上 下
19 / 26

見事なまでの土下座

しおりを挟む
「違うんだ。違んだ」
 と俺は言った。
 時間が動き出した時に俺はナミのスカートの中にいた。
 そしてナミの悲鳴と共に、俺はスカートから出て来て「違うんだ。違うんだ」と言い訳をしている。

「えっ、逆になんで俺はナミのスカートの中に潜っていたの?」
 時間が止まっていた。
 だから彼女からしたら急に俺がスカートの中に潜っていたみたいな事になっている。
 だから俺も同じように動揺してみる。
 よくわからん、この怪奇現象の被害者面をする。
 ナミは顔を真っ赤にさせて俺を睨んでいた。
「不思議すぎる。不思議すぎるぜ」と俺は言ってみる。
 真っ赤なナミが泣きそうな顔をしていた。
 隣を見たらネコタソの顔も真っ赤だった。
 
 いたたまれない。
 もしかして、もうナミとは友達でいられないんじゃないだろうか?
 俺はバカである。ちゃんと時間停止の5分間を守って行動しなくちゃいけなかった。
 5分が過ぎてナミの悲鳴が聞こえた時、俺は絶望した。絶望したけど、もしかしたらナミなら許してくれるんじゃないだろうか? とも思っていた。
 俺は膝を床に付けた。
「すみませんでした」
 額を床に付けた。
 見事なまでの土下座をぶちまかした。

「男の人が土下座なんてしちゃダメだよ」
 とネコタソが言って俺を立たそうとする。
 それでも俺は土下座をやめなかった。

「わかった」とナミの声がした。
 俺は顔を上げる。
「後でお仕置きだからね」
 と彼女はお尻を押さえて言った。

「次の時間は私、自分の席に座る」
 とナミが言う。
「それじゃあ私は教科書を忘れたから、太一の膝に座る」
 とネコタソが言う。
 ナミが睨んでいる。
 ネコタソはどれだけ教科書を忘れて来てるんだよ。
「ネコタソ」と俺は言う。「次の授業は自分の席で受けてくれないかな?」
「なんで?」
 ネコタソが首を傾げて俺を見つめて来た。
 俺はチラっとナミを見る。
「私のこと嫌い?」とネコタソが尋ねた。
 そういう事じゃねぇーよ。気づいてくれよ。
「嫌いじゃない」と俺が言う。
「それじゃあ好きなの?」
 隣のナミが鬼のように睨んでいる。
「どちらかと言うと」と俺は言って答えを濁す。
「らぁ~」とネコタソが言いながら、本当のネコのように体を俺に擦り付けてくる。
「今はなぁ? わかってくれよ」
「わかんない」

「いいかげんにしないと、マジで殺すよ」
 とナミがドスの効いた声を出す。

 さすがにネコタソもナミが不機嫌なのがわかったらしく、ビクッと体を震わせた。

「次は自分の席で授業しようかな」とネコタソが言う。
「うん」と俺は頷く。「そうした方がいい」

 ネコタソが自分の席に帰って行く。
 めっちゃナミに睨まれている。
 気まずい。
「私のことは?」
 急に質問が飛んで来た。
 私のことは? 何を言っているんだろう?
「えっ?」
 と俺は聞き直す。
「私のことは好きなの?」
 とナミが顔を真っ赤にして尋ねた。
「何を言ってんだよ。教室で」
「聞いてるの」
「……うん」
「うんじゃわからない」
「……はい。好きです」
「ネコとどっちが?」
「えっ?」
 なにその質問。
 めっちゃ睨まれている。
「ナミ様の方が好きです」
「ふざけないで。ちゃんと答えて」
「ナミの方が好きです」
「ずっとネコとイチャ付いてるけど」
「申し訳ございません」
「なんでスカートの中に潜ったの?」
「……好きだからです」
「それじゃあなんで……」
 とナミは何かの質問をしようとして、視線を反らしてやめた。

 先生がやって来て授業が開始される。
 俺は黒板を見つめて授業を受けていた。
 黒板を見つめているけど脳内では別のことを考えていた。
 俺が考えていたのは時間停止のことである。
 残り3回しか時間は止められない。
 時間にしたら15分。有効に活躍しなくちゃいけなかった。
 
 お尻を楽しむのは最高だった。時間がオーバーしちゃってナミとは変な感じになったけど5分間の使い方はお尻である。
 胸に行ってしまえばブラジャー問題で時間が無くなる。
 それにキスもしたい。
 さっきキスしとけばよかった、と後悔した。
 でも残り3回も時間を止めることができるのだ。
 無限ならココで時間を止めてナミにキスでもしているところだけど、時間停止の能力は有限である。だからピンポイントに狙いたい。

 頭にパッと浮かんだ女の子。
 それは俺を見てキモデブと言った最強様だった。
 あの子を停止した世界でペロンチョしたい。
 キモデブだとバカにしたお返しをしたい。キモデブと言った奴にペロンチョされるってどういう気持ちだろうか? でも時間停止しているから彼女は気づかないんだけど……。

 彼女の情報はネコタソが知っている。
 彼女は猫耳を最強様から貰ったと言っていた。
 次の休み時間になったら最強様の居場所を聞こう。
 そして彼女の元へ行こう。


 次の休み時間。
「最強様って何年の何クラスなんだ?」
 俺はネコタソに尋ねていた。
「最強様? 3年だけど なんか用事?」
 とネコタソが首を傾げて尋ねた。
「あぁ。ちょっと会いたいんだ。3年何組? どこに3年のクラスがあるの?」
「3年は1クラスしかなかったよ。上の階だよ」
「私も付いて行っていい?」
 とネコタソが首を傾げた。
「別にいいけど」
 時間停止した世界でエチエチなことをするだけだから。
「付いて行く」
 とネコタソが言って喜んだ。
 俺達は最強様に会いに3年のクラスに向かった。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

男女比の狂った世界は、今以上にモテるようです。

狼狼3
ファンタジー
花壇が頭の上から落とされたと思ったら、男女比が滅茶苦茶な世界にいました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...