってことですね?洋子さん」
「そういうこと」
ニッと笑ってそれだけ言うと机の上の週刊誌をとって自分の机に帰ろうとする。
「あ、洋子さん待って。それ読みたいから置いてってくれません?」
「ん?いいよ」
ふたたび放り投げられる週刊誌。
邪魔してごめんな、と今度こそ洋子さんは戻っていった。
「………」
「………」
「…雪くん…?あの、大丈夫?」
「ん~…ちょっと溢れそうな怒りを抑え込んでるからちょっと待って」
「はい……」
なんてね
「ふはっ冗談だよ。そんな萎縮しないでよ。
あんだけ愛情もらってて、それをたかがこんだけで疑うほど女々しくはないよ」
見るからにほっ、とした表情を浮かべる隼人。
「そっかあ。雪くん怒ったら鬼みたいになるからどうしようかと思った。でも、傷ついてたりしない…?」
「一言多いけど、心配してくれてありがと。ほんとに大丈夫。おれにガミガミ言うんだから自分がもっと警戒しろとは思うけどね」
「雪くん、本当に怒ってないんだよね……?」
「うん。ほんとだよ。
ま、この後の対応も注意して見とこ。それと洋子さんにも言われたようにおれ達も今より警戒していこうな」
「うん、わかってるよ」
隼人は確実に安定した地位を手に入れかけている。
それが邪魔されるようなことは絶対にあってはいけない。
マネージャーとしても絶対に防がなければいけないのだ。
「よし、今日の予定が入ってんなら打合せは大丈夫だろ。
ちょっと混乱しちゃっただろうから出発までゆっくりしときなよ。
もし暇だったらここらへん目通してていいから」
返事を返した隼人の前に企画書類は置いたまま、週刊誌を持って立ち上がった。
「ん~む。なるほどね」
例の報道のページを読み終えて、やはり浮気の心配はなさそうだ。
煽りの文字たちに引きずられがちだが、冷静に写真を見ればそこまでおかしな距離感でもない。お互い触れ合ってるわけでもないし、人とぶつかりそうになって相川の方が少し寄ってきた、といったところだろうか。
なにより理央の髪型がオールバックのままだ。それはつまり仕事モードのままということでプライベートな写真ではないということ。
そうなると、この後の事務所の対応が目下のところの問題だろう。
おれは理央の才能だってこんなとこで潰れてほしくないと強く思っている。
あいつは見目の美しさだけでなく演技とか、歌とか溢れんばかりの才能も持っているから。
隼人とは違う系統できっと活躍していくだろう。
生臭い話だが、うまく転べば知名度アップにつながるかもしれない。
(事務所の対応であいつが不利益被ったりしたら呪うぞ…)
まあ、恋人としてはそう遠くないうちに電話でもくるだろうし。
その時に詳しく聞いてやろうじゃないか。
そう思って内心苦笑しつつ、握っていた週刊誌を机に放った。
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