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バレンタインチョコの練習

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    あれから麗華さんと恋バナをする機会がない私は、もどかしい気持ちになっていました。
LINEでそれとなく聞いても「もういいの!」と言われ、それっきりだったので……
「あの、麗華さん。もし良かったらバレンタインのチョコレートを、一緒に手作りしませんか?」
「なんで?私は別に渡す人、居ないし」
「友チョコでも、義理チョコでも構いませんわ!一人で作るのは、何だか寂しく感じるので……お願いしますわ!」
「心春さんにでも頼めばいいじゃない。なんで私なのよ?」
「それは幼馴染みだからですわ!心春さんは料理もお菓子もお上手ですが……ほら、私がそこまでお菓子作りが上手でないことは、麗華さんがよくご存じでしょう?」
「……見てるだけでいいの?」
「ええ。その気になってくださったら、隣で作っていただいても……あっ、私に作ってくださいな!私も麗華さんに作りますし!」
「はぁ?何なのよ、それ」
少々、呆れ顔でおっしゃっていましたが「まぁ、気分転換にいいかもね」と言って、来てくださる約束をしました。
許婚様に、どんなチョコレートを作って差し上げたらよいのか……楽しい悩みですわ♪



 ************



  そして、とある休日。
「来たわよー」
「あら、いらっしゃいませ!」
早速、麗華さんがうちに遊びに来てくださいました!
「で、何作るか決めてるの?」
「3つには、絞れたのですが……」
なかなか決まらないので、3つ作ってみて良さそうな物を作ることにしましたわ!と言うと
「本当に好きなのね、篠目くんのこと」
と微笑みながら言っていましたが、どこか切なそうです。
「確か、巧幡くんって怜さんと違って甘い物、好きでしたわよね!」
「えぇ、そうね」
「麗華さんは、お菓子作りって得意なのですか?」
「得意ってほどでもないわ……そこら辺の人と同じぐらいよ」
そこら辺の人って……相変わらず、言い方がキツいですわ。
でも確か、素直になれないからそういう冷たくてキツい言い方をしてしまうって、言っていたような……照れ隠しですわね!
「それでしたら!私や義理チョコの為に一度、作ってくださいな!麗華さんの手作りお菓子、是非とも食べてみたいです!」
「し、仕方ないわね……」
渋々しぶしぶ、作ってくださることになりましたが作っている様子からは、とても楽しそうでしたわ。
鼻歌さえも聴こえるほどに。


「出来たわよ」
「私は、後もう少しですわ!」
私はトリュフ、生チョコ、チョコレートケーキを作りました。
麗華さんは、ガトーショコラ。
「では、いただきます♪」
「召し上がれ」
「麗華さんも良かったら私の作ったチョコレート、食べてみてください!」
「分かったわよ」
麗華さんの作ったガトーショコラ、とても美しくて食べるのが勿体ないぐらいですわ……!
しかし、食べなくては申し訳ない!
一口食べると口当たりがとても軽く、ホールごと食べられるぐらいふわふわで、冷めてもしっとりとして……これはお店レベルですわ!!
「麗華さん……」
「何よ」
「これ……とっっても美味しいですわ!」
「なら良かった」
「この、ガトーショコラ!これを巧幡くんに作って差し上げてはいかがです?」
「はぁ!?いや、別に巧幡は私があげなくても他の子たちがあげるから、渡すだけ無駄っていうか……」
「そんなことはありませんわ!」
私は、許婚様から入手した情報を麗華さんに伝えました。
「ですから、麗華さんのチョコレートなら!巧幡くんだって、喜んで受け取って食べてくれますわ!」
「……」
「ね!私と一緒に頑張ってみましょう?」
「そんなこと言われたって……」
以前、中学の時に友達が友達の好きな方と仲良くしていたので、告白すれば付き合えるのでは!?と思い、他の友達と協力してバレンタインデーに決行したそうです。
しかし、友達の好きな方は「友達としての関係が好きだから……このままで居たい」と言われ、その子はフラれたそうです。
その後、その子とも気まずくなってしまい避けられるようになって、友達ではなくなってしまったという苦い思い出がある為、自分も同じ思いをしたら……と思うと、このままの関係の方が自分も相手も傷付かないで済むのではないか、と告白せずに今に至るそうです。
「私って、最低よね」
「えっ」
「だって、友達だった子にはそういうことをして傷付けちゃったのに……自分は傷付きたくないからって、告白しないとか……」
「でもそんなの、誰にでもありますわよ」
「そういうものかしら……」
「えぇ。相手の為を思っていても、それが裏目に出てしまったり。他の方がそうなっても、どこか他人事のように思えてしまったり……」
「結局、自分が一番……大事なのよね」
「それに今は、きっとその方も別の方と恋愛しているのかも知れませんわよ!」
「もし、あたしのせいで恋愛するのが怖くなっていたら……?」
「その時はもう一度、その方に謝って一恋愛に対しての恐怖が克服出来るように、一緒になって考えるのです!私もお手伝いいたしますわ!」
「あり、がと……」
「いえいえ」
「これが、恋愛上手くいってる人の余裕ってやつなのかしら?」
「えっ……上手く、いってるのでしょうか……?」
「はぁ……ここで、ひがみなんて言ったって無意味よね」
「どうかしました?」
「ううん。アンタが羨ましいわ」
「?」

何だかよく分かりませんが麗華さんが元気になり、私が作ったチョコレートを半分も食べてくださって、私もとても嬉しいです!
「分かったわ。腹を括って、告白する」
「えっ!」
「バレンタインデーに、巧幡に告白する」
「ほ、本当ですか!?」
「えぇ。私だけ逃げてるなんて、みっともないし?」
「私、全力で応援させていただきますわ!」
「ありがとう」
麗華さんが、バレンタインデーに巧幡くんに告白する宣言、いただきましたわ!
私も全力で応援させていただきます!
これは、許婚様にご報告ですわ!




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