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4.行政大学校イベント編
19 .閑話:第三王女専属魔法師の回想
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「う、う,,,,,,,,」
喉の渇きと全身の痛みで目が覚めた。
私、死んじゃったはずだから、ここが死後の世界なのかしら?
あれ?でも、死後の世界なのに、白い布の簡易テントのように見えるわね。
全身がとにかく痛い。同時に身体中を温かい魔素でやさしく撫でられたような感覚がうっすらと残っていて不思議な感覚だった。
「う、う,,,,,,,,」
とにかくひどい痛みだわ。こんなに痛みを感じるということは、ひょっとしたら、死んだわけではないのかしら?と痛みに耐えながら楽天的に考えはじめた。
少し朦朧としていたけど、右腕と右足の激しい鈍痛により、意識がはっきりしてくる。
右腕、右足ともに添え木と一緒に固い布でぐるぐる巻きにされている。たぶん骨が折れてしまったところ、回復魔法で途中まで治療してくれているようだと理解した。
「シルフェさん、よかった!!気が付いたようね」
テントの入り口から見覚えのあるシルエットが入ってきた。聞き覚えのある声だったけど、すぐには思い出せない。まだ頭が働いていないのかな?必死にシルエットと声の主を思い出す。
そうだ!
この方は、第二王女キャリソン・フランド殿下の直臣の家臣の一人で、魔法大学校の3期上のメリッサ・ランドさんだ!と思い出した。
「メ、メリッサさん?ここは?」
なんとか声に出してみるが、ガラガラの声で伝わったかわからない。メリッサさんは質問に答えてくれる代わりに、横になっている頭を支えてくれ、水を飲ませてくれた。水の冷たさで徐々に頭にかかっていた靄のようなものも晴れてきた。
「野戦の簡易病院よ。あなたは、大けがを負いながらもアリア殿下を守り切ったのよ。あの大惨事の中、立派だったわね。魔獣狩りの会場からここに収容されてから、丸2日間意識を失っていたのよ。覚えているかしら?」
メリッサさんが話してくれた内容では、大型の狼型の魔獣が突如出現し、魔獣狩りに参加した師団は大混乱に陥った。特に最前線の私たちがいた、第三王女殿下の指揮下の備隊は全滅したとのことだ。
まだ混乱しているけど、少しずつ思い出してきた。そこでアリア殿下ともども異国の全身鎧の男たちに襲撃を受けたのだ。
メリッサさんによると、大型の狼型の魔獣が姿を急に消し、その後、しばらくしてから、信号弾と思しき光が山林の中で数回上がり、第二王女殿下の部隊に知らせが届いた。救援要請の合図と判断し、第二王女殿下が急ぎ、救援隊を組織し向かわせた。
救援信号の発した地点では、アリア殿下と私が強力な魔法結界に護られていたところを発見された、ということだった。
保護された後、アリア殿下が経緯と状況を第二王女殿下へ説明されたとのことだ。魔法結界は、私が残存魔素のほとんどを使って発動し、身を挺してアリア殿下を護ったということになっていた。そして、私の同僚の第三王女の護衛騎士ペドロ・リーアは正体不明の襲撃者に顔面を強打され殉職したとのことだった。
メリッサさんの話を聞ききながら、自分の記憶と途中違っていると思ったが、疲労と痛みで声にならない。メリッサさんは、アリア殿下が私のことを甚く心配されていたため、意識が戻ったことを伝えることと、私にもう少し眠るように言い、テントを後にした。
私は、横になりながら、自分の記憶をもう一度はじめから辿る。
魔獣狩りがはじまり、しばらくして、狼型の強大な魔獣が突如現れた。おそらくあんな凶悪な魔素を発する魔獣なんて人為的に召喚しない限り、急にこの近辺に現れるはずがない。その後、備隊がなすすべもなく魔獣に蹂躙され、やむを得ずアリア殿下をペドロさんと護衛しながら、師団長または第二王女殿下の部隊のところまで後退させようとした。
でも、正体不明の全身鎧の男たちに阻まれ、退路を断たれた。追い詰められることはわかっていたけど、味方と反対側の方角で孤立するとわかっていたけど、とにかく北西へ逃げるしかなかった。
殿下を護りながら必死に逃走したが、四方を囲まれた。
致し方なく、反転し三人で、南から迫ってきた正体不明の二名に逆に奇襲を仕掛けることで窮地を脱する作戦を立てた。3人 vs 2人。数の優位で押し切ろうとしてだ。
全身鎧の大男と軽鎧ローブ姿のレイピアを装備した小男は予想以上の力量で、アリア殿下、ペドロさんと三人がかりでも全く歯が立たなかった。
小男のレイピアによって、ペドロさんは足を貫かれ動きを封じられた。とどめは、大男の丸太のような棍棒様のモーニングスターの重厚な一撃で、ペドロさんは、無惨にも顔面と頭部をつぶされ、絶命した。
私は、水魔法「ウォーターシールド」で、モーニングスターの攻撃を防ごうとするも、魔法の盾ごと粉砕され右腕を潰された。それでも、殿下だけでも逃がそうと応戦するも、軽鎧の男にケリ倒され、全身を何度も何度も金属性の具足で踏みつけられた。その際、右足を折られ、肋骨、胸、肩などの骨を具足でへし折られた。
激しい痛みで、一瞬意識を失ったが、這いずりながら身体を起こし、なんとか片足で立ち上がり、左手の水魔法で、近くにいた大男にとにかく攻撃した。命を懸けて、少しでも殿下の逃走の時間を稼ごうとした。でも、あっけなく魔法はすべて防がれて、頼みの綱の左手もモーニングスターで潰され経絡を全て塞がれた。
私の最後は、ペドロさん同様に、重厚な一撃を顔面で受け、吹き飛ばれ、そのまま絶命した,,,,,,,,はずだった。
今は,,,,,,確かに、右腕と右足は骨折しているようで力がはいらないけど、顔はつぶれてもないし、左手で顔を触った感触でも、傷ひとつないのようだ。それと、右腕、右足以外、肋骨をはじめ、肩、胸からお腹にかけて痛いところはない。
私、頭を打ち付けて、記憶が混濁しているのかしら?
