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4章 いつか勇者は英雄になる
第55話 お別れ
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これが別れということに気づいていたのは俺と美子さんだけだった。
子どもが親の元から旅立った時、もう2度と同じ家に住むことはない。
自分もそうだったし、妻だって同じである。
別れの前日の晩。
ネネちゃんは冒険が楽しみでウキウキしながら大きなリュックに荷物を入れていた。
大きくなった背中を俺は見つめた。
「冒険は長くて遠い」
と俺はネネちゃんの背中に声をかけた。
「知ってるよ」
とネネちゃんは後ろを振り向きもしないで返事をした。
ネネちゃんとは2度と会えない可能性もあるのだ。
その事に気づいているのは親だけだった。
「ネネちゃんに出会えてお父さんは幸せだった。ネネちゃんが傷つけばお父さんはネネちゃん以上に傷つく。ネネちゃんが悲しければお父さんはネネちゃん以上に悲しい。遠くて長い冒険で、その事は忘れないでほしい」
「何言ってるの、お父さん」
とネネちゃんが言って振り返ろうとしたので、顔を見せることが出来なくて、行きたくないトイレに俺は行った。
そしてお別れの日がやって来る。
ユキリンとクロスが家に迎えに来て、慌ててネネちゃんは靴を履いた。
「忘れ物はない?」と美子さんが尋ねた。
「ないよ」と素っ気なくネネちゃんが言う。
「団子は持った?」
「持ったよ」とネネちゃん。
「怪我や病気はしたらダメよ」
「もうお母さん、私には自動回復があるんだから、そんな事、気にしなくていいの」
「ユキさんやクロス君の言う事を聞くのよ」
「わかったわかった」とネネちゃんが言って玄関を出た。
俺達は、その後ろを追って玄関を出る。
「いってらっしゃい」と俺と美子さんが手を振った。
「いってきま~す」とネネちゃんが言って手を振る。
3人が去って行く。
いつまでも俺達はネネちゃんが行った後を見守り続けた。
ネネちゃんは一度も後ろを振り返らなかった。
ネネちゃんの姿が見えなくなっても、去った後も見守った。
『中本ネネが庇護下から外れました』
と機械的なような女性のような声が脳内から聞こえた。
「淳君、家に入りましょう」
と美子さんに言われて、家の中に入った。
今までと同じ家なのに、ひどく家が広く感じた。
ネネちゃんの机。
ネネちゃんの人形。
ネネちゃんの成長を確認するための柱の傷。
もう、この家にネネちゃんが住むことは無いかもしれない。
彼女は、この家から旅立ち、自分の人生を歩んで行ったのだ。
「団子を持って魔王を倒しに行くって、桃太郎みたいだな」と俺は呟いた。
呆然と家の広さを見つめていた美子さんが、ハッとなって「そうね」と呟いた。
子どもが親の元から旅立った時、もう2度と同じ家に住むことはない。
自分もそうだったし、妻だって同じである。
別れの前日の晩。
ネネちゃんは冒険が楽しみでウキウキしながら大きなリュックに荷物を入れていた。
大きくなった背中を俺は見つめた。
「冒険は長くて遠い」
と俺はネネちゃんの背中に声をかけた。
「知ってるよ」
とネネちゃんは後ろを振り向きもしないで返事をした。
ネネちゃんとは2度と会えない可能性もあるのだ。
その事に気づいているのは親だけだった。
「ネネちゃんに出会えてお父さんは幸せだった。ネネちゃんが傷つけばお父さんはネネちゃん以上に傷つく。ネネちゃんが悲しければお父さんはネネちゃん以上に悲しい。遠くて長い冒険で、その事は忘れないでほしい」
「何言ってるの、お父さん」
とネネちゃんが言って振り返ろうとしたので、顔を見せることが出来なくて、行きたくないトイレに俺は行った。
そしてお別れの日がやって来る。
ユキリンとクロスが家に迎えに来て、慌ててネネちゃんは靴を履いた。
「忘れ物はない?」と美子さんが尋ねた。
「ないよ」と素っ気なくネネちゃんが言う。
「団子は持った?」
「持ったよ」とネネちゃん。
「怪我や病気はしたらダメよ」
「もうお母さん、私には自動回復があるんだから、そんな事、気にしなくていいの」
「ユキさんやクロス君の言う事を聞くのよ」
「わかったわかった」とネネちゃんが言って玄関を出た。
俺達は、その後ろを追って玄関を出る。
「いってらっしゃい」と俺と美子さんが手を振った。
「いってきま~す」とネネちゃんが言って手を振る。
3人が去って行く。
いつまでも俺達はネネちゃんが行った後を見守り続けた。
ネネちゃんは一度も後ろを振り返らなかった。
ネネちゃんの姿が見えなくなっても、去った後も見守った。
『中本ネネが庇護下から外れました』
と機械的なような女性のような声が脳内から聞こえた。
「淳君、家に入りましょう」
と美子さんに言われて、家の中に入った。
今までと同じ家なのに、ひどく家が広く感じた。
ネネちゃんの机。
ネネちゃんの人形。
ネネちゃんの成長を確認するための柱の傷。
もう、この家にネネちゃんが住むことは無いかもしれない。
彼女は、この家から旅立ち、自分の人生を歩んで行ったのだ。
「団子を持って魔王を倒しに行くって、桃太郎みたいだな」と俺は呟いた。
呆然と家の広さを見つめていた美子さんが、ハッとなって「そうね」と呟いた。
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