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塩ツン王子の本音 (朱乃 奏視点)
しおりを挟む俺は朱乃 奏。
中学二年生。俺は入学式の時から何故か、熱烈アピールをされている。
きっかけは、どうやら受験の時に俺がシャーペンと消しゴムを貸したことらしい。
まぁ、確かにあの時は「なんで受験なのに、ペンケース忘れた?」って思ったけど、今日まで一生懸命勉強したのに、その努力がペンケースで水の泡になるのが気の毒に思えて……
それに冷や汗が半端なかったし、気付いたら俺はその子に、シャーペンと半分に割った消しゴムを渡していた。
渡していたと言っても席も離れてたから、ちょっと投げた感じになってしまったけど。
「神様っ!」って感じで、感動と感謝で顔でめちゃくちゃ崇められた。
貸したシャーペンは俺が普段の受験勉強で使っていたもので、最初からそれを使えば良かったんだけど、彼女を見ていたらそっちのシャーペンを貸した方が良さそうだと思ったから、それを貸した。
そして、問題を解いているうちにシャーペンを貸したことさえ忘れて、俺は退出時間になったので退出して帰った。
気付いたら「シャーペン、1本ねぇ!?」ってなって、どっかに落としたのかな。とか、縁がなくなったのかな。とか考えて諦めた。
思い入れのシャーペンのことを忘れていたら、中学の入学式の時に、ある女子から声を掛けられた。
すっげー、勇気を振り絞ったんだろうなぁってぐらい頬を真っ赤に染めて、その子の出せる精いっぱいの声で「あの……受験の時、ありがとうっ」って言われて、俺は何のことか覚えていなかった。
「えっ……?」
新手の口説き逆ナンパか!?なんて思ったけど、その子の顔は真剣そのものだった。
会話していく中で思い出した。
確か受験の時に、俺の隣の子がやたら冷や汗だらだらかきまくってて、顔真っ赤でどうしようって顔でひたすら下向いて黙ってたよなー。
机の中とか、さり気なくさわさわしてて「何してんの?コイツ」と思って、机を見たらピンときた。
コイツ、ペンケース忘れたってこと?
でも受験なんだから、普通持ってくるよな?
とか色々思ったけど、あの時助けたからこそコイツは無事に合格して、俺と一緒に入学出来ている。
めちゃくちゃ感謝されて、仲良くなりたいと言われた。
でも俺は仲良くなんて、したくない。
だって……何か、気になる存在だから。
あの貸したシャーペン、知らんぷりして借りパクとか出来んのに、アイツは俺のことを捜してちゃんと返してくれた。
律儀なヤツだなぁ。
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