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可愛い嫉妬
しおりを挟む俺には、7つ離れた姉がいる。
LINEで今度近くに行く用事があるから、仕事の合間に顔を見たいと言われ、会うことにした。
「今や営業とはねぇ~」
「まぁまぁ頑張ってるよ」
「ねねっ!可愛い可愛い彼女ちゃんの写真、はよ!」
「うるせーな、ねぇよ」
「は!?今度、見せるって言ってたじゃん!」
「あれは冗談だよ」
「はぁあああ!?」
「恥ずかしいし、うるさいから騒ぐなよ」
「だって、気になるじゃん!」
「お待たせしました~」
「あっ、パフェ……!」
昼飯食べてからのデザート……姉は人より少し大食いなので、本当は足りてないと思う。
だけど、俺の奢りなので遠慮して食べているそうだ。
それで遠慮してるのかよ、と少し疑ってしまうけれど。
後、愛しの凛ちゃんは見せると何かが減るので滅多に人には見せない。
「ご馳走様ですー」
「いいえ」
こうして並んで歩くのも、いつぶりだろう。
姉も姉でバリバリ働いていて、独身を謳歌しているらしい。
今日は有給を使って、遊びにきたそうだ。
「んじゃ、私こっちだから」
「おー、気を付けてな」
「うん!あんた、彼女に愛想尽かされないように、気を付けなさいよ?」
「分かってるよ」
「じゃあねー」
「おう」
まさか、この様子を愛しの凛ちゃんに見られていたなんて知るよしもなかった。
「ただいま~」
声をかけても返事がない。珍しいな、どこかに出掛けているんだろうか。
それとも寝てるとか?
でも、夕飯の良い匂いが漂っているということは、居る可能性も否定出来ない。
リビングには居ない。お風呂でもないし……寝室は?
ガチャ……
「あっ……」
寝てる。でも、泣いたのか?少し目が腫れていた。
「んん……」
「あっ」
「えっ……」
「あ、起こしてごめん……」
「なんで……?」
「へっ?」
「なんで帰ってきたの……?」
「なんでって、仕事終わったから……?」
「本当は、嘘なんでしょ」
「えっ、嘘?」
「私、見たんだから……昼間、女の人と会ってたの」
「えっ」
姉に会ったところ、見られてたの!?
「すごく綺麗な人だった……そういう人がタイプなの?私と全然」
「違う!前にも言ったけど、あれは姉だよ。姉さん」
「う、嘘だ!だって、お姉さんにしては若そうだったし……仲良さげに歩いてたし」
「あぁ、もう……仕方ないな」
俺は姉にLINEして電話をかけた。
「もしもし」
「もーしもーし!どうしたの?」
「彼女が昼間、俺と姉さんが会ってるとこ見たらしくて、浮気したと思ってる」
「あらまぁ、御愁傷様ね」
「ふざけんな、姉さんのせいでこうなってんだけど」
「はいはい、分かったわよ」
俺は凛ちゃんに電話を代わると、何やら姉さんが話していたけど時折、嬉しそうに恥ずかしそうに顔を赤くしていたので、姉さんが余計なことを言っていることが手に取るように分かる。
「あっ、いえ……ありがとうございました。はい……」
電話が終わると、凛ちゃんは「浮気だって疑って、本当にごめんなさい」と謝ってくれた。
「俺は凛ちゃん一筋なのに、伝わってなかったんだね」
「あっ、いやその……」
ちょっと軽く拗ねてみせたけど、これは俺の愛情の注ぎ方に問題があるような気がする。
凛ちゃんが不安になったり、疑ったりしないように、もっと愛情を注ぐ必要がありそうだ。
何はともあれ、凛ちゃんでも嫉妬するなんて……本当に可愛過ぎる!
彼女の嫉妬は、可愛い嫉妬。
その日は、ずっと「凛ちゃん、可愛い」と連呼した俺だった。
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