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女子2人のとんでもない会話

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 馬車の前。
 冒険を始める前に2人に注意事項を説明しないといけなかった。
 まるで引率の先生の気分だった。

「この冒険には注意事項がある」
 と俺は言った。
 
 獣人の女の子。エルフの女の子が真剣に俺のことを見ていた。
 すでに彼女達には防具を着てもらっていた。
 アニーはフェニックスの防具。その上に白いワンピースを着ている。
 ナナナは魔物の鱗で作られたアーマーを着ていた。防具の縁《ふち》にドラゴンの鬣《たてがみ》が付いている。もちろん希少なモノで防御力は高い。

 俺の鑑定ではナナナの得意武器は爪、となっていたのでドラゴンの爪で作られた武器も渡していた。それを彼女は腰にぶら下げている。

「冒険は思いもしない出来事が起きると思う」と俺は言った。「少しでも帰りたいと思ったら言ってほしい。すぐに引き返して帰る」

「はい」と2人が返事をする。

「魔物と戦うこともある。その時は出来る限り2人で対処してもらう」

 この冒険でナナナとアニーのレベルアップを考えていた。
 メンタルを鍛えるには肉体強化も必要なのだ。
 この冒険は少しだけ時間をかけるつもりだった。
 領主としての仕事は、彼女達が寝静まった後にワープホールで家に帰ってからするつもりだった。

「危ないと思ったら俺が対処する。なにかあったらすぐに俺に言うように」

「はい」と2人が返事をした。

 それとコレは注意事項ではなく、確認事項である。
「目的の場所に辿り着いても、すでに獣人達は死んでいるかもしれない」と俺は言った。
「獣人を助けたい、というナナナの思いは叶わないかもしれない。それでも行きたいか?」
 何度もした質問だった。
 答えはわかっている。

「行くよ」とナナナは言った。「もし死んでいたら供養してあげなくちゃ。生まれ変わることができない」

 獣人を殺した貴族のことをどうするのか? について彼女は考えていないみたいだった。
 倒すことができる、という発想が無いんだろう。
 ただ獣人はやられるだけ。そう彼女自身も思っている。その意識を俺は変えてほしかった。争《あらが》うことができる事を知ってほしかった。


 俺達はユニコーンが引く馬車に乗った。
 ユニコーンには弱い魔物が出る草原に向かうように指示していた。もちろん目的地の途中にある草原である。

 俺は揺れる馬車の中で晩御飯の用意をしていた。女子2人も手伝う、と言ってくれたけど狭いキッチンなので断った。
 決してアニーの料理が不安だから断ったわけじゃない。むしろ時間を見つけて料理を教えたいぐらい。
 馬車で揺られながら狭いキッチンで3人で料理することができないから断ったのだ。
 草原で魔物と戦って馬車に帰って来たら2人ともお腹が空いているだろから、今すぐ料理を作っておかなくてはいけなかった。

 俺が料理を作っている間に、アニーがナナナに絵本を読んでいた。
 文字の勉強らしい。
 お姫様が王子様にキスをして蘇る話である。

「アニーはキスしたことがあるの?」
 とナナナが質問した。

「したことあります」
 とアニーが小声で言った。

「どんなの?」

「柔らかかったです」
 とアニー。

「なにが柔らかいの?」
 とナナナ。

「……唇が柔らかいんです」

「領主様も、あの女性の人とキスしてたよ」

「……女性の人?」

「ミナミっていう人」

「どこでしてたんですか?」

「マラソン大会の時に」
 とナナナが言う。

「ナナナ」と俺が言った。
「余計なことを言うんじゃねぇ」

「ミナミ様と外でキスしてたんですか?」とアニーが言った。「へー」
 アニーが俺を見てくる。

「アニーはキスしても交尾しないの?」とナナナが質問した。

「私はまだ交尾してません」

「どうして?」

「交尾は16歳になってからです」

「ボク、たぶん16歳になってるよ。領主様と交尾していい?」

 俺は吹き出してしまった。
 えっ、俺としたいのか?
 獣人の繁殖能力は高い。
 つまり、ちょっと他の種族よりもエロいのだ。

「小次郎様は妻としか交尾しません」
 アニーが焦りながら言った。

「そうか。妻じゃないと交尾できないのか」
 ナナナの残念そうな声。

「ナナナは小次郎様のこと好きなんですか?」

「好き。大好き」
 めちゃくちゃ素直にナナナが答える。
「交尾できないのなら、それじゃあ見る」とナナナ。

「何を見るんですか?」

「領主様とアニーが交尾しているのを、ボクは見ておくよ」
 ナナナにとっては妥協案だったんだろう。

 たまらず俺は吹き出した。

「何を言ってんですか? 交尾はしませんよ」

「でも妻なら交尾してもいいんでしょ?」

「16歳になってからです」

「ボク、16歳だよ?」

「ナナナの年齢は関係ないでしょ」とアニーが言った。

 女子2人のとんでもない会話を聞きながら俺は料理を作っていた。
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