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妹
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ナナナは母親に赤ちゃんの抱っこを代わってもらって、2人は走った。
「お父さん」とナナナは呟いた。
もう父親は奴隷狩りに捕まってしまっているかもしれない。
木々に隠れながら何者かが2人を追いかけて来ていた。
走って走って走って逃げているのに、どんどんと追い詰められて行く。
近くの木々が揺れていた。
「この子を連れて、神子は走って逃げなさい」
と母親は言って、赤ちゃんを渡した。
妹は楽しそうにニッコリと笑った。
「……お母さんは?」
「後で追いかけるから」
母親は赤ちゃんを落とさないように、抱っこ紐をナナナに強く結んだ。
「絶対に追いかけるから」
と母親が言う。
「早く行きなさい」
ナナナは走った。
お母さんを置いて走った。
走って走って走って走った。
後ろを振り返ると遠くの方で大量の鳥が飛び立っていた。
どれだけ走ったかわからないぐらいに彼女は走った。
気づいたら太陽は傾いていた。
「まー、まー、まー」
と妹が泣き叫んでいる。
自分では母乳をあげる事はできない。
母親を待つしかなかった。
木の上に登った。
母親が通り過ぎないように彼女は赤ちゃんを抱っこしながら、地面を眺めた。
何日間も過ぎた。
もう妹は泣かなくなった。
母乳は出ないけど何度かナナナは赤ちゃんにおっぱいを吸わせた。
今は疲れているのか妹は眠っていた。もう昨日から眠って目覚めなかった。
ナナナは木から降り、食べれる葉っぱや虫を食べた。調理されていない葉っぱや虫は口に合わなかったらしく、彼女は苦そうな顔をしていた。
それでも彼女は生きるために食べた。
母親は生きていてほしい、とナナナに願ったのだ。
それを彼女は叶えるために、美味しくない葉っぱや虫を食べた。
ナナナは母親が来ることを期待して、それから何日も動こうとしなかった。
草が揺れるたびに彼女は怯えた。
風が吹くたびに彼女は怯えた。
何かの匂いを嗅ぎ分けて彼女は怯えた。
そのたびに動かなくなった妹をギュッと抱きしめた。
妹の様子がおかしい事にナナナは気づいていた。
白い花の薬草を彼女は見つけ、それを石ですり潰して妹の口に入れた。
その花はナナナが俺に売ってくれた薬草である。
口の中に薬草を入れても赤ちゃんは起きなかった。
それでも彼女は赤ちゃんを抱き続けた。
絶対に手放してはいけない大切なモノだった。
「なー、なー、なー」
と彼女が赤ちゃんに喋りかけた。
私のことを呼んで、と彼女が言っているみたいだった。
「なー、なー、なー」
だけど赤ちゃんは2度と喋らなかった。
赤ちゃんに喋りかけている彼女の映像を見て、俺はある事を思い出していた。
「ボクの名前は……ナナナ」
と彼女が俺に自己紹介したのだ。
映像を見る限りでは彼女に名前は与えられていなかった。
ナナナ。
ずっと妹に、そう呼ばれたかったんだろう。
「なー、なー、なー」
と起きない赤ちゃんに彼女はずっと喋りかけていた。
ナナナは母親が来ないことを悟った。
だから奴隷狩りがいる森から離れるために歩いた。
歩いた先に何があるかもわからなかった。
何日も何日も歩き続けた。
妹は腐り始めている。
彼女は薬草を見つけて妹に与え続けた。
どうやらナナナは匂いで薬草を探しているらしい。
葉っぱを食べ、虫を食べ、飢えをしのいだ。
夜になると木の上に登り、魔物から身を隠した。
そしてついに森を出た。
森を抜けた場所にあったのは、ゴミ山だった。
街から出たゴミが1つに集められた場所。発酵してガスも出ている。
悪臭が酷い。
だけど、そこに獣人が何十人も住んでいる。
獣人は痩せこけ、顔も汚れてドロドロで、ゴミ山から拾ったボロボロの服を着ていた。
彼女はゴミ山に住む獣人に喋りかけた。
だけど無視された。
無視されるとは思っていなかった。
誰に喋りかけても無視された。
彼女は歩きすぎていて、酷くお腹が空いていて、疲れていた。
ゴミ山にできた穴に彼女は入った。
遠くから獣人の喋り声が聞こえた。
「隣街の領主は獣人に優しいらしい」「アソコに行けば奴隷狩りには捕まらない」「でも隣街に行くまでに奴隷狩りに捕まるだろう」
ちゃんと彼女は、その会話を聞いていた。
ナナナは歩き疲れていたらしく、ゴミ山の穴の中で眠りに落ちた。
目覚めた時に妹がいないことに混乱した。
ずっと抱えていた妹がいなくなったのだ。
寝ている時に落としてしまったのかもしれない。そう思った彼女は穴の中を探した。
だけど妹の姿はなかった。
外から肉が焼ける臭いがした。
空腹だった。
妹を探すより、肉の臭いに釣られて穴を出た。
痩せこけた5人の男女の獣人が火を囲んで何かを焼いていた。
「ボクにも分けてほしい」
と彼女が言って彼等に近づいて行く。
