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6話
しおりを挟むどうも。
前回、書類の雪崩を起こした桐生 哀留です。
「てへ☆」と、コツンと頭を叩く真似をしながらお茶目に皆を見たら、約2名から全力でファイルを投げつけられた、桐生 哀留です。
避けたらガラスにあたり。ものの見事に割れて、その始末書を床に正座しながら書き上げた、風紀委員長の桐生 哀留です。
ふーーー………
人生いろいろさ!
さて。
どうにかこうにか、書類を退治しました!
あの後、暴君2人に土下座をして書類整理を手伝ってもらい、計6人でやりとげました!
俺も、判子をペッタンペッタン無心で押し続けました!!
おかげで腕いたい…
んで、翌日。
若干筋肉痛になりながらも、元気に登校です!教室に入り、いつも通りに窓際に近い自分の席に座る。
うむ。いつもと変わらない周りの空気が清々しい!
ザンバラ髪で暗い印象を与えていた髪を、オシャレヘアー(といっても普通)に変えたというのに、誰1人として俺に興味を示さない、この空気!!
うむ!!
流石、俺!!!!!
……………あれ?
目から汗が?
やば、前が見えないよパトラッシュ。
俺の素敵な存在感の無さに、ズズッと鼻をすすっていると…ザワッと周りが色めき立った。
なんだ?と目を向けると、そこには黒髪眼鏡の美人さんが居ました。
そう。
なにを隠そう、そこに居たのはたった今登校してきた、カナたんでしたっ☆
同じクラスって言ってたけど、マジだったんだな~。あ。
目があった。
カナたんの目が、「あ、本当に同じクラスだった」と言わんばかりに驚くように見開かれたのを確認し、俺は携帯を取り出した。
本当は、ここで大声で名前を面白おかしく呼んでやりたい所だがー……
自分を制した。
この学園では顔よし家柄よしの人気者達には、親衛隊と言うファンの集まりが出来る。
あ、ここは男子校なので、もちろん皆男ね。
んで。親衛隊とはいえその内部や行動はそれぞれだが、自分達が崇拝する人に対して盲目的な執着を見せている。
即ち、その崇拝対象者に不用意に近づく…または迷惑・危害を加えるものなら、親衛隊のターゲットにされ制裁をされてしまうのだ。
………で。なぜいきなり親衛隊の説明をしたかというと、皆さん思い出してください。
カナたん、美人さんなんです。
知的・クール美人って感じ。
こんな美人さんに、親衛隊が居ないわけがないんですよ!
因みに、昨日本人に「そういや、親衛隊とかっていんの?」と、軽く聞いたら。
「ええ、いますよ。忠実な信者達が」と良い笑みを返されました。
………信者?
え、彼方教?
詳しく聞かなかった俺は偉いと思います。
あ、他に蓮・円・ひぃりん・せっちゃんにも親衛隊が居るらしい。
クッソ。
イケメン共がっ…
来世は平凡に生まれ変われば良いと思います。
てなわけで、人畜無害な平凡な俺が、いきなりカナたんに馴れ馴れしく話しかけた日にゃあ、体育館裏に連れて行かれてボッコボコよぉ☆風紀委員長が親衛隊に制裁される…?
って話になるが、風紀委員長って立場は全校生徒にはもうしばらくは伏せておきたいんだ。
とりあえず今は様子見で情報集めている状態だし、俺の諸事情により「風紀委員長」ってのを今週くらいは隠しておきたいんです。
てなわけで、公にカナたんに接触できない俺はメールをポチポチ。
よし。
完璧!
送信っと。
彼方side
教室に入ったら、いつものように周りからの熱い視線や声がかけられた。
それらを適当にあしらっていると、黒い瞳とバチリと視線が合った。
が、それだけで。あちらからも此方からも、何のリアクションも示さない。
昨日親衛隊について話したから、表向きには接触を持たないことにしたのだ。風紀委員長として表に出れば良いのだが、なにやら本人はまだ公にはしたくないらしい。
俺は彼から視線を外し、止めていた足を自分の席へと進めた。
彼は窓際の後ろの席。俺は廊下に近い席。
鞄の中から読みかけの本を取り出し、鞄を机の横にかけて椅子に座る。
本を読む素振りをしながら、チラリと視線だけを彼に向ける。
昨日、遂に姿を現した風紀委員長。
桐生 哀留(キリュウ アイル)
大勢の中にいれば埋もれてしまうだろう顔の造形と、黒髪黒目。
普通。平凡。
昨日言っていたが、本当に同じクラスだったのかー…と、こうして姿を見て、改めて驚きが隠せない。
俺達風紀委員は、一度選ばれればよほどのことがない限り、任期までやらなければならない。今の風紀は、その任期を引き続き続けている者や、前委員長に指名された者の集まりだ。
かく言う俺は、1年から風紀をしている。
そして現副委員長以外、今の委員長を知るものは居なかった。
だが、あの曲者である前委員長だった皆川さんが直々に指名し、あっさりと席を譲った相手に…俺達風紀委員達は憧れを抱いていた。
皆川さんは、本当に人の上手を行く人で異脱していて手に負えない人だったが、風紀委員長としての能力は高かった。
そんな皆川さんと1年一緒に居たから、彼が後を任せても良いと選んだ委員長に、少なからず俺も興味と憧れを抱いていた。
