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消えるお金
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財務大臣を自分の部屋に呼んでいた。
国としてお財布を任せてもいいな、と思った男である。
アニーとナナナのお墨付きである。常に冷静沈着な心拍音をしているらしい。悪い人ではないけど厳しい人特有の匂いがするらしい。
俺が財務大臣として選んだのは金貸し屋のユーという男である。
この街で投資信託という商品を始めてから、一番の利回りの高い商品を作り出している男である。
アニーもユーのお店で投資信託をしていた。
投資信託というのは、たくさんのお客さんからお金を集めて、色んな商会に株を投資する。得た成果をお客さんに分配する金融商品のことである。
「忙しいのに、来てもらってすまない」
と俺は言った。
「いえいえ。私はいつでも貴方様の元へ駆けつけますよ」
とユーが言った。
肩掛けカバンからそろばんがハミ出ている太った男である。
たぶん彼の言葉には嘘というか、上司に対してのお世辞みたいなモノも含まれていた。本当に用事がある時以外は彼を呼び出したいとは思わない。忙しい男なのだ。
「これを見てくれないか」
と俺は言って、まだ流通していない1枚の金貨を彼に差し出した。
「これは?」
とユーが言う。
「1年間、使わなければ消えるお金」
と俺が言った。
グハハハハハハ、と彼が大爆笑を始める。
「消えるお金ですか。それは凄いモノをお作りになりましたね」
と財務大臣が言う。
「裏に書いてある365日という数字が金貨を使用しなければ減っていき、その文字が0になれば消える」
と俺は言った。
ほくそ笑みながらユーは金貨を見ていた。
「これを流通させたい。どう思う?」
と俺は尋ねた。
素直なユーの意見が聞きたかった。
「消えるお金が流通できればエネルギーは留《とど》まることなく、国を発展させていくでしょう」
と男は言う。
お金=エネルギーである。
お金は人を動かす。つまりお金は人を動かすことができるエネルギーなのだ。
エネルギーが一定の場所に留まるのを防ぐのが消えるお金の目的だった。
「ですが」と財務大臣が言った。
「このお金を使えばバビリニアは黙っておりません」
我々は現在バビリニアのお金を何も考えずに使っている。
つまりバビリニアからお金を借りている状態なのである。
借りているということは、もちろん利息をつけて返さないといけない。
そんなまさか、と思うかもしれないけど、それが現実なのである。
バビリニア、という大国に通貨を支配されている。
「最近、自国の通貨を作った国はないのか?」
と俺は尋ねた。
「2ケ国ほどあったかと思います」
「バビリニアからの攻撃はされているのか?」
「まだ、されておりません」
これは推測の域を出ないが、前回に星のカケラが現れて勝ち取った国がバビリニアだろう。
自国の発展と繁栄を願った。そして世界中の通貨をバビリニアのモノにさせた。
新しい星のカケラが現れたと同時に、前回の願いの効果が無くなったんじゃないか、というのが俺の推測だった。
バビリニアは他国が通貨を作るのを防ぎたいはず。
だけど色んな国が通貨を作り始めるとバビリニアはそれを防ぎ続けることはできない。
だから他国が通貨を作ることをバビリニアは諦めて、星のカケラを集めることに専念している可能性があった。
星のカケラを手に入れることができれば世界征服できる。
それじゃあ世界征服とは何か?
自国の通貨を世界に流通させることである。通貨を世界に流通させることができれば世界経済を支配できる。
バビリニアは他国が星のカケラを集めて、自国の発展と繁栄を願うのを阻止したいはずだった。
それに星のカケラを集めれば、願いを叶えることができるのだ。
「俺達も自国の通貨を使う」
と俺は断言した。
「バビリニアから攻められても?」
とユーが言った。
彼には星のカケラについて語れなかった。なぜなら俺が星のカケラを集めたら国のためではなく、私欲のために願うのだ。
「攻められても価値はあると思う。このお金が流通した世界を見てみたくはないか?」
と俺は言った。
ゴクン、と財務大臣が唾を飲んだ。
商人なら、このお金が流通した世界のことはイメージが出来るだろう。
「俺は見てみたい。経済が発展し、国は活性化されるだろう。人が集まり、色んな商売が生まれるだろう。バビリニアが攻めてくるなら最強の軍を作ればいい。俺達の国が経済大国になるんだ」
と俺は言った。
グハハハ、と財務大臣が笑った。
「本当に面白い。面白い」と彼が言う。
その言葉には嘘が含まれていなかった。
本当に面白がっているようだった。
「それじゃあ、どうやって、この金貨を流通させるんですか?」とユーが楽しそうに尋ねた。
「それを考えるために、ユーを呼んだんだ。手伝ってくれるか?」
と俺が言う。
「お手伝いさせていただきます」
と財務大臣が言った。
そして俺達はどうやれば通貨を流通させて、バビリニアの通貨を追い出すことができるのかを話合った。
昔にやった『RPGを作ろう』というゲームの延長線をやっているようだった。
『国を作ろう』。
プレイヤーのことを考え、ルールを作る。
そして『国を作ろう』というゲームには新ルールが追加されている。
それは戦争である。戦争には2つの要素があった。
星のカケラの奪い合うという要素。
そして領地の奪い合うという要素。
隣接する国々が、王族を失った領地を奪い合っている。
俺んとこ来ねぇーか、と始まりは話し合いだった。条件が合えば貴方の国に所属します、と穏やかなモノだったらしいのだ。
だけどA国が領主と話し合っている時に、B国が横取りして植民地にしてしまった。そしてA国とB国はケンカをしている。
