48 / 66
48話
しおりを挟む
「…………ん」
ふっと浮上する意識。
あれ?俺はー……
痛む頭を抑えながら、思い出すように目を開けると、
「哀留…??!」
そこには×××が居た。
「え、なんで……」
「哀留……!」
何でここに?!と、困惑する哀留に、×××は心底安堵したように息を吐き。
そのまま哀留に覆い被さるように、自らの腕の中に抱きしめた。
「良かった哀留…」
熱い吐息を哀留の耳に送り、もう二度と居なくならないようにと抱きしめる力を強める。
そんな様子の×××に、哀留も応えるようにおずおずと彼の背中に両手を回した。
そして、重なる熱い視線。
どちらからとも無く、2人の距離はゼロになっt「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっしょーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!」
身の危険を感じ、壮大な悲鳴を上げながら覚醒しました。
どうも、桐生哀留でっす!!!!
勢いよく起き上がりながらも、激痛の走る頭(後頭部)と頬に顔をしかめ布団の上へと帰還。
おぉ、いつの間にかベッドに寝てたよ。
イマイチ自分の今の状況に困惑しながらも、ふと横を見ればー………
「なによ、良いところだったのに………」
俺の双子の妹。
哀奈が椅子に座って居た。
「あ、哀奈ー…………」
久しぶりの再開と、これまた状況が掴めずに居たが。
奴の手にしているものに「カッ」と目が開いた。
「おっま…!!!またそれか!!!!!」
「なによ」
指摘する俺に、ムスッとした哀奈が手にしていたのは、よからぬ(BL)本。
どうやら身の危険を感じたのはそれが原因らしかった……
なんか、前にもこんなのあったな………(番外編より)
「魘されてたから、音読してあげてたのに(主人公を哀留の名前に変換して)ー…」
「お前が原因だよ(真顔」
「あーもう、バカ哀留のせいで喉渇いたー!飲み物買ってくるー!」
わざとらしくガタンと立ち上がり、頭をペシリと叩き(オイこら!!)哀奈はドスドスと部屋から出て行った。
「…………まじで、なんだアイツ」
ボー然とその後ろ姿を見送っていれば、シャッとカーテンが引き1人の人物が顔を出した。
「お前ら、本当相変わらずだなぁ」
クスクスと、綺麗に笑うソイツはー…
「!蜜埜!」
これまた久しぶりの再会だ。
我等が生徒会長であり、ただ今一身上の都合で入院中。
そして、哀奈の彼氏。
学園では淡々としながらも、俺様何様蜜埜様俺様に逆らう奴はどこのドイツでも許さねぇで通っていたがー……
それは仮の姿で。
学園での姿は哀奈に強要されて作り上げたもので(哀奈が王道会長が見たいが為に)、本当は哀奈に頭の上がらない普通に良い奴のヘタレ様だ。
だが、その姿はやはり整っていて。
肩に襟足が付くぐらいのさらさらな蜂蜜色の髪に。
哀奈に弄られたのだろうか、赤いピンで少し長めの前髪を分けられている。
そのために晒されているスッと冷えるような目元とその下に泣きぼくろ、少し厚めの唇。
蓮と同じくらいの体格だけども、見た目は蜜埜の方が柔い。
蓮やせっちゃんみたいなオラオラ・ワイルド系じゃなく、クール系の俺様?
