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小次郎様の裸を見せました

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 草原。
 女子2人は魔物と向き合っていた。
 大型犬サイズのネズミである。
 俺が異世界にやって来たばかりの頃はコラ◯タと呼んでいた。本当の名前はデビルチューチューとか、そんな名前だったと思う。名前を付けた奴のセンスの無さ。

 俺は上空から彼女達2人を見ていた。
 ナナナのステータスを鑑定スキルで見たけど凄かった。
 鑑定スキルというのは俺が持った情報を照らし合わせて鑑定するモノである。だから100%正しい訳じゃない。
 ナナナの過去の映像を見たせいで鑑定精度が上がっている。
 獣人には種族スキルが3つも存在していた。

 ちなみに種族スキルは何世代にも渡って同じことを繰り返すことで、次の世代に引き継かれるスキルのことである。

 種族スキル1つ目が建築だった。過去の映像でも父親がすげぇー家を建てていたけど、あれは種族スキルらしい。
 
 次は薬草採取。これは匂いを判別することで薬草などを見つけ出すスキルである。

 そして3つ目のスキルが祈りだった。
 獣人は何世帯にもわたり、祈り続けた。
 祈って祈って祈って、祈りを捧げ続けた。
 祈りとは他者への思いに願いを込めることである。
 誰かのために獣人は何百年も願いを込め続けたのだ。
 その思いが種族スキルという形になって現れていた。
 祈りの効果は祈るモノによって違う。
 傷を癒してあげたいと思えば癒しの効果があるし、強くしたいと思って祈れば一定時間だけ攻撃力が上昇したりする。
 他の補助魔法と違うのは自分にかけることができない点である。
 利他の精神で生まれたスキルである。優しい種族だから生まれたスキルである。
 
 2人は最強の防具のおかげで魔物に攻撃されてもダメージを食らわなかった。
 ナナナには自分が魔物と戦えることを知ってもらいたかった。だからあまり口出しせずに、上空から見守り続けた。
 魔物を倒せば2人の応援隊隊長の俺は、「すごーい」「よくやったね」と声をかける。
 フレー、フレー、アニーとナナナ。フレフレ2人。
 めちゃくちゃ応援しまくる。
 魔物を倒したら魔石はちゃんと回収しているみたいだった。回収した魔石は現金化して投資信託しようね。

 この草原にはコラ◯タだけではなく、ポ◯ポもナゾ◯クサも出現する。こっちの世界の正式な名前は覚えてない。全てにデビルなんちゃら、ってダサい名前が付いていたと思う。あのモンスターに似たような魔物っていうだけで、デフォルメされていないから見た目はかなり気持ち悪い。
 他にも草原には色んな魔物が出現する。だけど彼女達は2人で魔物を倒し続けた。

 夕暮れ。
 俺達は馬車に帰って来た。
「魔物との戦いはどうだった?」
 と俺はナナナに尋ねた。

「お腹空いた」
 と彼女は答えた。

「ご飯にする? それとも汚れているから先にシャワーを浴びる?」
 と俺は新妻みたいなことを尋ねてしまった。

「ご飯」とナナナ。
「ご飯がいいです」
 とアニーが言った。

 2人をソファーに座らせて、移動中に作っていたオムライスを出した。
 アイテムボックスの中に入れていると温かいモノは温かいまま保存される。アイテムボックスの中では時間が止まっているみたいだった。

 2人は泥まみれのままスプーンを握りしめてオムライスを食べ始めた。

「おいひぃ」
 とナナナが口の中いっぱいにオムライスを頬張りながら言った。

「なんですかコレ。すごく美味しいです」
 とアニーが言った。

「たんとお食べ。おかわりも用意しているからね」
 と俺が言う。
 まるで優しい老婆のような言い方になってしまった。

 俺もソファーに座って、オムライスを食べた。
 位置はナナナの隣にアニー。アニーの隣に俺が座った。

 ナナナがオムライスを持って立ち上がった。

「ボクも領主様の隣に座りたい」
 とナナナが言った。
 だから俺がソファーの真ん中になる。いきなり両手に華になってしまった。しかも2人ともくっ付いて来るからギュウギュウである。

