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哀留と円の出会い編
しおりを挟む俺が高校1年生。
円が中学3年生。
それはとある日。
俺達は出会った。
哀留side
くっそ。
今日の俺はとてつもなく運が悪い。
寮に帰ろうとカバンを持って教室から出た瞬間、あの人に捕まった。
あの人って誰って?
愉快犯で弱みを握られたら最後、風紀委員長皆川東先輩にだよ!!!!!
なんで?
ねぇなんでぇ?!
教室から出た途端、ポンって肩叩かれたんだよ?
その瞬間、周りがザワついて「あ、コイツ終わったな」って顔されたんだよ?!
止めて!!!俺何もしてないよ??!
でも悲しいかな……誰も助けてくれなかった(そりゃそうだ。皆、我が身が大事)
肩を叩いてきた相手……風紀委員長を見たら、めっちゃいい顔をされた。
ねぇ、なんでそんなに無駄にイケメンな顔を余計に輝かせてんの?
何すんの?
え、やだぁ………
てか、風紀委員長とは最近何故か接触する事が多々あった。
それは、風紀委員長の餌食(遊び)になってる相手の現場を周りの野次馬と一緒になって見ていた時に、ふっと目があったり。
はたまた、廊下ですれ違うと挨拶されたり。
何故か俺の名前知ってた時は戦慄したけども。
後に友人に聞けば、「え、全校生徒の顔と名前覚えてるの?!こわ!!!!」って叫んだ記憶ある。
あとほら、蓮がやんちゃしてて風紀に目をつけられてるから。親友の俺も、一緒にセットに要注意人物にされてる時もあって(でも俺は何もしてないよ!!濡れ衣だ!!)
そんなこんながあって、めちゃくちゃ生徒の模範的な平凡で真面目な俺が、何故か。
何故か(大事なので2回言いました)、風紀委員長とちょっとした面識はあるんです。
本当に理不尽!!!!!
んで、そんな風紀委員長に肩ポンからの~ガシッと掴まれてんだけども。
あれ?これって逃げらんね?
とりあえず、イイ顔してる風紀委員長に声をかけてみる。
無言やめて。
「なんすか」
「ちょーっとお使い頼みたいんだけど、良いよな」
んんん、語尾にクエスチョンマークねーよ。
それ断れないやつやーーーん!!!!
「そして俺は今、自然豊かな草木に囲まれてます」
うん。どこやねん、ここ。
風紀委員長からの「お使い」。
何やらかされるんだとびくびくしてれば、本当にお使いだった。
「中等部の風紀委員長に、この資料渡してきて」
だって。
風紀委員長は愉快犯で、人が困ってるの・自分が楽しければそれでいいってゲスい性格してるけら、どんな無理難題言ってくんのかなーって思ってたから、本当にお使いやーん。
んで、封筒に入った資料を持たされて、高等部から隣の敷地にある中等部に来たわけなんだけども………
高等部の校舎から中等部の校舎への道のりは、ちょっとした森を通らないと行けないんだけども……
「んふふふ、迷ったなこれは!!!!!」
あはははははははは、迷っちまった!!!
ちゃんと道なりに来たんだよ?森って言っても、ちゃんと街道はあったんだよ?
なのに、あれれー?
いつの間にか校舎からは離れて、周りは新鮮な木々達。
わぁ、大自然☆
え、やだぁ、これって迷子?学園で迷子?
これは、まじでヤバい。
とにかく、困った時の蓮に連絡をしようと携帯を出す。
GPSで、俺の居場所探して迎えに来てもらおう!
恥?そんなもの俺にはない!!
そして、そもそも蓮が今日午後からサボらなければこんな事にはならなかった。
そうだよ。
蓮が帰りにも居たら一緒に寮に帰ってたし、風紀委員長にお使いも頼まれなかった(蓮に押し付けるから)
「責任もって迎えに来てもらおう!!!」
この時の俺は、大分テンションが高かった。
何故かって?