でも、醸し出される色気(哀奈限定で可愛らしさ)
学園では、淡々としていて「孤高の王」と表現しても相応しいオーラを放ち、近寄りがたい・従わせるような雰囲気も持っていたが。
それは学園での演技なので、今は普通にただのイケメンだ。
「おー!蜜埜、久しぶり!体は大丈夫か?」
よっ!と、横になりながら手を上げて、下からでも耐えうる美形を見上げる。
チッ←
その俺の様子に呆れながらも、蜜埜は先ほど哀奈が座って居た椅子に座る。
「あー…体はなんとか、つーか……、
お前まで何やってんだよ」
呆れるような、怒るような。責めるような…
まぜこぜの声を出す蜜埜に、俺は視線を天井に移した。
蜜埜が言わんとしていることはわかる。
そして今更ながら、蜜埜と哀奈が居るということはー…
「ここ病院かー……」
あの時。
一瞬の出来事だったけども、瞬時に見えたのは…
生徒会達の制止を振り切りこっちに走ってきた小猿くん。
そして、小猿くんが俺を殴った所で。
蓮達の焦る顔と、その後の浮遊感と衝撃は、ステージから落ちたもの。
すりっと、頭と頬に手を走らす。
頬にはガーゼと、頭には包帯。
あ、後頭部にたんこぶ出来てらぁー…
あの時のことを思い出し状況確認をしていると、蜜埜に殴られた頬を撫でられた。
「ー…これ、アイツだろ?ったく、俺だけじゃ無くてお前までやられてんなよ」
目を細めて、悔しそうにするその様子に、
「わりぃ…」
申し訳なさでいっぱいになった。
この謝罪は、蜜埜に心配をかけたこととー…
哀奈に対してのものだった。
蜜埜だけじゃなく、俺まで怪我をして。
さらに、どちらも原因を作ったのは転入生。
しかも、俺はあのブラックアウトから、なんと丸2日も目覚めなかったらしくーー………
哀奈の心労は半端なかっただろう。
さっきは普通にしてたけどもー………
はぁ、マジで哀奈に悪いことをした……
哀留side end
蜜埜side
はぁと、ため息をついて悔やむように目元に腕を乗せた哀留。
おおかた、哀奈への謝罪を考えてんだろ…
その様子を見ながら、俺は2日前を思いだす。
その日は、いつも通りに哀奈が病室に来て。
いつも通りに話をしていた。
だが、途中から哀奈の様子がおかしくなったのを覚えてる。
「哀奈?どうした?」
「んー…?なーんか、変な感じがするのよねぇ…」
ソワソワする!といって、俺にぎゅうっと抱きついてきた哀奈を、 優しく抱き留める。
大丈夫か?と思いながらも、それ以上話してこない哀奈に俺もそれ以上聞かず、ゆっくりと彼女の背を撫でた。
その後も落ち着かない様子だったから、気分転換にでもと、2人で中庭に出る。
手を繋いでのんびりと。
……こういうの学園では出来ないから、マジでこの時間は大事だ…!!
俺が内心そう惚気ているとー…
その時だった。
哀奈の携帯が突然鳴ったのは。
「……え」
表示された、かけてきた相手の名を見たのだろう。
哀奈が驚いて居るのに気づく。
哀奈は、それに焦るように出て相手が喋る前に口を開いた。
「哀留に何かあったの??!!」
哀留?
アイツがどうかしたのか?
哀奈の双子の兄貴で、俺とは同じ学園。
学園内では他人としてるので直接的な接触は無いが、普通に電話やメールはしてる。
哀奈に似ていない、全くの平凡な容姿の奴を思いだす。
アイツとの初対面などはそのうち話すとしてー…
俺がこうなって、哀奈に転入生をどうにかしろと勅命を受けてなー…と、ぼんやりと思う。
てか、アイツになにができんだー…?
(蜜埜は、哀留が風紀委員長だとは知らない。
風紀と生徒会は仲が悪いので、皆川が隠してた。
哀奈は哀留に聞いてて知ってるけど、蜜埜に言ってない。)
意識をおもわず明後日の方に飛ばしていると、哀奈と繋いでいた手が震えていることに気付いた。
「…哀奈!?」
驚いて、いまだ震える手を握りしめる。
いつの間にか、顔面蒼白になっている哀奈と目線を合わせるように屈む。
その目には涙も溜まってきていて、一体何があった?!と焦る。
ッチ!!!
俺の手を掴んでいない手で持っている携帯を見れば、いまだ話し中で。
電話口で何か喋っているのが聞こえる。
そのままの哀奈を引き寄せて、片腕で彼女の体を抱きしめる。
そして、片手で哀奈の携帯を奪って、こうなった相手に怒りをぶつける。
こういうとき、演技で俺様役をやってて良かったと思う!
「…お前、俺の女に何言ってんだ…?覚悟は出来てんだろうな…!?」
『……だから哀留がー………って、哀奈?
………ん?』
「………………ん??」
はたりと、おもわず怒りも抑えて止まってしまった。
…………なんだ?
聞いたことある声だぞ?
それは相手も同じだったようで『……ん?』と、疑問の声が聞こえる。
そして。
ふと、携帯の画面を見れば、さっきは焦って気付かなかった……
表示された名前に驚く。
「奈月か…?!」
『??!