「領主様、おかわり」
 とナナナが言った。

 2杯目のオムライスを出してあげた。

 アニーはオムライスを食べ終えてもおかわりはしなかった。

「もう一杯いる?」と俺が尋ねると、「……はい」と恥ずかしそうにアニーが頷いた。


「なんでボク達は魔物と戦っているの?」
 とご飯を食べ終えてからナナナが質問してきた。

「目的の場所に着くまでに強くなってもらいたい」と俺が言う。「体を鍛えれば精神も鍛えることができるから」

「ボク強かった?」とナナナ。

「強かったよ」と俺が言う。

「初めて魔物を倒したんだよ」とナナナ。

「ずっと見てたよ。頑張っていたね」と俺が言う。

「私も強くなってましたか?」

「強くなってたよ」と俺は微笑んだ。

 2人とも今日の魔物討伐で強くなっている。
 明日、ナナナには祈りの練習をさせよう。

「それじゃあ、そろそろシャワーを浴びて寝ようか?」

 
 先に2人にシャワーを浴びてもらった。
 2人のパジャマを持って来るのを忘れていた。2人が寝た後に俺だけ帰るから、その時にパジャマを持って来てあげよう。
 とりあえず2人には俺のTシャツと短パンを渡した。たぶん俺の服は2人にはかなり大きい。
 2人のシャワーが終わるまでにユニコーンに食事をあげて、撫でてあげたり喋ったりした。

「馬車に入って来ていいですよ」
 しばらくしてからアニーの声が聞こえて馬車に戻った。

 2人は俺が渡した短パンを履いていなかった。
 Tシャツだけを着て、恥ずかしそうにモジモジしている。

「なんで短パンを履いてないんだよ」
 とさすがに俺は言った。

「この格好が好きだと思ったんです」
 とモジモジしながらアニーが言った。

「ボクも領主様が、この格好が好きだって言うから」

「ナナナちゃんはしなくていいんですよ」

「ボクだってしたい」

 2人ともパンツが見えないようにTシャツを伸ばしながら喋っている。

「その格好すごく好きだよ」と俺は言った。「でも風邪を引くからズボンを履いてね」
 俺が言ったけど2人とも短パンを履こうとしなかった。
 仕方がないので、その格好を咎《とが》めるのはやめて、2人の髪の毛を魔法で乾かした。

「寒かったら短パン履いてね。その格好で外に出ないでね」と俺は注意しておく。そんな格好で外に出て誰かと出会ってしまったら襲われてしまう。

「はーい」とナナナ。「はい」とアニー。
 2人は返事をしながら俺の風魔法を浴びて髪の毛をなびかせていた。
 俺は2人の太ももを見てしまった。まんまと2人の思惑にハマってしまったのだ。
 頑張れ大人。負けるな大人。

 ずっと2人は恥ずかしそうにパンツが見えないようにTシャツを伸ばしていた。それが堪らんのよ。


 そして俺もシャワーを浴びた。
 頭を洗っている時に視線を感じた。
 またか、と思った。
 怒るのも疲れるから無視しようか、と考えた。

「押さないでください」
 と後ろからアニーの小声が聞こえた。

「ボクも領主様の裸を見たい」
 とナナナの声。

「今日だけですよ」とアニーの声。「これはお詫びですからね」

 なんのお詫びで旦那の裸を見せているんだよ、と俺は思った。

 後ろを振り返るとギョロギョロとした2人の目玉が俺の裸を見ていた。
 そして、ゆっくりとシャワー室の扉が閉まった。

 シャワーから出る。
 これは怒っていいものか?
 裸を見られて、どうしたらいいか本当にわかんねぇー。
 2人は怒られ待ちをしているらしく、ソファーに座ってシュンとしていた。
 シュンとするなら覗くなよ。

「なんのお詫びで俺の裸をナナナに見せていたの?」と俺はアニーに尋ねた。
 純粋に思った疑問だった。

「すみません」とアニーが謝る。
「ナナナちゃんから前に薬草を買った時にお金を値切っちゃったお詫びで、小次郎様の裸を見せました」

 なんでお金を値切ったお詫びが、俺の裸を見せることなんだよ。
 可笑しくて吹き出しちゃいそうなる。

「違うの領主様。ボクが領主様の裸を見たい、って言ったからアニーが見せてくれたんだ。だからアニーを責めないであげて。ボクが悪いの」 

「それは違います。これがナナナちゃんに対するお詫びだと私は思って一緒に裸を覗きました。私が悪いんです」

 こんな事で庇い合うなよ、と俺は思った。
 可笑しすぎて笑いそうになるだろう。

「責めてないよ」と俺は言った。
「裸を見られて減るもんじゃないから。でも恥ずかしいから次からやめてね」

 優しく注意するだけに留めた。
 2人は「はい」と返事をした。
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