この年で迷子になって、テンションがおかしくなってたんだと思う。
小鳥さん、こんにちは。
蝶々さん、こんにちは。
そして、
「わぁぉ」
あははうふふと、携帯から蓮の名前を探しながらずんずんと突き進んだ先に見たのは、
5人の屍と、1人だけ立っている金髪だった。
「え、何これ殺人現場?」
おもわず思った事を口に出せば、その金髪は口から血の唾を吐き出しこちらを睨んできた。
「…殺してねぇーしぃ。何アンタ、こいつらの仲間ぁ?」
え、なにそれ濡れ衣!!
てか、大分緩い口調ですね!!
全くの無害で迷子の俺は、一旦携帯をポケットに閉まって、それを証明するように警戒している金髪に両手を上げながら近づいた。
「いえいえーただの迷子です!」
「……は?」
何言ってんだこいつ。
って顔だね!!!わかるよ!!
そして、頬を殴られてるのか顔に傷はあるけども、イケメンだなヲイ!!!
そして、制服を見ると中等部の制服だった。
倒れてる屍達もね。
えー、これってさぁ、
「喧嘩……だよな?」
しかも、1対5。
金髪くんの1人勝ち…みたいな?
「因みにこれって、どっちが悪いの?」
屍の1人に近づいて怪我の具合と、息をしているのか確認する。
うん、息してるね!!
良かった!
俺のその確認作業を怠そうに聞いて、
「そいつらが因縁付けてきたから、返り討ちにしただけだけどぉ」
なに?見ず知らずの相手を心配するなんて、なんてお優しいんだねぇ?
と、金髪イケメンに緩くバカにするように、逆に質問された。
それって嫌味?嫌味だよな?
てか、
「優しいってか……この現場見ちゃったんだから、死んでたらめんどくせーじゃんか」
それだけだよ。
そう言いながら金髪を見上げれば(俺よりも身長が高い!)、一瞬きょとんとした顔をされた。
お、その表情はなんだか幼いな。
とりあえず、この後風紀に行くし序にこの事も報告してやろうかー……と、考え。
大事なことを金髪イケメンに言わなければ。
「ときに金髪イケメンくん」
「…………えぇーそれって俺の事ぉ?ネーミングセンスないねぇ」
「うるせぇ、他に誰がいんだよ。そんなことより、君に聞きたいことがある………」
キリッとした真面目な表情で声をかけたからか、金髪イケメンくんの少しだけ緩んだ警戒がまた引き締まった。
警戒されても、別にいーけどさ。
とにかく、
「中等部の風紀室まで案内して!!!!!」
「………………………は?」
再びの、きょとん顔。
えへへへへへ、俺迷子なんだよね!!
こんな人気無い所での、貴重な案内人を逃がすわけがなかろう!!
「え、えぇー…?どぉいう事ぉ?」
「そのまんまだけども。高等部から中等部の風紀委員長に用事あるんだけど、迷ってさ」
「え、て事はアンタ高等部?」
「え、見ればわかんじゃん君の先輩だよ、後輩」
「……………………………………………………………………………………………………ちっさ」
「ヲイコラ、だいぶ溜めてからのそのセリフかよ。喧嘩売ってんのか?あぁ?買うぞ?」
なんだこの金髪は!!!
失敬だな!!!
と、まずはこの後輩の先輩への敬い方を教えるべきかー……と思案していたら、
「……っ、この岸沼ぁぁぁぁぁ!!!!!!」
屍の1人がゆらりと立ち上がり、金髪イケメンの背後……向かい合ってる俺の視線の先に見えた。
金髪イケメンは声に振り向くが、屍の手には鉄パイプが握られてて、それを振り下ろす瞬間ー………
「教育的指導ーーーー!!!!!!!」
「ぐはっ!!!!!」
その場には、
呻き声を上げて腹を押さえて、再び崩れ落ちる屍と。
右足を振り抜き、さも今蹴りつけました……という格好の俺と。
振り向いてガードしようとしていた手をそのままに、ぽかんとしている金髪イケメン。
そう!!屍が動くのが金髪イケメンには見えてなかったけど、俺には見えてたからね。
俺の黄金の右足が唸ったよ!!!ありがとう哀奈!!
(哀留は足技が得意です)
再び屍になった男から、鉄パイプを剥がして持っておく。
その辺に置いといて、また誰か起きて使ったら危ないからな!