その声は、藤谷??!』
電話の相手が、俺と同じ生徒会の一員である奈月に驚く。
は?
何で奈月が、哀奈の携帯に…??!!
この2人の繋がりはー…?!
え、ちょ、浮気???!!!!??!
哀奈??!!!!(心の中で涙目)
俺が内心大慌てしていると(だがしかし!表情には出してないがなっ!!(ドヤァ))、焦る奈月の声がした。
『藤谷が何で哀奈の携帯に…?!
いや。それより、哀奈は??!』
「いや、哀奈はー…」
奈月の焦る声に腕の中にいる哀奈を見るが、涙をこらえているのか…震えをこらえているのかー……
ぎゅうぎゅうと俺を抱きしめる腕に力を入れていた。
「…悪い、話せる状況じゃ無い」
哀奈を抱え直し、そう伝えれば、
『………そうか。
藤谷が入院してるのは〇〇病院だったな?
実は、哀奈の双子の兄貴がーーーー……』
そう、
奈月に言われた瞬間。
遠くの方からサイレンの音が聞こえてきた。
近づくそれは救急車で、それは今俺達が居る病院の方に向かっているようでー…
『……哀留が、あの転入生に殴られて落とされた。
意識不明で、今そちらに向かっているー…』
「………はー…?」
何を言われたのか、一瞬理解できなくて。
哀留が、殴られた?
意識不明ー…?!
あの転入生がー……?
なぜ哀奈がこんなに震えているのか。
泣いているのか原因がわかってー……
哀留の最悪の現状も聞いてー……
「………っ!!!」
グッと、血が全身に湧き出る用な感覚になった。
これは、怒りだー…
救急車がけたたましい音と共に病院の敷地内に入ってきて、それにハッとするように頭を上げる哀奈。
どうやら奈月は救急車に同乗しているらしく、そこから身内である哀奈に電話をしたらしかった。
一端そこで奈月との通話を切り、哀奈に声を掛ける。
「哀奈、大丈夫か?」
両頬を挟むように手を添えて、俺に視線を向けさせる。
「奈月に聞いたなー…?
どうする……?」
それは、今到着した哀留の元に行くかどうか。
頭を打ってるらしいし、意識不明。
下手したら、どうなるかわからないー…
ショックを受けた哀奈をそんな哀留の元に連れて行って良いものか…
俺は判断できなかった。
だけど……
「………そんなのもちろん、哀留の元に行くに決まってるわ!」
「……ハッ。
さすが俺の哀奈だ…!」
先ほどまで震えていたのに。
泣いていたのに。
それを抑えて気丈にも立ち上がるその様子に、俺は哀奈への愛おしさを増した。
なぁ、オイ。
哀留。
哀奈をこんなにも悲しませて。
心配させて。
…まぁ。
俺が今回怪我したときも、泣かれたがー…
ここまではならなかった。
悔しいけども、哀奈の中じゃあ、やっぱりお前は特別なんだよ。
だから。
無事じゃなかったらー……
覚悟は出来てんだろうな?
…………ーと、まぁ。
ざっと、記憶をさかのぼったけども。
目覚めて、哀奈への謝罪をどうするかいまだに唸りながら考える哀留を目にして、
本当、無事で良かった。
心の底からそう思ったー…
蜜埜side end
next
ふっと浮上する意識。
あれ?俺はー……
痛む頭を抑えながら、思い出すように目を開けると、
「哀留…??!」
そこには×××が居た。
「え、なんで……」
「哀留……!」
何でここに?!と、困惑する哀留に、×××は心底安堵したように息を吐き。
そのまま哀留に覆い被さるように、自らの腕の中に抱きしめた。
「良かった哀留…」
熱い吐息を哀留の耳に送り、もう二度と居なくならないようにと抱きしめる力を強める。
そんな様子の×××に、哀留も応えるようにおずおずと彼の背中に両手を回した。
そして、重なる熱い視線。
どちらからとも無く、2人の距離はゼロになっt「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっしょーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!」
身の危険を感じ、壮大な悲鳴を上げながら覚醒しました。
どうも、桐生哀留でっす!!!!
