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許婚様と初詣

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「流石に、冷えるな」
「そうですわねぇ」
一応、防寒対策はしているのですがやはり季節は極寒なので、寒いです。
「にしても、予想通り……結構、混んでるな」
「えぇ。気を付けないとすぐに、はぐれてしまいますわね」
「その……だな」
「はい」
「もし……桜が嫌でなければ、だが……」
「はい?」
「その、はぐれないように……てっ、手を」
「手?」
「手を繋がせて、もらっても……良いか?」
「えっ!?」
ま、まさか許婚様から手繋ぎのことを言われるなんて、思ってもいなかったので……とても嬉しいですわ!
「その、嫌なら───」
「喜んで、繋がせていただきますわ!」
初めての手繋ぎで手袋越しではありますが、私より大きくしっかりした手で改めて、許嫁様は男性なのだと実感いたしましたわ。
「おっ、もうそろそろだな」
「えぇ、そうですわね」
いそいそと小銭を出して、自分たちの順番が来るまで待機ですわ!
これからも素敵なご縁がありますように。
許婚様と、もっと親しくなれますように。
無事に最終学年に進級が出来ますように。
許婚様と弟様が、再び仲良くなれますように。
また来年も、こうして隣に許婚様が居て、初詣に来られますように。
……ハッ!何だかたくさん願い事をしてしまいましたわ!
確か、初詣って新年の挨拶をして抱負を語るんでしたっけ?
あまり詳しくないですし、気付いたらつい願い事を、つらつら(心の中で)述べてしまうんですの。
以後、気を付けなければなりませんわね。

「桜、願い事がいっぱいあったのか?」
「へっ!?」
「ずいぶん、長く手を合わせていたから」
「そ、そうですわね……欲張り過ぎてしまいました」
「そっか。必死そうな表情カオだったから、何か重要な願い事でもしてたのか?」
「いえ、そんな……いや、内容によっては重要ですわね!」
「なるほど……その願いが叶うといいな」
「えぇ……!でも、初詣ってお願い事をしに行くものではないですよね……?」
「あぁ、そうらしいな」
「なので、何だか厚かましく感じてしまって……最後に謝ってきました」
「そんな、律儀に謝らなくてもよいのではないか?」
「えっ!そうかしら……」
「あぁ、きっと神社の神様は微笑ましく思っていると思うぞ」
「だと、よいのですが……」
許婚様、とてもお優しいですわ!微笑みながら、そう言っていただけると……願い事が叶いそうな気がしてきましたわ!
「あっ、屋台がやっておりますわね!」
「食べるか?」
「まぁ、よいのですか!?」
「あぁ。でも、執事たちには内緒だぞ」
「はい……!」
二人の秘密が、出来てしまいました。
屋台を見て回り、少し散策して許婚様のお家へ帰りました。
すると、執事やメイドたちが
「お腹空いたでしょう?食事のご用意が出来ております」
と言われ許婚様の言う通り、屋台での飲食を少なめにしておいて正解でしたわ。
「はい!もう、ペコペコです」
許婚様のお家の食事もとても美味しいので、ついつい食べ過ぎてしまいました。
私は良い気分のまま、迎えに来た車に乗り帰宅いたしました。
とても、楽しかったですわ!許婚様との想い出と秘密も作れたことですし♪




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