それに発見された時の強力な結界っていったい?
「う、うぐ,,,,,,,,」
私は、痛みを我慢して、上半身だけ起こした。
え?え?こんなことって!!
その時に、私は、自分の魔素の性質が少し変わっていることに気が付いた。
骨折している右腕と右足へ、自分の魔素から、ほんの少しだけど治癒効果を付与し続けている。魔素の性質は魂に刻印されているため、生来、変わらないはず。いや、変えられないはず。
こんなことが起こるなんて!!
私は、自分の魔素に治癒の効果が生じたという信じられない奇跡を目撃して、すぐに、1年程前に内偵先で知り合った5歳年下の少年顔を思い浮かべた。
きっとあの不思議な少年は、今も世の中を達観した表情をしているのだろうな、と想像する。
そして、私とアリア様がまだ生きていられて、この場に保護されている理由に思い至った。
「アルフ君。また私のこと助けてくれたのね。殿下の命を護ってくれて、本当にありがとう」
とその少年に心の底からお礼を言う。
なぜか自然と涙があふれ止まらない。
私は、それから3日間静養していたが、突如訳もわからず、王都の警備部の兵士らに法務局まで連行され取り調べを受けた。
取り調べの際、私の言い分も聞いてもらえず、そのまま悪臭を放つ地下牢に投獄された。
喉の渇きと全身の痛みで目が覚めた。
私、死んじゃったはずだから、ここが死後の世界なのかしら?
あれ?でも、死後の世界なのに、白い布の簡易テントのように見えるわね。
全身がとにかく痛い。同時に身体中を温かい魔素でやさしく撫でられたような感覚がうっすらと残っていて不思議な感覚だった。
「う、う,,,,,,,,」
とにかくひどい痛みだわ。こんなに痛みを感じるということは、ひょっとしたら、死んだわけではないのかしら?と痛みに耐えながら楽天的に考えはじめた。
少し朦朧としていたけど、右腕と右足の激しい鈍痛により、意識がはっきりしてくる。
右腕、右足ともに添え木と一緒に固い布でぐるぐる巻きにされている。たぶん骨が折れてしまったところ、回復魔法で途中まで治療してくれているようだと理解した。
「シルフェさん、よかった!!気が付いたようね」
テントの入り口から見覚えのあるシルエットが入ってきた。聞き覚えのある声だったけど、すぐには思い出せない。まだ頭が働いていないのかな?必死にシルエットと声の主を思い出す。
そうだ!
この方は、第二王女キャリソン・フランド殿下の直臣の家臣の一人で、魔法大学校の3期上のメリッサ・ランドさんだ!と思い出した。
「メ、メリッサさん?ここは?」
なんとか声に出してみるが、ガラガラの声で伝わったかわからない。メリッサさんは質問に答えてくれる代わりに、横になっている頭を支えてくれ、水を飲ませてくれた。水の冷たさで徐々に頭にかかっていた靄のようなものも晴れてきた。
「野戦の簡易病院よ。あなたは、大けがを負いながらもアリア殿下を守り切ったのよ。あの大惨事の中、立派だったわね。魔獣狩りの会場からここに収容されてから、丸2日間意識を失っていたのよ。覚えているかしら?」
メリッサさんが話してくれた内容では、大型の狼型の魔獣が突如出現し、魔獣狩りに参加した師団は大混乱に陥った。特に最前線の私たちがいた、第三王女殿下の指揮下の備隊は全滅したとのことだ。
まだ混乱しているけど、少しずつ思い出してきた。そこでアリア殿下ともども異国の全身鎧の男たちに襲撃を受けたのだ。
メリッサさんによると、大型の狼型の魔獣が姿を急に消し、その後、しばらくしてから、信号弾と思しき光が山林の中で数回上がり、第二王女殿下の部隊に知らせが届いた。救援要請の合図と判断し、第二王女殿下が急ぎ、救援隊を組織し向かわせた。
救援信号の発した地点では、アリア殿下と私が強力な魔法結界に護られていたところを発見された、ということだった。
保護された後、アリア殿下が経緯と状況を第二王女殿下へ説明されたとのことだ。魔法結界は、私が残存魔素のほとんどを使って発動し、身を挺してアリア殿下を護ったということになっていた。そして、私の同僚の第三王女の護衛騎士ペドロ・リーアは正体不明の襲撃者に顔面を強打され殉職したとのことだった。
メリッサさんの話を聞ききながら、自分の記憶と途中違っていると思ったが、疲労と痛みで声にならない。メリッサさんは、アリア殿下が私のことを甚く心配されていたため、意識が戻ったことを伝えることと、私にもう少し眠るように言い、テントを後にした。
私は、横になりながら、自分の記憶をもう一度はじめから辿る。
魔獣狩りがはじまり、しばらくして、狼型の強大な魔獣が突如現れた。おそらくあんな凶悪な魔素を発する魔獣なんて人為的に召喚しない限り、急にこの近辺に現れるはずがない。その後、備隊がなすすべもなく魔獣に蹂躙され、やむを得ずアリア殿下をペドロさんと護衛しながら、師団長または第二王女殿下の部隊のところまで後退させようとした。
でも、正体不明の全身鎧の男たちに阻まれ、退路を断たれた。追い詰められることはわかっていたけど、味方と反対側の方角で孤立するとわかっていたけど、とにかく北西へ逃げるしかなかった。
殿下を護りながら必死に逃走したが、四方を囲まれた。
致し方なく、反転し三人で、南から迫ってきた正体不明の二名に逆に奇襲を仕掛けることで窮地を脱する作戦を立てた。3人 vs 2人。数の優位で押し切ろうとしてだ。
全身鎧の大男と軽鎧ローブ姿のレイピアを装備した小男は予想以上の力量で、アリア殿下、ペドロさんと三人がかりでも全く歯が立たなかった。
小男のレイピアによって、ペドロさんは足を貫かれ動きを封じられた。とどめは、大男の丸太のような棍棒様のモーニングスターの重厚な一撃で、ペドロさんは、無惨にも顔面と頭部をつぶされ、絶命した。
私は、水魔法「ウォーターシールド」で、モーニングスターの攻撃を防ごうとするも、魔法の盾ごと粉砕され右腕を潰された。それでも、殿下だけでも逃がそうと応戦するも、軽鎧の男にケリ倒され、全身を何度も何度も金属性の具足で踏みつけられた。その際、右足を折られ、肋骨、胸、肩などの骨を具足でへし折られた。
激しい痛みで、一瞬意識を失ったが、這いずりながら身体を起こし、なんとか片足で立ち上がり、左手の水魔法で、近くにいた大男にとにかく攻撃した。命を懸けて、少しでも殿下の逃走の時間を稼ごうとした。でも、あっけなく魔法はすべて防がれて、頼みの綱の左手もモーニングスターで潰され経絡を全て塞がれた。
私の最後は、ペドロさん同様に、重厚な一撃を顔面で受け、吹き飛ばれ、そのまま絶命した,,,,,,,,はずだった。
今は,,,,,,確かに、右腕と右足は骨折しているようで力がはいらないけど、顔はつぶれてもないし、左手で顔を触った感触でも、傷ひとつないのようだ。それと、右腕、右足以外、肋骨をはじめ、肩、胸からお腹にかけて痛いところはない。
私、頭を打ち付けて、記憶が混濁しているのかしら?
それに発見された時の強力な結界っていったい?
「う、うぐ,,,,,,,,」
私は、痛みを我慢して、上半身だけ起こした。
え?え?こんなことって!!
その時に、私は、自分の魔素の性質が少し変わっていることに気が付いた。
骨折している右腕と右足へ、自分の魔素から、ほんの少しだけど治癒効果を付与し続けている。魔素の性質は魂に刻印されているため、生来、変わらないはず。いや、変えられないはず。
こんなことが起こるなんて!!
私は、自分の魔素に治癒の効果が生じたという信じられない奇跡を目撃して、すぐに、1年程前に内偵先で知り合った5歳年下の少年顔を思い浮かべた。
きっとあの不思議な少年は、今も世の中を達観した表情をしているのだろうな、と想像する。
そして、私とアリア様がまだ生きていられて、この場に保護されている理由に思い至った。
「アルフ君。また私のこと助けてくれたのね。殿下の命を護ってくれて、本当にありがとう」
とその少年に心の底からお礼を言う。
なぜか自然と涙があふれ止まらない。
私は、それから3日間静養していたが、突如訳もわからず、王都の警備部の兵士らに法務局まで連行され取り調べを受けた。
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