勢いよく起き上がりながらも、激痛の走る頭(後頭部)と頬に顔をしかめ布団の上へと帰還。
おぉ、いつの間にかベッドに寝てたよ。
イマイチ自分の今の状況に困惑しながらも、ふと横を見ればー………
「なによ、良いところだったのに………」
俺の双子の妹。
哀奈が椅子に座って居た。
「あ、哀奈ー…………」
久しぶりの再開と、これまた状況が掴めずに居たが。
奴の手にしているものに「カッ」と目が開いた。
「おっま…!!!またそれか!!!!!」
「なによ」
指摘する俺に、ムスッとした哀奈が手にしていたのは、よからぬ(BL)本。
どうやら身の危険を感じたのはそれが原因らしかった……
なんか、前にもこんなのあったな………(番外編より)
「魘されてたから、音読してあげてたのに(主人公を哀留の名前に変換して)ー…」
「お前が原因だよ(真顔」
「あーもう、バカ哀留のせいで喉渇いたー!飲み物買ってくるー!」
わざとらしくガタンと立ち上がり、頭をペシリと叩き(オイこら!!)哀奈はドスドスと部屋から出て行った。
「…………まじで、なんだアイツ」
ボー然とその後ろ姿を見送っていれば、シャッとカーテンが引き1人の人物が顔を出した。
「お前ら、本当相変わらずだなぁ」
クスクスと、綺麗に笑うソイツはー…
「!蜜埜!」
これまた久しぶりの再会だ。
我等が生徒会長であり、ただ今一身上の都合で入院中。
そして、哀奈の彼氏。
学園では淡々としながらも、俺様何様蜜埜様俺様に逆らう奴はどこのドイツでも許さねぇで通っていたがー……
それは仮の姿で。
学園での姿は哀奈に強要されて作り上げたもので(哀奈が王道会長が見たいが為に)、本当は哀奈に頭の上がらない普通に良い奴のヘタレ様だ。
だが、その姿はやはり整っていて。
肩に襟足が付くぐらいのさらさらな蜂蜜色の髪に。
哀奈に弄られたのだろうか、赤いピンで少し長めの前髪を分けられている。
そのために晒されているスッと冷えるような目元とその下に泣きぼくろ、少し厚めの唇。
蓮と同じくらいの体格だけども、見た目は蜜埜の方が柔い。
蓮やせっちゃんみたいなオラオラ・ワイルド系じゃなく、クール系の俺様?
でも、醸し出される色気(哀奈限定で可愛らしさ)
学園では、淡々としていて「孤高の王」と表現しても相応しいオーラを放ち、近寄りがたい・従わせるような雰囲気も持っていたが。
それは学園での演技なので、今は普通にただのイケメンだ。
「おー!蜜埜、久しぶり!体は大丈夫か?」
よっ!と、横になりながら手を上げて、下からでも耐えうる美形を見上げる。
チッ←
その俺の様子に呆れながらも、蜜埜は先ほど哀奈が座って居た椅子に座る。
「あー…体はなんとか、つーか……、
お前まで何やってんだよ」
呆れるような、怒るような。責めるような…
まぜこぜの声を出す蜜埜に、俺は視線を天井に移した。
蜜埜が言わんとしていることはわかる。
そして今更ながら、蜜埜と哀奈が居るということはー…
「ここ病院かー……」
あの時。
一瞬の出来事だったけども、瞬時に見えたのは…
生徒会達の制止を振り切りこっちに走ってきた小猿くん。
そして、小猿くんが俺を殴った所で。
蓮達の焦る顔と、その後の浮遊感と衝撃は、ステージから落ちたもの。
すりっと、頭と頬に手を走らす。
頬にはガーゼと、頭には包帯。
あ、後頭部にたんこぶ出来てらぁー…
あの時のことを思い出し状況確認をしていると、蜜埜に殴られた頬を撫でられた。
「ー…これ、アイツだろ?ったく、俺だけじゃ無くてお前までやられてんなよ」
目を細めて、悔しそうにするその様子に、
「わりぃ…」
申し訳なさでいっぱいになった。
この謝罪は、蜜埜に心配をかけたこととー…
哀奈に対してのものだった。
蜜埜だけじゃなく、俺まで怪我をして。
さらに、どちらも原因を作ったのは転入生。
しかも、俺はあのブラックアウトから、なんと丸2日も目覚めなかったらしくーー………
哀奈の心労は半端なかっただろう。
さっきは普通にしてたけどもー………
はぁ、マジで哀奈に悪いことをした……
哀留side end
蜜埜side
はぁと、ため息をついて悔やむように目元に腕を乗せた哀留。
おおかた、哀奈への謝罪を考えてんだろ…
その様子を見ながら、俺は2日前を思いだす。
その日は、いつも通りに哀奈が病室に来て。
いつも通りに話をしていた。
だが、途中から哀奈の様子がおかしくなったのを覚えてる。
「哀奈?どうした?」
「んー…?なーんか、変な感じがするのよねぇ…」
ソワソワする!といって、俺にぎゅうっと抱きついてきた哀奈を、 優しく抱き留める。
大丈夫か?と思いながらも、それ以上話してこない哀奈に俺もそれ以上聞かず、ゆっくりと彼女の背を撫でた。
その後も落ち着かない様子だったから、気分転換にでもと、2人で中庭に出る。
手を繋いでのんびりと。
……こういうの学園では出来ないから、マジでこの時間は大事だ…!!