俺が持っておく。
回収した鉄パイプを握りしめて、一応辺りの屍を確認。うん、起きる様子は……ないな。
でも、早くここを離れてこいつらも風紀に、早々に回収してもらった方がいいだろう……
また起きて攻撃してきたら面倒だし。
と、金髪イケメンにとりあえずここを離れるように話す。
ほらほら、いつまでもぽかんとしてないで、案内してくれよ!
「えっと……」
「えぇー…なにあれぇ」
「うっわぁ…」
と、一応案内してくれてる………よな?俺の先に歩くが、何やらさっきからブツブツと言ってる金髪イケメン。
ほらほら、きびきび歩けよー。
「……や、やったー!!!校舎!!中等部校舎ぁぁぁぁあ!!!!!」
少し歩くと、やっと森から抜けて建物が見えた!!
いやっふうー!!!
とりあえず、ここまで来れば後は大丈夫だろう。
え、風紀室まで案内してもらえよって?
それは、それが1番だけどさぁ………
案内人……に任命したい金髪イケメンを改めて見る。
うん。
流石に5人相手したからか、制服は汚れて、顔も口元に傷あるんだよねぇ……
これは見るからに「喧嘩やらかしました」って感じじゃん?
それを連れて風紀室に行ってご覧よ?
ここに来るまでに、結構時間かかったよ?
さらに時間食うよね?
寮に帰る時間遅くなるよね??!
って事で、
「案内ありがとう!あとは校舎内で誰か捕まえて、風紀室まで案内してもらうよ!」
と、金髪イケメンくんにここでお別れの挨拶をすれば、「え」って顔された。
なんかここまでの道のりで随分と表情豊かになったね?なんか、警戒心も無くなってね?
風紀室まで案内するつもりだったのか、なんか律儀だねー?と思いながら、さっきの理由を話せば、何故かつまらなそうな顔された。
なんで?
厄介事からむしろ守ってやってんだぞ?
俺はこれから風紀室に行って、さっきの屍達の報告もすんだぞ?当事者(金髪イケメン)居た方が面倒じゃんか。
「ここまでありがとな。早く寮に帰りな」
「…………」
と、さっさと寮に戻って傷の手当と着替えるように先輩風を吹かせて言ってるのに、何故か煮え切らないように立ち去らない。
そして、何か言いたそうにちらっちらっと俺を見る。
何?
じっと見つめ返すけども、じっと見つめ返されるばかり。
本当に何なの?
俺、本当に早く行かなきゃなんだけど………
これは俺が先に立ち去った方が良いなー……と、「じゃぁな」と言いかけて、気づく。
そうだ。
確かポケットに……と、ゴソゴソと漁ると、目的の物を指先で触った。
それを出してゴソゴソとしながら金髪イケメンに近づくと、「なぁに?」と小首を傾げるが逃げようとはしない様子に、なんでこの短時間で警戒心が解けたんだ?と、内心こちらも小首を傾げた。
そして、
「せっかくのイケメンが台無しだからな、後でちゃんと手当しろよ」
と、ぺたりと口元の血が出ている傷にー……絆創膏を貼ってやる。
ぺちり、と貼り付けて。
あとは、バイバイと手を振り立ち去る。
なんだかやり逃げ?貼り逃げのようになったが、別に良いだろう。
絆創膏を貼り付けた時の金髪イケメンの顔を思い出して、ほくそ笑む。
ちょっとくらい、イケメンに意趣返ししてもいいよな!
(それを金髪イケメンが気付くのはもう少し後)
その後、校舎で他の生徒を見つけて風紀室へと案内してもらい、無事に風紀委員長から預かった封筒は中等部の風紀委員長へと渡した。
その際に、鉄パイプも握りしめていたので、大分警戒と変な顔をされた。
ちょ、俺の装備品じゃないからな!!!
(風紀委員長ー!ちゃんと「お使い」してきましたよ!!)
(おー!サンキュ。で、何か面白い事はあったか?)
(風紀委員長に提供するほどの事は無かったですよ。あ…………、鉄パイプ持って行ったらドン引きされました)
(ヲイそれ面白いだろう。詳しく)
これが、俺と円の初めての出会い。
その後、俺が高2。
円が高1になるまで会うことは無かったんだけども、高校で再会した時には全力で飛びつかれて、懐かれた。
なぜにー?
哀留side end
◆円sideはpixivにて掲載してます
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