上 下
37 / 46

バレンタインチョコの練習

しおりを挟む


    あれから麗華さんと恋バナをする機会がない私は、もどかしい気持ちになっていました。
LINEでそれとなく聞いても「もういいの!」と言われ、それっきりだったので……
「あの、麗華さん。もし良かったらバレンタインのチョコレートを、一緒に手作りしませんか?」
「なんで?私は別に渡す人、居ないし」
「友チョコでも、義理チョコでも構いませんわ!一人で作るのは、何だか寂しく感じるので……お願いしますわ!」
「心春さんにでも頼めばいいじゃない。なんで私なのよ?」
「それは幼馴染みだからですわ!心春さんは料理もお菓子もお上手ですが……ほら、私がそこまでお菓子作りが上手でないことは、麗華さんがよくご存じでしょう?」
「……見てるだけでいいの?」
「ええ。その気になってくださったら、隣で作っていただいても……あっ、私に作ってくださいな!私も麗華さんに作りますし!」
「はぁ?何なのよ、それ」
少々、呆れ顔でおっしゃっていましたが「まぁ、気分転換にいいかもね」と言って、来てくださる約束をしました。
許婚様に、どんなチョコレートを作って差し上げたらよいのか……楽しい悩みですわ♪



 ************



  そして、とある休日。
「来たわよー」
「あら、いらっしゃいませ!」
早速、麗華さんがうちに遊びに来てくださいました!
「で、何作るか決めてるの?」
「3つには、絞れたのですが……」
なかなか決まらないので、3つ作ってみて良さそうな物を作ることにしましたわ!と言うと
「本当に好きなのね、篠目くんのこと」
と微笑みながら言っていましたが、どこか切なそうです。
「確か、巧幡くんって怜さんと違って甘い物、好きでしたわよね!」
「えぇ、そうね」
「麗華さんは、お菓子作りって得意なのですか?」
「得意ってほどでもないわ……そこら辺の人と同じぐらいよ」
そこら辺の人って……相変わらず、言い方がキツいですわ。
でも確か、素直になれないからそういう冷たくてキツい言い方をしてしまうって、言っていたような……照れ隠しですわね!
「それでしたら!私や義理チョコの為に一度、作ってくださいな!麗華さんの手作りお菓子、是非とも食べてみたいです!」
「し、仕方ないわね……」
渋々しぶしぶ、作ってくださることになりましたが作っている様子からは、とても楽しそうでしたわ。
鼻歌さえも聴こえるほどに。


「出来たわよ」
「私は、後もう少しですわ!」
私はトリュフ、生チョコ、チョコレートケーキを作りました。
麗華さんは、ガトーショコラ。
「では、いただきます♪」
「召し上がれ」
「麗華さんも良かったら私の作ったチョコレート、食べてみてください!」
「分かったわよ」
麗華さんの作ったガトーショコラ、とても美しくて食べるのが勿体ないぐらいですわ……!
しかし、食べなくては申し訳ない!
一口食べると口当たりがとても軽く、ホールごと食べられるぐらいふわふわで、冷めてもしっとりとして……これはお店レベルですわ!!
「麗華さん……」
「何よ」
「これ……とっっても美味しいですわ!」
「なら良かった」
「この、ガトーショコラ!これを巧幡くんに作って差し上げてはいかがです?」
「はぁ!?いや、別に巧幡は私があげなくても他の子たちがあげるから、渡すだけ無駄っていうか……」
「そんなことはありませんわ!」
私は、許婚様から入手した情報を麗華さんに伝えました。
「ですから、麗華さんのチョコレートなら!巧幡くんだって、喜んで受け取って食べてくれますわ!」
「……」
「ね!私と一緒に頑張ってみましょう?」
「そんなこと言われたって……」
以前、中学の時に友達が友達の好きな方と仲良くしていたので、告白すれば付き合えるのでは!?と思い、他の友達と協力してバレンタインデーに決行したそうです。
しかし、友達の好きな方は「友達としての関係が好きだから……このままで居たい」と言われ、その子はフラれたそうです。
その後、その子とも気まずくなってしまい避けられるようになって、友達ではなくなってしまったという苦い思い出がある為、自分も同じ思いをしたら……と思うと、このままの関係の方が自分も相手も傷付かないで済むのではないか、と告白せずに今に至るそうです。
「私って、最低よね」
「えっ」
「だって、友達だった子にはそういうことをして傷付けちゃったのに……自分は傷付きたくないからって、告白しないとか……」
「でもそんなの、誰にでもありますわよ」
「そういうものかしら……」
「えぇ。相手の為を思っていても、それが裏目に出てしまったり。他の方がそうなっても、どこか他人事のように思えてしまったり……」
「結局、自分が一番……大事なのよね」
「それに今は、きっとその方も別の方と恋愛しているのかも知れませんわよ!」
「もし、あたしのせいで恋愛するのが怖くなっていたら……?」
「その時はもう一度、その方に謝って一恋愛に対しての恐怖が克服出来るように、一緒になって考えるのです!私もお手伝いいたしますわ!」
「あり、がと……」
「いえいえ」
「これが、恋愛上手くいってる人の余裕ってやつなのかしら?」
「えっ……上手く、いってるのでしょうか……?」
「はぁ……ここで、ひがみなんて言ったって無意味よね」
「どうかしました?」
「ううん。アンタが羨ましいわ」
「?」

何だかよく分かりませんが麗華さんが元気になり、私が作ったチョコレートを半分も食べてくださって、私もとても嬉しいです!
「分かったわ。腹を括って、告白する」
「えっ!」
「バレンタインデーに、巧幡に告白する」
「ほ、本当ですか!?」
「えぇ。私だけ逃げてるなんて、みっともないし?」
「私、全力で応援させていただきますわ!」
「ありがとう」
麗華さんが、バレンタインデーに巧幡くんに告白する宣言、いただきましたわ!
私も全力で応援させていただきます!
これは、許婚様にご報告ですわ!




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする

矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。 『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。 『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。 『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。 不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。 ※設定はゆるいです。 ※たくさん笑ってください♪ ※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】

remo
恋愛
橘 あおい、30歳目前。 干からびた生活が長すぎて、化石になりそう。このまま一生1人で生きていくのかな。 と思っていたら、 初めての相手に再会した。 柚木 紘弥。 忘れられない、初めての1度だけの彼。 【完結】ありがとうございました‼

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

処理中です...