俺が内心そう惚気ているとー…
その時だった。
哀奈の携帯が突然鳴ったのは。
「……え」
表示された、かけてきた相手の名を見たのだろう。
哀奈が驚いて居るのに気づく。
哀奈は、それに焦るように出て相手が喋る前に口を開いた。
「哀留に何かあったの??!!」
哀留?
アイツがどうかしたのか?
哀奈の双子の兄貴で、俺とは同じ学園。
学園内では他人としてるので直接的な接触は無いが、普通に電話やメールはしてる。
哀奈に似ていない、全くの平凡な容姿の奴を思いだす。
アイツとの初対面などはそのうち話すとしてー…
俺がこうなって、哀奈に転入生をどうにかしろと勅命を受けてなー…と、ぼんやりと思う。
てか、アイツになにができんだー…?
(蜜埜は、哀留が風紀委員長だとは知らない。
風紀と生徒会は仲が悪いので、皆川が隠してた。
哀奈は哀留に聞いてて知ってるけど、蜜埜に言ってない。)
意識をおもわず明後日の方に飛ばしていると、哀奈と繋いでいた手が震えていることに気付いた。
「…哀奈!?」
驚いて、いまだ震える手を握りしめる。
いつの間にか、顔面蒼白になっている哀奈と目線を合わせるように屈む。
その目には涙も溜まってきていて、一体何があった?!と焦る。
ッチ!!!
俺の手を掴んでいない手で持っている携帯を見れば、いまだ話し中で。
電話口で何か喋っているのが聞こえる。
そのままの哀奈を引き寄せて、片腕で彼女の体を抱きしめる。
そして、片手で哀奈の携帯を奪って、こうなった相手に怒りをぶつける。
こういうとき、演技で俺様役をやってて良かったと思う!
「…お前、俺の女に何言ってんだ…?覚悟は出来てんだろうな…!?」
『……だから哀留がー………って、哀奈?
………ん?』
「………………ん??」
はたりと、おもわず怒りも抑えて止まってしまった。
…………なんだ?
聞いたことある声だぞ?
それは相手も同じだったようで『……ん?』と、疑問の声が聞こえる。
そして。
ふと、携帯の画面を見れば、さっきは焦って気付かなかった……
表示された名前に驚く。
「奈月か…?!」
『??!
その声は、藤谷??!』
電話の相手が、俺と同じ生徒会の一員である奈月に驚く。
は?
何で奈月が、哀奈の携帯に…??!!
この2人の繋がりはー…?!
え、ちょ、浮気???!!!!??!
哀奈??!!!!(心の中で涙目)
俺が内心大慌てしていると(だがしかし!表情には出してないがなっ!!(ドヤァ))、焦る奈月の声がした。
『藤谷が何で哀奈の携帯に…?!
いや。それより、哀奈は??!』
「いや、哀奈はー…」
奈月の焦る声に腕の中にいる哀奈を見るが、涙をこらえているのか…震えをこらえているのかー……
ぎゅうぎゅうと俺を抱きしめる腕に力を入れていた。
「…悪い、話せる状況じゃ無い」
哀奈を抱え直し、そう伝えれば、
『………そうか。
藤谷が入院してるのは〇〇病院だったな?