そして、本当にたまにだったが…
委員長からの指示として、副委員長を介して伝えられた的確な指示に、皆一様にまだ見ぬ委員長に敬意を示していた。が。
その委員長が、あれだとは…。
正直言って、第一印象は幻滅した。
見た目で判断する訳ではないが、本当に普通すぎるんだ。
だが、あの副委員長と1年の岸沼の態度を見て、その考えは消えた。
副委員長の水沢。
彼も皆川さんにいきなり副委員長に指名されながらも、委員長不在の状態で的確な指示とリーダーシップをとり、風紀を纏め上げてきた実力と存在は誰もが認めるものだ。
そして、その補佐となっている岸沼。
派手な金髪でタレ目。緩いしゃべり方と雰囲気を持っているが、奴は中学まで要注意人物として風紀のブラックリストに乗っていた。沸点が低いのか高いのかわからないが、キレるのが気まぐれ。
そして一旦キレると冷酷なまでに相手をいたぶる。が、何故か中学3年のいつ頃からかキレるのが減り、風紀にも自らが志願したらしい。
昨日の様子を見れば、岸沼も委員長が誰なのか知っていたんだろう。
そんな周りに一目おかれている2人が、桐生に対してのあの態度…
他人に興味も示さない2人からの、あの特別扱いは………黒髪平凡がただの平凡ではないという、証拠だろう。
更に皆川さんからの指名。
これは、認めざる負えない事実だ。
……………まぁ、桐生と話してみて分かったが、見た目は平凡だが、中身は…外見を裏切っていた。
桐生は、皆川さんに似ている。
皆川さんは意図的だったが、自分が与える影響の先や結果も見据えていた。
桐生は無計画で奔放的に周りを翻弄する。皆川さんよりもタチが悪い気がするのは、俺だけだろうか……?
少し遠い目をしていると、ブルブルっと携帯が震えた。
このバイブ音は、メールか?
ブレザーのポケットから携帯を取り出し、メールを見る。
―――――――――
FROM: 委員長
―――――――――
カナたん、オハヨー^^
今日も素敵な眼鏡だね!
つーか、マジ同じクラスだし(笑)
カナたんが俺に気づかなかったのはしょうがないとして、俺もカナたんに気づかなかった(笑)
俺のスルースキル、どんだけ(笑)
カナたんも存在感薄いのかなっ☆
…あ、ごめん。嫌みじゃないよ(>_<;;
朝から人気者で、「良いご身分だなヲイ」とか思ってないからね!
「カナたん」って、可愛い渾名が呼べないのが凄く残念なだけだから!だから、これからは風紀の中で沢山よぶからね^^
それじゃあ、放課後に風紀室にて!
――――――――――――
「……………………」
カチカチ
【削除しますか】
【はい】←
【いいえ】
カチッ
【削除しました】
……【はい】を迷わず選んだ俺は、正しいと思う。
これからの委員会の行方に、頭痛を感じたのは―……しょうがないと思う。
彼方side end
哀留side
メール送信後、いつものようにぼぅっと外を見ていたら、なにやらカナたんを見たクラスメートが、「あぁ睦月様!!憂いを帯びたお姿が美しい!!」と、なにやら騒いでいた。
「憂い?」
気になってチラリと見ると、カナたんがこめかみを押さえて、ふぅっと艶やかなため息をついていた。……頭痛か?
その頭痛の原因が俺だなんて、知るはずがない。
……………
そして、あれよあれよと時間がすぎ。
はい!
あっという間にお昼になりました。
お腹ぺっこぺこです。
え、話が飛びすぎ?
いや、授業中の話なんぞなんもないっすよ。面白みもないっすよ。
………
てなわけで、お昼です。
友達も居ない影の薄い俺は、お昼も1人寂しく食べ―……てはなかったり!
いくら俺でも、昼を共にする相手くらい居ますよ!!
…………でも、今日はその相手から「昼一緒出来ない」って連絡があったから、今日は1人で昼飯食うけど。
あ、因みに蓮や円じゃないよ。
で、いつもは弁当を自分の分と相手の分を作って一緒に食べるんだけど……あ。
実は俺、こう見えて料理出来るんです。
この学園に入る前に、
「哀留は平凡なんだから、せめて料理くらい作れなきゃね!」と、双子の妹に言われ叩きこまれたのだ。
哀奈が、何故俺に料理をするように仕向けたのかは………気にしたら負けな気がするので、気にしなかったが。
まぁ…そのおかげで料理の腕は上達したし、作る楽しさも知った。
だから、いつも食事は自炊。
今日みたいに、1人で昼飯を食うときも弁当を作ってくるんだけど、昨日色々あったせいで今朝は弁当を作る気力がなかった。
となると、食堂を利用するしかない。
購買って選択もあるが、どうせならたまには、自分で作る以外の飯も食いたくなるわけで。
今まで食堂は、平穏に過ごす上で避けるべき場所だったが(哀奈に、王道的な食堂イベントを聞いた)これからは、平穏に過ごせる気がしないので…今日くらい食堂に行っても、いっかなぁ~って。
そうと決まれば、いざ食堂へ!
が。
この選択が間違いだったと、俺は後に後悔する事になる。
もう遅いけどな!←やけくそ
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