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補習の後のクリスマスデート

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   冬休みに入り早速、私は数学と理科の補習を受けに学校へ行きました。
それはもう、寂しくて悲しくて……補習に耐えられるか不安になりながらも登校し、補習を受けました。
内心では、ずっとえぐえぐ泣いておりました。
何故なら、この補習を受けている今、許婚様は優雅に紅茶をお召しになられているからです。
私も飲みたかったですわーーッ!
でもでも、補習さえ終われば許婚様とお出掛け……
私は今までよりも更なる集中力で、補習を無事に乗り越えてみせました。
補習が終わり、集中し過ぎて少し頭痛がしますが構うものですか!
大急ぎで帰ろうと思っていたところへ、許婚様の優雅なご登場ですわ。
「あの……怜さん?」
「桜、補習は終わったのか?」
「ええ、勿論ですわ!」
「もしかして、補習が嫌過ぎてこっそり逃げ出したのかと思ったぞ」
「まぁ、いくらなんでも酷いですわ!」
「すまない、すまない。もう、そろそろ補習が終わる頃かなと思って迎えに来たんだ」
「まぁ!それは有難いですわ」
「さぁ、桜の家に向かおう」
私が家でお着替えやら髪の毛やらをしている間、許婚様にはお茶を飲んで待っていてもらいました。
「お待たせしましたっ!」
「あぁ、別に───」
「りょう、さん……?」
「あ……いや……なんでも、ない」
「どうされたのですか?さっきから、固まっていらっしゃるようで……」
「いや、大丈夫だ。心配、するな」
「そう、ですか……?」
本当にどうしちゃったのでしょうか?私を見てから、何だか許婚様はぎこちないようです。
用意が終わり早速、クリスマスデートに行くことに。
「寒いからな……」
と言って、許婚様は頬を赤らめながら手を差し伸べてくださったので、お礼を言ってお恥ずかしながら、手を握らせていただきました。
「あの……」
「なんだ?」
「その……今日の私、変……ですか?」
「いや……違う」
「じゃあ、なんですか!」
「えっ」
「部屋から出た私を見てから、怜さんは何だか変です!」
「そ、そんなことはない!」
「本当ですか?」
「ほ、ほんとだ!」
「怪しい……(じーっ)」
「うっ……分かった。ちゃんと言おう」
「はい!では、おっしゃってください!」
「桜の、今日の服装……可愛いな」
「えっ!」
「似合ってて、可愛い……」
「ほ、本当ですか!?」
「あぁ」
「あの、貴重なので……もう一度」
「は……?」
「しっかりと、耳にこびりつけたいので!」
「却下する、もう言わん!」
「えぇ~……」
残念でしたわ……
せっかく、貴重なお言葉が聴けたのでおかわりを希望したのに……あえなく却下されるなんて。
それでも胸は、ぽかぽかして温かいですわ。
補習後の許婚様とのクリスマスデートは、とても幸せです!
「そういえば、夜はここのレストランを予約していたんだ」
「まぁ、そうですの!って、ここは……」
「紅茶が美味いと評判のお店だ」
「ですわよね!一度、行ってみたかったんです!とても嬉しいわ」
「それなら、良かった。さぁ、入ろうか」
「えぇ!」
外観も内観も、とても上品で落ち着いた雰囲気のレストラン。
ランチも、ディナーもメニューは『シェフのおまかせ』のみ。
アフタヌーンティーの時間帯や、ディナーの場合はスイーツも注文出来るそうですわ。
ランチの場合は、デザートがついているそうです。
どの時間帯に来ても、楽しめるレストランですのね!
「うん、とても美味い……!」
「はい、お肉が柔らかくてジューシーです!」
「この魚も、焼き目が香ばしい……」
「いくらでも食べられますわね」
私と許婚様は『シェフのおまかせ』から選択できる、欲張りの魚と肉を注文したので、ただいま堪能中です。
魚のみ、肉のみも両方も選べる、なんて良心的なお店なのでしょう。
これは、デザートも期待大ですわ!
「失礼いたします」
「まぁ……!」
素敵なプレートが置かれましたわ。えっと……
「えっ……!?」
「俺の許嫁に変わりはない。しかし、ちゃんと形にしたくてな」
「これは……!」
「桜……俺と婚約してくれないか?」
許婚様は、食いしん坊な私にデザートの盛り合わせを頼んでくださっていて、チョコペンで「僕の婚約者へ  メリークリスマス」とメッセージが書かれているではありませんか。
「あの……」
「ん?何だ」
「その、逆に私でよいのですか?」
私が不安そうに聞くと、許婚様は
「あぁ、勿論だ」
微笑みながら一番、優しい声で私にそう答えてくれました。
婚約指輪も、そっと添えて。
「それなら……勿論、お受けいたしますわ」
「ほ、本当か……!?」
「はい、勿論ですわ」
「こ、こんな無愛想な俺のこと、嫌じゃないか?」
「最初は、つまらない人とか面白くない人って思ってましたけど……」
「けど……?」
「今では、それもキャラクターとして愛おしく感じるようになりましたので、さほど気にしておりませんわ」
「桜……」
「婚約者になるのは構わないのですが……」
「何だ」
「婚約者になっても、呼び方はなのですか?」
「うっ……」
ウフウフ……許婚様、困っていますわ。だって婚約者って、結婚するも同然なんですもの。
いつまでも名字呼びだなんて……いくら親しくても、距離を感じますわ。
ここは“綺羅”と、呼んでくださらないと!
「さぁさぁ、怜さん」
「ぐっ……いきなりは無理だ」
「はい!?」
「名前で呼ぶのは……もう少し、待ってくれ」
「そんな……!」
それなら、この方法を使うしかありませんわ!
「さ、桜……!?」
「そんな、名前で呼んでくださらないなんて……ぐすっ」
必殺☆嘘泣きですわ!涙が出ないので、すすり泣きをするしかないのですが……
「わ、分かった。分かったから!綺羅」
「へっ!」
今、今……私のこと名前で呼んでくださいましたよね?
ちゃんと、呼びましたよね!?
「おい、嘘泣きだなんて汚いぞ」
「汚いも何も、怜さんが私のことを名前でお呼びにならないからですのよ?」
「ま、まぁ……そうだが」
「名前で呼べるなら、明日からちゃーんと呼んでくださいまし」
「あ、明日から!?」
「えぇ、そうですわ」
「何と、怖い女だ……」
「あら?何か言いました?怜さん」
「いえ……何も……」
この勝負、私の圧倒的勝利ですわ!
明日から、許婚様が私のことをちゃんと名前でくださるのか、楽しみになってきましたわ。
食事を済ませてから、イルミネーションを見て帰りました。
勿論、お優しい許婚様が家まで送ってくださいました。
今年のクリスマスは私にとって、とても幸せで良き想い出になりました。




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