実は、哀奈の双子の兄貴がーーーー……』
そう、
奈月に言われた瞬間。
遠くの方からサイレンの音が聞こえてきた。
近づくそれは救急車で、それは今俺達が居る病院の方に向かっているようでー…
『……哀留が、あの転入生に殴られて落とされた。
意識不明で、今そちらに向かっているー…』
「………はー…?」
何を言われたのか、一瞬理解できなくて。
哀留が、殴られた?
意識不明ー…?!
あの転入生がー……?
なぜ哀奈がこんなに震えているのか。
泣いているのか原因がわかってー……
哀留の最悪の現状も聞いてー……
「………っ!!!」
グッと、血が全身に湧き出る用な感覚になった。
これは、怒りだー…
救急車がけたたましい音と共に病院の敷地内に入ってきて、それにハッとするように頭を上げる哀奈。
どうやら奈月は救急車に同乗しているらしく、そこから身内である哀奈に電話をしたらしかった。
一端そこで奈月との通話を切り、哀奈に声を掛ける。
「哀奈、大丈夫か?」
両頬を挟むように手を添えて、俺に視線を向けさせる。
「奈月に聞いたなー…?
どうする……?」
それは、今到着した哀留の元に行くかどうか。
頭を打ってるらしいし、意識不明。
下手したら、どうなるかわからないー…
ショックを受けた哀奈をそんな哀留の元に連れて行って良いものか…
俺は判断できなかった。
だけど……
「………そんなのもちろん、哀留の元に行くに決まってるわ!」
「……ハッ。
さすが俺の哀奈だ…!」
先ほどまで震えていたのに。
泣いていたのに。
それを抑えて気丈にも立ち上がるその様子に、俺は哀奈への愛おしさを増した。
なぁ、オイ。
哀留。
哀奈をこんなにも悲しませて。
心配させて。
…まぁ。
俺が今回怪我したときも、泣かれたがー…
ここまではならなかった。
悔しいけども、哀奈の中じゃあ、やっぱりお前は特別なんだよ。
だから。
無事じゃなかったらー……
覚悟は出来てんだろうな?
…………ーと、まぁ。
ざっと、記憶をさかのぼったけども。
目覚めて、哀奈への謝罪をどうするかいまだに唸りながら考える哀留を目にして、
本当、無事で良かった。
心の底からそう思ったー…
蜜埜side end
next
14
お気に入りに追加
728
あなたにおすすめの小説
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
過保護な不良に狙われた俺
ぽぽ
BL
強面不良×平凡
異能力者が集まる学園に通う平凡な俺が何故か校内一悪評高い獄堂啓吾に呼び出され「付き合え」と壁ドンされた。
頼む、俺に拒否権を下さい!!
━━━━━━━━━━━━━━━
王道学園に近い世界観です。
ちょろぽよくんはお友達が欲しい
日月ゆの
BL
ふわふわ栗毛色の髪にどんぐりお目々に小さいお鼻と小さいお口。
おまけに性格は皆が心配になるほどぽよぽよしている。
詩音くん。
「えっ?僕とお友達になってくれるのぉ?」
「えへっ!うれしいっ!」
『黒もじゃアフロに瓶底メガネ』と明らかなアンチ系転入生と隣の席になったちょろぽよくんのお友達いっぱいつくりたい高校生活はどうなる?!
「いや……、俺はちょろくねぇよ?ケツの穴なんか掘らせる訳ないだろ。こんなくそガキ共によ!」
表紙はPicrewの「こあくまめーかー😈2nd」で作成しました。
風紀“副”委員長はギリギリモブです
柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。
俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。
そう、“副”だ。あくまでも“副”。
だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに!
BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。
王道学園なのに会長だけなんか違くない?
ばなな
BL
※更新遅め
この学園。柵野下学園の生徒会はよくある王道的なも
のだった。
…だが会長は違ったーー
この作品は王道の俺様会長では無い面倒くさがりな主人公とその周りの話です。
ちなみに会長総受け…になる予定?です。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
ボクに構わないで
睡蓮
BL
病み気味の美少年、水無月真白は伯父が運営している全寮制の男子校に転入した。
あまり目立ちたくないという気持ちとは裏腹に、どんどん問題に巻き込まれてしまう。
でも、楽しかった。今までにないほどに…
あいつが来るまでは…
--------------------------------------------------------------------------------------
1個目と同じく非王道学園ものです。
初心者なので結構おかしくなってしまうと思いますが…暖かく見守ってくれると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる