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俺はイライアのことを愛していいか?

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 ダンジョンの最下層。
 イライアとしたい事があった。
 彼女はいつものように岩の上に座っていた。
 バッハはイライアの近くで薬草を食べている。
 彼女が俺を見た。
 俺は彼女の隣に腰を下ろす。

「どうじゃった?」とイライアが尋ねた。
 
「独立宣言はうまくいったよ」と俺は言った。

「そうか」と彼女が言う。

 しばらくの沈黙。

「星のカケラというアイテムが存在する」
 と俺は言った。

 彼女にも蘇らせたい人がいる。だけど俺はミナミを蘇らしたい。

「なんじゃそれ?」
 と彼女が言った。

「3つ集めると願い事が叶うアイテム」
 と俺は言った。

「……」
 彼女の表情が読み取れない。
 イライアは薬草を食べているバッハを見つめた。

「それを3つ集めて俺はミナミを蘇らす」

「……そうか」
 とイライアが言った。

「……まだ長谷川に会いたい?」
 と俺は尋ねた。

 しばらく彼女は考えているようだった。

「もう彼の顔も思い出せぬ。400年以上も昔のことじゃ」

 あまりにも月日が経ちすぎていた。
 俺は疑問に思うことがあった。

「賢者の石で長谷川を蘇らせても……」と俺は言った。
 彼女は賢者の石で関西人勇者を蘇えらそうとしていた。
 だけど賢者の石は元の世界に戻すアイテムである。

「そうじゃ」
 俺の言葉を全て言い切る前に彼女は答えた。
「彼が蘇っても、長谷川はこの世界には戻らん。日本に戻るだけじゃ」

「それじゃあ、どうして?」
 と俺は言った。
 賢者の石の正体を知って、ずっと疑問に思っていたことだった。

「どこの世界でもいいから彼が生きてほしかったんじゃ。どこの世界でもいいから彼には幸せになってほしかったんじゃ。妾と会えなくとも、それでよかったんじゃ」
 と彼女が言った。

「今でも彼を蘇らせたい?」
 と恐る恐る俺は尋ねた。

「……わからぬ」
 と彼女が言った。

「蘇らせても400年も経っておる。彼が元の世界に帰れたとしても家族がいないかもしれぬ。それに彼は蘇りたくないかもしれぬ」
 と彼女が言った。

 この世界と、日本の時間は平行じゃない。だけど家族の元に帰れる保証はない。
 だけど、俺は、そういう事を聞いている訳じゃなかった。

「イライアの隣に蘇らせることは考えないのか?」
 と俺は尋ねた。

「たくさんの人を妾は殺して来たんじゃ。どの面で彼に会えるんじゃ。どの口で彼に愛してるって言えるのじゃ。どの手で彼に触れることができるんじゃ。もう妾は長谷川に会いとうない」と彼女が言った。

「でも長谷川だって、イライアを取り戻すために多くの人を殺している」
 と俺は言った。

「妾のために彼にも人を殺させたのじゃ」
 と彼女が悲しそうに言った。
「人のために役に立ちたいと言っていたのじゃ。そんな男が妾のために人を大勢、殺したのじゃ」

 俺は長谷川が蘇ったことを想像した。
 たくさんの人を殺したことに拒絶反応を示すだろう。
 この問題をイライアは何度も繰り返してきたんだろう。
 そして彼女は色んな問題を考えて、本当に彼を蘇らせていいのかすらもわからなくなっているんだろう。

「それに妾は彼の子も殺してしまったんじゃ」
 と彼女が言って、お腹を撫でた。

 変なことを聞いてごめん、と俺は謝った。
 そして彼女の涙を俺は手で拭った。
 どれだけの暗闇を彼女は歩いて来たんだろうか?
 想像もつかないほどの暗闇だった。
 イライアが歩いた暗闇には街灯もなく、月の灯すら無かった。
 ただの暗闇が広がっていただけだった。

 だから俺は思ったのだ。
 彼女に居場所を作りたい。
 俺にできることは彼女の光になることだった。
 光、というと大げさかもしれない。
 俺になれるのは月明かり程度の微量な光かもしれない。

 俺は彼女のお腹を撫でた。

「この子は俺の子ども」と俺は言った。

「そうじゃ」と彼女が言う。

「……俺はイライアのことを愛していいのか?」
 と俺は尋ねた。

「……わからぬ」
 と彼女が言う。

「俺はイライアの顔が好きだ。イライアが誰かを殺した手で俺に触れても別にかまわない。イライアが愛してると言わないなら俺が代わりに愛してるって言ってあげる」

「お主はタラシじゃの」
 とイライアが言った。
「妾を何人目かの妻にしたいのか?」

「そうだ」と俺は言う。

「だからあの作戦の中に、妾が死ぬことが含まれているのか? 妾が死んだらお主のところに嫁ぐのか? お主は妾に居場所を作りたいのか?」

 そうだ、と俺は答えた。
 もうイライアを1人にさせたくない。
 だけど彼女は人を殺しすぎている。イライアのままでは俺の元に来ることができない。

「セッ◯スしよう」
 と俺は言った。
 愛情を伝えかった。
 俺は彼女とセッ◯スしに来たのだ。

 ポクリ、と彼女が頷いた。
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