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見回りと称した屋台巡り

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   いよいよ、許婚様との見回り。
「どこから行かれるのですか?」
「そうだなぁ……とりあえず、下から行くか」
「分かりました」
わたくしと許婚様が通ると、どこもかしこも黄色い声援。
「流石は、篠目しのめ様と綺羅きら様ですわ……!」
「俺も、あんな風になりたいなぁ……」
「お前じゃ無理だよ」
「なんでだよー!」
「はぁ……綺羅様、女神様だわ!」
毎度の如く、耳に忍ばせている超小型補聴器から聴こえてくる素敵な言葉に、ついウフウフしてしまいますわ。
「どうした、桜。また、締まりのない顔をして」
「いいんですの!この顔に、早く慣れてくださいませ」
「えっ、あ、あぁ……分かった」
こうして肩を並べて、堂々と歩くのは初めてなのではないかしら。
普段は登下校のみだったので、何だか新鮮に感じますわ。
「あ、桜。何か食べたいものはあるか?」
「んーと……そうですわねぇ」
唐揚げに焼き鳥、クレープにサンドイッチ!おにぎりに、アイスクリーム!
「全て、食べ尽くしたいですわねぇ!」
「なんと、食欲旺盛だこと」
「あっ……はしたないって、思いました……?なら───」
「ヨシ、片っ端から攻めよう」
「えっ……?」
「桜が食いしん坊なのは、元から知っている。だから引くとか、はしたないとか……思ってない。寧ろ、今更だ」
「怜さん……」
「だから、好きなだけ食べろ」
「……はいっ!ありがとうございます」
許婚様のことだから、こんな食いしん坊な私をはしたない女だって引かれてしまっても、仕方ないと思っていました。
そんなに可愛くも美人でもないですし……
それでも、許婚様は優しく私を包み込んでくださるのです。
そのさり気ない優しさが、私にとってはすごく優しく感じるのです。
それから、見回りしながら半分近くの屋台を回ることが出来ました。
「食べたいものが食べられて幸せでしたわ」
「そうか、良かったな」
「あっ、もうそろそろ自分のクラスに戻らないと……」
「あぁ、そうだな」
「楽しかったですわ!怜さんと、一緒に回ることが出来て」
「俺もだ。表情にはあまり出さないが、楽しかった」
「なら、良かったですわ。素敵な想い出が、また1つ増えましたわね」
「あぁ、そうだな」
「じゃあ、また後でな」と言われ、自分のクラスへと戻りました。
許婚様と見回りと称しての屋台巡りが楽しかったし、何だかデートしているようでとても良い想い出が出来たので、残りの時間は働きまくりますわよ~!
「あっ、綺羅ちゃん!」
「井栗くん!お疲れ様」
「とても楽しかったんだね、見回り」
「えっ……!えぇ、とても」
「そっか……良かったね」
「えぇ!あっ、井栗くんにお土産を持ってくれば良かったですわね。ごめんなさい、自分ばっかりで……」
「いや、綺羅ちゃんが楽しめたのなら、それで充分だから。気にしないで」
天使が、ここに居ましたわ!なんて優しいの、井栗くん!
私は終了の合図が終わるまで、必死に働きまくりました。
さて、ファンタジーランドを見事、獲得するクラスは一体どのクラスなのか……
とても楽しみですわ!




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