俺が国として独立すれば、その戦争に巻き込まれることは必至だった。
国としてお財布を任せてもいいな、と思った男である。
アニーとナナナのお墨付きである。常に冷静沈着な心拍音をしているらしい。悪い人ではないけど厳しい人特有の匂いがするらしい。
俺が財務大臣として選んだのは金貸し屋のユーという男である。
この街で投資信託という商品を始めてから、一番の利回りの高い商品を作り出している男である。
アニーもユーのお店で投資信託をしていた。
投資信託というのは、たくさんのお客さんからお金を集めて、色んな商会に株を投資する。得た成果をお客さんに分配する金融商品のことである。
「忙しいのに、来てもらってすまない」
と俺は言った。
「いえいえ。私はいつでも貴方様の元へ駆けつけますよ」
とユーが言った。
肩掛けカバンからそろばんがハミ出ている太った男である。
たぶん彼の言葉には嘘というか、上司に対してのお世辞みたいなモノも含まれていた。本当に用事がある時以外は彼を呼び出したいとは思わない。忙しい男なのだ。
「これを見てくれないか」
と俺は言って、まだ流通していない1枚の金貨を彼に差し出した。
「これは?」
とユーが言う。
「1年間、使わなければ消えるお金」
と俺が言った。
グハハハハハハ、と彼が大爆笑を始める。
「消えるお金ですか。それは凄いモノをお作りになりましたね」
と財務大臣が言う。
「裏に書いてある365日という数字が金貨を使用しなければ減っていき、その文字が0になれば消える」
と俺は言った。
ほくそ笑みながらユーは金貨を見ていた。
「これを流通させたい。どう思う?」
と俺は尋ねた。
素直なユーの意見が聞きたかった。
「消えるお金が流通できればエネルギーは留《とど》まることなく、国を発展させていくでしょう」
と男は言う。
お金=エネルギーである。
お金は人を動かす。つまりお金は人を動かすことができるエネルギーなのだ。
エネルギーが一定の場所に留まるのを防ぐのが消えるお金の目的だった。
「ですが」と財務大臣が言った。
「このお金を使えばバビリニアは黙っておりません」
我々は現在バビリニアのお金を何も考えずに使っている。
つまりバビリニアからお金を借りている状態なのである。
借りているということは、もちろん利息をつけて返さないといけない。
そんなまさか、と思うかもしれないけど、それが現実なのである。
バビリニア、という大国に通貨を支配されている。
「最近、自国の通貨を作った国はないのか?」
と俺は尋ねた。
「2ケ国ほどあったかと思います」
「バビリニアからの攻撃はされているのか?」
「まだ、されておりません」
これは推測の域を出ないが、前回に星のカケラが現れて勝ち取った国がバビリニアだろう。
自国の発展と繁栄を願った。そして世界中の通貨をバビリニアのモノにさせた。
新しい星のカケラが現れたと同時に、前回の願いの効果が無くなったんじゃないか、というのが俺の推測だった。
バビリニアは他国が通貨を作るのを防ぎたいはず。
だけど色んな国が通貨を作り始めるとバビリニアはそれを防ぎ続けることはできない。
だから他国が通貨を作ることをバビリニアは諦めて、星のカケラを集めることに専念している可能性があった。
星のカケラを手に入れることができれば世界征服できる。
それじゃあ世界征服とは何か?
自国の通貨を世界に流通させることである。通貨を世界に流通させることができれば世界経済を支配できる。
バビリニアは他国が星のカケラを集めて、自国の発展と繁栄を願うのを阻止したいはずだった。
それに星のカケラを集めれば、願いを叶えることができるのだ。
「俺達も自国の通貨を使う」
と俺は断言した。
「バビリニアから攻められても?」
とユーが言った。
彼には星のカケラについて語れなかった。なぜなら俺が星のカケラを集めたら国のためではなく、私欲のために願うのだ。
「攻められても価値はあると思う。このお金が流通した世界を見てみたくはないか?」
と俺は言った。
ゴクン、と財務大臣が唾を飲んだ。
商人なら、このお金が流通した世界のことはイメージが出来るだろう。
「俺は見てみたい。経済が発展し、国は活性化されるだろう。人が集まり、色んな商売が生まれるだろう。バビリニアが攻めてくるなら最強の軍を作ればいい。俺達の国が経済大国になるんだ」
と俺は言った。
グハハハ、と財務大臣が笑った。
「本当に面白い。面白い」と彼が言う。
その言葉には嘘が含まれていなかった。
本当に面白がっているようだった。
「それじゃあ、どうやって、この金貨を流通させるんですか?」とユーが楽しそうに尋ねた。
「それを考えるために、ユーを呼んだんだ。手伝ってくれるか?」
と俺が言う。
「お手伝いさせていただきます」
と財務大臣が言った。
そして俺達はどうやれば通貨を流通させて、バビリニアの通貨を追い出すことができるのかを話合った。
昔にやった『RPGを作ろう』というゲームの延長線をやっているようだった。
『国を作ろう』。
プレイヤーのことを考え、ルールを作る。
そして『国を作ろう』というゲームには新ルールが追加されている。
それは戦争である。戦争には2つの要素があった。
星のカケラの奪い合うという要素。
そして領地の奪い合うという要素。
隣接する国々が、王族を失った領地を奪い合っている。
俺んとこ来ねぇーか、と始まりは話し合いだった。条件が合えば貴方の国に所属します、と穏やかなモノだったらしいのだ。
だけどA国が領主と話し合っている時に、B国が横取りして植民地にしてしまった。そしてA国とB国はケンカをしている。
俺が国として独立すれば、その戦争に巻き込まれることは必至だった。
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