だけど彼等が焼いているモノを見て、彼女は足を止めた。
妹だった。
彼女は息を止めて、火の中で焼かれる赤ちゃんの姿を見つめた。
「お父さん」とナナナは呟いた。
もう父親は奴隷狩りに捕まってしまっているかもしれない。
木々に隠れながら何者かが2人を追いかけて来ていた。
走って走って走って逃げているのに、どんどんと追い詰められて行く。
近くの木々が揺れていた。
「この子を連れて、神子は走って逃げなさい」
と母親は言って、赤ちゃんを渡した。
妹は楽しそうにニッコリと笑った。
「……お母さんは?」
「後で追いかけるから」
母親は赤ちゃんを落とさないように、抱っこ紐をナナナに強く結んだ。
「絶対に追いかけるから」
と母親が言う。
「早く行きなさい」
ナナナは走った。
お母さんを置いて走った。
走って走って走って走った。
後ろを振り返ると遠くの方で大量の鳥が飛び立っていた。
どれだけ走ったかわからないぐらいに彼女は走った。
気づいたら太陽は傾いていた。
「まー、まー、まー」
と妹が泣き叫んでいる。
自分では母乳をあげる事はできない。
母親を待つしかなかった。
木の上に登った。
母親が通り過ぎないように彼女は赤ちゃんを抱っこしながら、地面を眺めた。
何日間も過ぎた。
もう妹は泣かなくなった。
母乳は出ないけど何度かナナナは赤ちゃんにおっぱいを吸わせた。
今は疲れているのか妹は眠っていた。もう昨日から眠って目覚めなかった。
ナナナは木から降り、食べれる葉っぱや虫を食べた。調理されていない葉っぱや虫は口に合わなかったらしく、彼女は苦そうな顔をしていた。
それでも彼女は生きるために食べた。
母親は生きていてほしい、とナナナに願ったのだ。
それを彼女は叶えるために、美味しくない葉っぱや虫を食べた。
ナナナは母親が来ることを期待して、それから何日も動こうとしなかった。
草が揺れるたびに彼女は怯えた。
風が吹くたびに彼女は怯えた。
何かの匂いを嗅ぎ分けて彼女は怯えた。
そのたびに動かなくなった妹をギュッと抱きしめた。
妹の様子がおかしい事にナナナは気づいていた。
白い花の薬草を彼女は見つけ、それを石ですり潰して妹の口に入れた。
その花はナナナが俺に売ってくれた薬草である。
口の中に薬草を入れても赤ちゃんは起きなかった。
それでも彼女は赤ちゃんを抱き続けた。
絶対に手放してはいけない大切なモノだった。
「なー、なー、なー」
と彼女が赤ちゃんに喋りかけた。
私のことを呼んで、と彼女が言っているみたいだった。
「なー、なー、なー」
だけど赤ちゃんは2度と喋らなかった。
赤ちゃんに喋りかけている彼女の映像を見て、俺はある事を思い出していた。
「ボクの名前は……ナナナ」
と彼女が俺に自己紹介したのだ。
映像を見る限りでは彼女に名前は与えられていなかった。
ナナナ。
ずっと妹に、そう呼ばれたかったんだろう。
「なー、なー、なー」
と起きない赤ちゃんに彼女はずっと喋りかけていた。
ナナナは母親が来ないことを悟った。
だから奴隷狩りがいる森から離れるために歩いた。
歩いた先に何があるかもわからなかった。
何日も何日も歩き続けた。
妹は腐り始めている。
彼女は薬草を見つけて妹に与え続けた。
どうやらナナナは匂いで薬草を探しているらしい。
葉っぱを食べ、虫を食べ、飢えをしのいだ。
夜になると木の上に登り、魔物から身を隠した。
そしてついに森を出た。
森を抜けた場所にあったのは、ゴミ山だった。
街から出たゴミが1つに集められた場所。発酵してガスも出ている。
悪臭が酷い。
だけど、そこに獣人が何十人も住んでいる。
獣人は痩せこけ、顔も汚れてドロドロで、ゴミ山から拾ったボロボロの服を着ていた。
彼女はゴミ山に住む獣人に喋りかけた。
だけど無視された。
無視されるとは思っていなかった。
誰に喋りかけても無視された。
彼女は歩きすぎていて、酷くお腹が空いていて、疲れていた。
ゴミ山にできた穴に彼女は入った。
遠くから獣人の喋り声が聞こえた。
「隣街の領主は獣人に優しいらしい」「アソコに行けば奴隷狩りには捕まらない」「でも隣街に行くまでに奴隷狩りに捕まるだろう」
ちゃんと彼女は、その会話を聞いていた。
ナナナは歩き疲れていたらしく、ゴミ山の穴の中で眠りに落ちた。
目覚めた時に妹がいないことに混乱した。
ずっと抱えていた妹がいなくなったのだ。
寝ている時に落としてしまったのかもしれない。そう思った彼女は穴の中を探した。
だけど妹の姿はなかった。
外から肉が焼ける臭いがした。
空腹だった。
妹を探すより、肉の臭いに釣られて穴を出た。
痩せこけた5人の男女の獣人が火を囲んで何かを焼いていた。
「ボクにも分けてほしい」
と彼女が言って彼等に近づいて行く。
だけど彼等が焼いているモノを見て、彼女は足を止めた。
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