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1.子爵領編
3.部下と思考をそろえることのススメ
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シンバにエクスと議論した今回の作戦を説明する。
「まず初めに今回の戦の勝利条件を説明するぞ。」
俺は、今回の戦で、目指すべき勝利の条件をシンバへ説明する。
敵をただ追い返せばよいというものではない。シンバは表向きは、神輿の俺を支える裏の前線指揮官なので、戦の最中は兵士達へ細かな指示を出さないとならないし、神輿の俺がちょくちょく口を出すわけにはいかない。また、戦後は戦後で、父上たちへ詳細についての報告義務がある。
そのため、事前に今回の目標、作戦、絶対譲れない最低実現ラインについてしっかり理解しておいてもらわないとならない。
愛書「小役人のススメ」の一説に「部下を自分の手足とせよ。手足に自分の思考を注ぎ込み、頭とせよ。思考にあるべき姿を組み入れよ。部下が自分に近づかん時、必ずなし遂げられん。」とある。
自分の目標や考え方を部下に伝えて概念を理解させ、自分と同じように考える人材をつくりなさいという教えだ。一個一個細かい指示をだすことは戦場ではできないため、シンバに俺と同じ思考で、もう一人の俺として動いてもらうようにする。
「今回の目標は次の3点とする。
①敵の総数比で4割以上を打ち倒し、侵攻の意思を挫く。ただし、全滅はさせない。
②味方の損害を可能な限り出さない。必ず1割以内にする。アーチャー家の兵士は俺の友達が多いし、こんな戦で死んでほしくない。
③魔王の力、魔法の痕跡に周囲に可能な限りバレないようにする。
①から③の順で優先すること。いいな?シンバ」
次に基本戦術をシンバへ説明する。
内容としては、砦からの魔法で細工した矢での攻撃を基本し、敵が砦に接近できないよう策を講じる。飛竜騎士は、鱗の堅い飛竜に、全身金属鎧フルプレートを装着した騎士が1名ずつ搭乗している。ともに鉄壁の防御で矢の天敵ともいえる。また、オークも飛竜ほどではないが、矢をはじく堅い皮膚に守られている。
今回は、俺の付与魔法3つで貫通力を大幅に強化しているので、飛竜だろうが、金属鎧だろうが、オークだろうが、張り子の虎といったものだろう。
正直、この単純な作戦だけで圧倒すると思うが、万が一、矢の攻撃を凌がれ、砦に300Mまで接近された場合は、射撃部隊以外は、速やかに長槍への武装交換を指示すること。接近が50Mを切るまでに、隊列を整え攻撃を開始すること。
また、これを伝えた時、シンバは承服しない顔をしたが、万が一、砦の守備隊が250名中100名を切った際は、砦は放棄し速やかに撤退。もしそうなったら、やむを得えないが、砦を敵に進呈し、魔王の力で、魔素を蒸発させ、砦ごと周囲一帯を消滅させることにし、俺はそのまま子爵領から姿を消すことにする。
現状確認について説明を行った。
「敵の位置をさぐるため、使い魔をエクスに召喚してもらった。敵は今この位置にいる。進行方向、距離、日没時間から考えると、あと3時間くらいで戦端が開かれる。敵の数は事前の伝令からの情報と差異はない。」
「各部隊の位置から考えますと、定石通り、飛竜騎士団で、まず空から砦を急襲し、こちらが混乱している隙に、オークを壁にしながら、歩兵隊と魔法師隊が上陸してくる作戦みたいですね」
敵の戦術に乗っかり、まず空から来る飛竜騎士団を叩く。次にオーク、歩兵隊と順番に個別に撃破していく。こちらは250名のみなので、一度に戦う相手の数を絞り、順番に矢で叩いていくことが必要となる。つまり、数の勝負ではなく、質vs質または相性の戦いとする。後続が来る前に敵を足止めし、短時間で1部隊ずつ効率的に撃破していくことが重要だ。
子爵領の兵数が、元々少数なのは占領した村からの情報で敵に知られているはずだ。数の優位に加えて、飛竜の鱗の厚さ、騎士の金属製の鎧の頑丈さとオークの皮膚の堅さに自負をもっているだろうから、力押しで十分だと完全にこちらを舐めてくれていれば、隙が生じる。
「シンバ。敵に海岸砦の指揮官は初陣の子爵家三男の小僧で、シスプチン王国兵に臆して、戦う前から逃げる算段を早くもしている、と敵の耳にはいるように急ぎ工作してくれ。漁民から伝わるようにして、油断を誘え」
「それも後々、魔法をつかったことを隠す工作ですね。抜け目がない。」
「飛竜騎士団を率いる団長は、使い魔からの情報だと、きっと先駆けをしてくる。覇気の大きさを考えると、自分の腕に自信をもっていて自己顕示欲の塊というタイプだ。こちらのことを雑魚だと油断してくれているならば、先頭に立ってくるはずだ。俺らにとったら、格好の的だな。敵の指揮官をはじめにつぶせば、残りの飛竜騎士団は、統率の取れない烏合の衆になる。飛竜騎士団が殲滅した後、オーク・歩兵隊には、上陸する前に、海水をたっぷり飲んでもらってからお帰りいただこう」
「左目の事はさておき、嫌がらせについては、天性の才能ですね。こんなにひねくれてしまったのは、乳母である姉の育て方がよくなかったせいでしょうか。繰り返しとなりますが、エルモ様やご兄弟様たちへごまかし切れなくなるので、全滅は絶対にさせないでくださいよ。」
シンバと2人で軽口をたたきながら、砦をまわり、兵士達の様子を見ながら、作戦の最終確認をしていたら、いよいよ敵の飛竜騎士部隊が遠くの空に豆粒のように見えてきた。
いよいよ俺の初陣がはじまるのを感じて、胸がドキドキしてきた。
「まず初めに今回の戦の勝利条件を説明するぞ。」
俺は、今回の戦で、目指すべき勝利の条件をシンバへ説明する。
敵をただ追い返せばよいというものではない。シンバは表向きは、神輿の俺を支える裏の前線指揮官なので、戦の最中は兵士達へ細かな指示を出さないとならないし、神輿の俺がちょくちょく口を出すわけにはいかない。また、戦後は戦後で、父上たちへ詳細についての報告義務がある。
そのため、事前に今回の目標、作戦、絶対譲れない最低実現ラインについてしっかり理解しておいてもらわないとならない。
愛書「小役人のススメ」の一説に「部下を自分の手足とせよ。手足に自分の思考を注ぎ込み、頭とせよ。思考にあるべき姿を組み入れよ。部下が自分に近づかん時、必ずなし遂げられん。」とある。
自分の目標や考え方を部下に伝えて概念を理解させ、自分と同じように考える人材をつくりなさいという教えだ。一個一個細かい指示をだすことは戦場ではできないため、シンバに俺と同じ思考で、もう一人の俺として動いてもらうようにする。
「今回の目標は次の3点とする。
①敵の総数比で4割以上を打ち倒し、侵攻の意思を挫く。ただし、全滅はさせない。
②味方の損害を可能な限り出さない。必ず1割以内にする。アーチャー家の兵士は俺の友達が多いし、こんな戦で死んでほしくない。
③魔王の力、魔法の痕跡に周囲に可能な限りバレないようにする。
①から③の順で優先すること。いいな?シンバ」
次に基本戦術をシンバへ説明する。
内容としては、砦からの魔法で細工した矢での攻撃を基本し、敵が砦に接近できないよう策を講じる。飛竜騎士は、鱗の堅い飛竜に、全身金属鎧フルプレートを装着した騎士が1名ずつ搭乗している。ともに鉄壁の防御で矢の天敵ともいえる。また、オークも飛竜ほどではないが、矢をはじく堅い皮膚に守られている。
今回は、俺の付与魔法3つで貫通力を大幅に強化しているので、飛竜だろうが、金属鎧だろうが、オークだろうが、張り子の虎といったものだろう。
正直、この単純な作戦だけで圧倒すると思うが、万が一、矢の攻撃を凌がれ、砦に300Mまで接近された場合は、射撃部隊以外は、速やかに長槍への武装交換を指示すること。接近が50Mを切るまでに、隊列を整え攻撃を開始すること。
また、これを伝えた時、シンバは承服しない顔をしたが、万が一、砦の守備隊が250名中100名を切った際は、砦は放棄し速やかに撤退。もしそうなったら、やむを得えないが、砦を敵に進呈し、魔王の力で、魔素を蒸発させ、砦ごと周囲一帯を消滅させることにし、俺はそのまま子爵領から姿を消すことにする。
現状確認について説明を行った。
「敵の位置をさぐるため、使い魔をエクスに召喚してもらった。敵は今この位置にいる。進行方向、距離、日没時間から考えると、あと3時間くらいで戦端が開かれる。敵の数は事前の伝令からの情報と差異はない。」
「各部隊の位置から考えますと、定石通り、飛竜騎士団で、まず空から砦を急襲し、こちらが混乱している隙に、オークを壁にしながら、歩兵隊と魔法師隊が上陸してくる作戦みたいですね」
敵の戦術に乗っかり、まず空から来る飛竜騎士団を叩く。次にオーク、歩兵隊と順番に個別に撃破していく。こちらは250名のみなので、一度に戦う相手の数を絞り、順番に矢で叩いていくことが必要となる。つまり、数の勝負ではなく、質vs質または相性の戦いとする。後続が来る前に敵を足止めし、短時間で1部隊ずつ効率的に撃破していくことが重要だ。
子爵領の兵数が、元々少数なのは占領した村からの情報で敵に知られているはずだ。数の優位に加えて、飛竜の鱗の厚さ、騎士の金属製の鎧の頑丈さとオークの皮膚の堅さに自負をもっているだろうから、力押しで十分だと完全にこちらを舐めてくれていれば、隙が生じる。
「シンバ。敵に海岸砦の指揮官は初陣の子爵家三男の小僧で、シスプチン王国兵に臆して、戦う前から逃げる算段を早くもしている、と敵の耳にはいるように急ぎ工作してくれ。漁民から伝わるようにして、油断を誘え」
「それも後々、魔法をつかったことを隠す工作ですね。抜け目がない。」
「飛竜騎士団を率いる団長は、使い魔からの情報だと、きっと先駆けをしてくる。覇気の大きさを考えると、自分の腕に自信をもっていて自己顕示欲の塊というタイプだ。こちらのことを雑魚だと油断してくれているならば、先頭に立ってくるはずだ。俺らにとったら、格好の的だな。敵の指揮官をはじめにつぶせば、残りの飛竜騎士団は、統率の取れない烏合の衆になる。飛竜騎士団が殲滅した後、オーク・歩兵隊には、上陸する前に、海水をたっぷり飲んでもらってからお帰りいただこう」
「左目の事はさておき、嫌がらせについては、天性の才能ですね。こんなにひねくれてしまったのは、乳母である姉の育て方がよくなかったせいでしょうか。繰り返しとなりますが、エルモ様やご兄弟様たちへごまかし切れなくなるので、全滅は絶対にさせないでくださいよ。」
シンバと2人で軽口をたたきながら、砦をまわり、兵士達の様子を見ながら、作戦の最終確認をしていたら、いよいよ敵の飛竜騎士部隊が遠くの空に豆粒のように見えてきた。
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