35 / 46
巧幡くんの気持ち
しおりを挟むあれから私は許婚様に相談をし、お願いしました。
「お願いします、私に協力してくださいませ!」
「き、協力って言ってもだな……」
「駄目、なのですか……?」
「駄目、では……ないが」
「では……!」
「だが……この俺にも話してくれなかったら、どうするんだ?」
「その場合は、私が聞きますわ!」
「何!?」
「私が、グイグイ聞きにいきますわ!」
「はぁ……」
「どうされたのですか?」
「いや……お節介が過ぎるなと思って……」
「あっ、申し訳ございません……」
「いや、怒っているわけではない」
「そう、なのですか?」
「あぁ、決して怒ってなどいない。ただ、すごいなぁと感心しているだけだ」
「そうなのですか?なら良かったですわ!」
一か八か分からないけれど、やれるだけのことはやってみようと思いますの。
少しでも麗華さんの為に、何か分かればと……
************
「そういえば、怜は綺羅ちゃんとは相変わらずなの?」
「何だ、急に」
「怜の口から聞きたくてさ。ほら、怜って恋バナも惚気もしないから、本当に綺羅ちゃんのこと好きなのかな?って、気になって」
「ハッ!もしや、お前……桜のこと……!」
「まさか。お前という許婚が居るのに、そんなことしないよ。後、好きじゃないから安心して」
「何だ、全く!心臓に悪いじゃないかッ!」
「あははは、ごめんごめん!」
そっか~、そんなに怜は綺羅ちゃんのことが好きなんだね~と何でもないように言っていたが、俺は何だか変な感じがした。
普段からそういう恋愛話など、巧幡から聞くことがなかったからだ。
だから俺は、とても驚いていた。
自分から恋愛に関する会話をすることもなかったし、クラスメイトにその類いを聞かれても、当たり障りのない回答をするだけだったから。
「何か……あったのか?」
「うーん……何ってないんだけど、さ……」
「何もないなら、そんなこと言わないだろう?」
「その、さ……好きな人と付き合った時の気持ちって……どんな?」
「どんなって言われてもだな……」
「嬉しい?ドキドキしたり、ワクワクしたり……」
「それは勿論、嬉しいぞ。ドキドキもするが、こう……何というか……心が温かくなるというか……」
「心が、温かく……?」
「あぁ。じんわり、というか……ほわん、というか……そんな感じだ」
「へぇ……そうなんだ」
「どうした、巧幡」
「えっ」
「お前から、そんな話をするなど初めてだからな」
「あぁ……そう、だね」
「何かあったのか?お前はモテるからな」
「いや、そんな……モテないよ?」
「そうか、自覚がなかったのか……それは、すまないな」
「えっ?いや、そんなことはどうでもいいんだよ!」
「そうか。で、一体どうしたんだ」
「その……ずっと誰にも言わずに、自分で抱えてたんだけど。とうとう、抱えきれなくなっちゃってさ……」
「何があったんだ、巧幡」
「うん……俺ね、好きな人が居るんだ」
「えっ……!?」
まさか、自分からそんなことを話してくれるだなんて……桜!俺、やったぞ!!
「驚くよね。俺なんて、恋愛に興味なさそうに見えるし、そう思われてるし……」
「まぁ……正直言うと、俺もそう思っていた」
「だよね」
「しかし、好きな人が居るって……いつからだ?」
「うーん、はっきりとは覚えてないんだけど……多分、中学上がったぐらい、かな……」
「中学か」
「うん。中学ん時は、ずっとバスケやってたんだけどね」
「あぁ、そうだな」
「本当はね、怜に話そうかなって思ってたんだよ。ずっと」
「そう、なのか……!?」
「うん。言いふらしたり、冷やかしたりしないから」
「まぁ、そうだな。そんなくだらんことは、しない主義だからな!」
「でもさ、携帯持ってなかったじゃん?だから、コソコソ相談も出来ないなーって思ったから、やめた」
「それについては、謝罪しよう。本当に申し訳ない」
「あっ、いや。謝って欲しいんじゃなくて……今、ようやくスマホ持ってるからLINEで話しても良かったんだけど、さ」
「?」
「口で喋った方が早いかなーと思って……」
「で、その好きな人っていうのは俺でも知っているヤツなのか?」
「そうだね、すごく知ってる」
「そうなのか……誰だろうな」
「麗華だよ」
「えぇっ!?」
「意外だった?そんな驚かなくても」
巧幡は笑っているが、こちらは笑えない。
何故なら、その片想いしている藤山 麗華も、お前のことか好きだからだ。
ということは……両想いではないか!!!
俺は、内心で開いた口が塞がらなかった。そんな奇跡的なことが起ころうなど……
「まぁ、意外と言えば……意外だな。もっとこう、ほわんとした子がタイプなのかと思っていたからな」
「あぁ……そういう子も可愛いなとは思うよ。でも、麗華は違う。可愛いけどちゃんと自分を持っていて、好き嫌いもはっきりしていて……媚びたりしない。そういう強い子に、気付いたら好きになってた」
「そうか」
「それに、あのツンデレ具合が堪らないんだよ!」
「ツン、デレ……?」
「そうそう!特に、綺羅ちゃんと一緒に居る麗華は、最っ高に可愛いと思う!!」
「そうなのか……?」
俺には分からん。ツンツンしているだけなのではないのか?ツンデレ……ツンツン……ツン、デレ……?
「うん、俺にとってはすごく可愛いんだ」
「ほう……そんなに藤山にゾッコンなのか」
「そうだね」
即答!?それほど藤山のことが好きなんだな。
俺はそれから、巧幡の恋愛相談にのり(全く上手く答えられなかったが)情報収集したので、ホクホクだった。
そして、帰宅してから桜にLINEで報告した。
0
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする
矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。
『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。
『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。
『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。
※設定はゆるいです。
※たくさん笑ってください♪
※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】
remo
恋愛
橘 あおい、30歳目前。
干からびた生活が長すぎて、化石になりそう。このまま一生1人で生きていくのかな。
と思っていたら、
初めての相手に再会した。
柚木 紘弥。
忘れられない、初めての1度だけの彼。
【完結】ありがとうございました‼
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる